(終)68:【魔王】と遊んだ初夏の夜
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バーストレンジはじめての感想戦は、大いに盛り上がった。
先日の配信のアーカイブを見ながらの振り返り、スサノオ神や解説妖精さん、チャット欄やコメントも見ながらのおさらいは、ためになるやら、恥ずかしいやら。
「あはははははっ! おにいちゃんが身バレした時のチャット欄、おっもしろーい! リプレイされてる回数もすっごーい!」
「反応の負と正は、ざっと見2:8というところですか。ふむ。これなら今後の宣伝でも大いに前面に出せますな。装備に当工房のロゴなど入れさせて頂きましょうかね」
「……は! そうだ! い、今まで言い忘れてたんですけど! サインもらっていいですか!? 【サウザンドキル いつも応援ありがとう ミナちゃんへ】でお願いします!」
いじめる。パーティメンバーがいじめる。
無論こういう寄り道だけでなく、試合の内容もおさらいしましたとも。
ブルーバイトのコンビネーション&二段構えスタイル、壱個のワントップスーパーエース戦法……見れば見るほど凄まじく、四人全員が『本当によく勝てたな』で答えが一致する。
対戦者への感心と尊敬は忘れずに胸の奥へしまい、“手の内がバレた”次はどう勝つかも考える。
生涯一度だけ使える『デビュー戦』という魔法は解けた。偶然だろうと奇襲だろうとブルーバイトに壱個という有名パーティを下した以上、今度はこちらもきっちりと【対・バーストレンジ】の策を練られる立場になる。
センパイや一ノ瀬たちも、秋の大祭優勝を狙うならまず間違いなく立ち塞がる難敵だ。一度勝った相手であるなど、何の安心にもなりはしない。
「きゅふ、望むところだし。アリーシャも久しぶりにやっちゃおっかな、ウサギ移り気、スキルまるまる総とっかえ! 次はどんなふうに、みんなを魅せてあげちゃおっかなー♪ きゅふふふふっ!」
「であれば、次は儂も本分にて参じたいですな。この指は銭勘定も大好きですが、それ以上に、鎚を振るわねば満足できん性分なもので」
「ぼ、ボクも、えっと……ま、まずは、クセ強ジョブの基礎トレみっちりがんばります! むむん!」
各々が自身の課題や目標を見出し、感想戦は熱気も冷めやらぬうちに終わった。
夕日に手を振って別れ、各々の1日に戻り、夜が来て、それから……
「……ごめん、ばあちゃん。ちょっと出てくる!」
「おや。ふふ、いってらっしゃい。気ぃつけてね」
……それから、また靴を履いた。
だって、熱が収まらない。夜気で冷まさないと、眠れないくらいに。
けれど、ちょっと、失敗だったかもしれない。
初夏の夜気は、春より暖かく、どこまでもいけそうなくらいに心地よい……けど、問題は。
こんなにいい夜には、そこらじゅうに【窓】が開いている。
みんなが祭りで、盛り上がっている。
その全部に見惚れて。
足を止めてしまいそうになって。
それでもどうにか最初の目的を思い出して、歩く、歩く、歩く。
静かで、熱を冷ませる場所を探して。
そうしたら。
「…………あ」
「…………へ?」
その子がいた。
流麗な朱の角、上品な菖蒲色の肌。漆黒の結膜、翠の虹彩、金の瞳孔の瞳。
淡い月光の下で、その存在は、一瞬息を呑むほどの——
「——おっどろいた。こんなところで何してるの、ミナ」
いや、まあ。
友達なもんで、セーフセーフ。
「そ、それはその……ボク、えっと、感想戦のあともまだまだいっぱいファンフェスのこと、考えたくて、ぐあーってなってて。熱気冷ましに静かな場所に行きたいな……と思ってたら、自然と足が、ここに来てて」
「わ。すごい、俺と同じだ」
「ちひろっちもですか!? ボクたち、気が合いますねえ! ……あ、でも! それはいただけません!」
「へ?」
「こんなところ、じゃないです。ボクにとっては、特別な場所ですもん」
「……だね。失言だ、ごめんなさい」
“こんなところ”とは、寂れた港の静かな展望台の屋上だ。
……先日。魔王化しかけた彼女を迎えに来た場所で、前回は必然に、今回は偶然で鉢合わせた俺たちは、揃って眺める。
賑やかな町ではなく、凪ぐ海のほうを。
「ちひろっち」
「ん?」
「楽しかったですねえ。ファンフェス。ボクたちの、お祭り」
今日何度目の言葉だろう。
何度でも言いたいし、言い足りないに違いない。
……まったく。そんなふうに言われたら。そんなことを、思い出させたら。
せっかくようやく冷めかけた熱気を、思い出す。
「ミナ。これ、なーんだ」
「えっ? ……あっ」
懐に忍ばせていたものを掲げると、彼女の視線が瞬く間に吸い付いた。
星よりも、月よりも、町中にきらめく【窓】よりも、目を奪われている。
「実はさ。俺、結構気にしてたんだ。今日の感想戦でも言ったけど、ミナ、初のパーティ戦で、海龍神を蒸発させるわ【英雄】をブチ抜くわの大金星だろ? そりゃもう感動したんだけど——おんなじプレイヤーとしちゃあ、それだけでもねえわけで」
人差し指と中指で、挟んで見せるは一枚の札。
コンビニでも買える、幻想闘祭ソロマッチ用、簡易空間への【門】を繋ぐチケットだ。
「依頼だ。プレイヤーとして、俺と競ってくれるかな?」
ミナの表情が、驚きから、闘志のそれへと変わる。
満面の喜びが、獰猛に溢れていく。
「十先やろうぜ、星撃魔女。近接のあしらいかた、手取り足取り教えてやるよ」
「望むとこです、双銃剣士。今度は土手っ腹に、風穴開けて差し上げますし!」
かくして熱はまた上がる。
否、下がっている暇もない。
一緒にそれを楽しむ、同じ舞台にマッチングする——隣に座る友で仲間で、時には前にも立ってくれるライバルがいるならば。
与え戻り廻り繋がる楽しさは、盛り上げあって暖めあって、いつまでだって冷めやらない。
訪れた即席の試合場は、だだっ広い月下の草原。公正のため、初期位置は遠く。
同じエンブレムを誇らしげに握りしめ、俺とミナ……元・輪に入れなかった二人の【魔王】は、揃って叫ぶ。
それじゃあ、夜も更けてまいりましたが。
この世はまだまだこれからだ、ということで——皆皆様方、ご一緒に。
「【みんなの祭りを始めよう! いつでも楽しく何度でも!】
「【ボクのお祭りボクらのお祭り、神さま皆さまご覧あれ!】」
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ところで。
君ならこの祭り、どういうふうに参加する?
魔王と勇者とお祭りの噺、これにて一旦完結となります!
やりたいバトル、描きたいパーティ、まだまだ諸々ございますので、その際にはまたお目にかかれば幸いです。ここまでお読みくださり、本当にありがとうございました!
よろしければ⭐︎での応援、コメントなど、なにとぞよろしくお願いいたします!




