第228話 競い合う魔法
賢者と聖女の魔法
賢者アレク様と聖女アンズ様が能力値が高くなった私の力を早く試したいと急かして来ますの。
そこまで力に飢えているのでしょうか。それとも違う理由が何かあるのでしょうか。
賢者アレク:
これまで使えなかった魔法が使えるようになるかもしれないんじゃよ。
レベルが足りないとか魔力量が足りないとかの問題もそうじゃが、儂には使えなかった魔法が使えるかもしれんと思うとのぅ。
カスミ:
賢者アレク様でも使えない魔法ってあるのですか?
賢者アレク:
勿論じゃ。基本はレベルと熟練度で覚える魔法が多いが、魔術書などで覚える魔法もある。
賢者の一族がおるから誰も使えない魔法っていうのは存在しないかもしれないが、使えない魔法があってもおかしくはないはずじゃ。
【神炎の矢】や【神焔劫火】の威力を高めるには勇者の力を借りなければならないんだとか。
その先の魔法は賢者アレク様だけでは行使出来ない魔法もあるんだとか。
私が知らない魔法はたくさんあって、集団でしか使えない強力な魔法を術者一人で使い熟せるだけの力は、さすがの賢者アレク様でも持っていないのだとか。
創世と建国の時代の最高の魔法使いと呼んでもおかしくない人物なのです。
青の勇者様のパーティーは今では伝説と化してしますが、その力は現在でも誰も敵わないって私はそう思いますの。
魔王ガリア様に追従するクラフトマスターが存在しないのと同じように魔法というジャンルにおいては賢者アレク様なのでしょう。
そんな賢者アレク様でも集団で行うような魔法は一人で完成させるのは無理なんだとか。
それを勇者の力を借りれば一人でも可能ではないかという考えなのです。
勿論、勇者の力というのは私の能力値込みのお話ですよ。
ちょっと待って、一人では使えないような大規模の魔法を勇者の力を利用して、今ここで使おうとしているってことではないでしょうか。
それって絶対危険な行為と思うし、凄い量の勇者の力を使われるってことではないでしょうか。
賢者アレク:
そういう訳でお主の力を使わせて貰うぞ。
開け異界の門よ。地獄の業炎よ。我の呼びかけに応じよ。炎の神アグニの名において。神炎の力で焼き尽くせ 【神炎の駆矢】
聖女アンズ:
あら?
面白いことをやっていますね。
それなら私
神よ。私の名は聖女アンズ。邪悪なる存在を拒む者なり。私の願いを叶え給え! 【神威の防壁】
カスミ:
お二人共ちょっと待って下さい。
ち、ち、力が吸われr・・・
賢者アレク様が使った【神炎の駆矢】は【神炎の矢】が無数に放たれる魔法です。神炎を使った魔法は上位の魔法ですが、基本的にたくさんの矢として放つことは出来ませんの。
たくさんの矢を一人では射ることが出来ないのと同じように一人で射れる矢の数まで【神炎の矢】は放たれません。
この光景はまるで城壁の上から弓兵が無数の矢を放ったように飛んで行くのです。
一方の聖女アンズ様の魔法は、聖なる光を放つ光の壁ですの。
これまで【防御結界】【拒絶結界】として結界を使っていましたが、【神威の防壁】は詠唱を使って更なる強化された防壁の魔法なのです。
賢者アレク様の【神炎の駆矢】と聖女アンズ様の【神威の防壁】には私の勇者の力が使われていますの。
私が力が抜けると感じるぐらいですから二人合わせても「ちょっとだけ」なんてことではありません。
二つの魔法がぶつかり合って凄い轟音が鳴り響きます。
ここは誰もいないので影響はありませんが、この階層にいるモンスターは消滅するしかありません。
それぐらいの影響は出ていますの。
二人共が勇者の力を使っているので、通常の魔法とは威力が異なりますからね。
通常の魔法とは勇者の力が含まないで行使された魔法のことですの。
【神炎の駆矢】なら【神炎の矢】を大勢の術士を使って一斉に使った時と同じようなことですの。
聖女専用の魔法は、私と聖女アンズ様と聖女かすみーると緑の勇者様の聖女様しか使えませんが、聖女だけの力で使う魔法のことですの。
私が持つ勇者の力を使ったことで本来得ることが出来ない凄い魔法の効果が発揮されてしまっているのです。
大きな力の発揮している魔法からの影響は、私の身体の防御に聖女かずみーるが【拒絶結界】にて防いで貰っていますの。
それでも賢者アレク様が使った【神炎の駆矢】の余波が激しく襲って来るのです。
【神炎の駆矢】という魔法でも聖女アンズ様が作る【神威の防壁】を打ち破ることは出来ないのです。
う~ん。その影響で魔法の余波が私たちを襲うのは良いことだけど・・・何だかなぁ~って感じですの。
カスミ:
賢者アレク様。
聖女アンズ様のあの魔法を突破出来る魔法はありませんか?
賢者アレク:
聖女の防壁を超える魔法はないな。
勇者の力やスキルそのものをぶつければ、もしかすると壊せるかもしれん。
だが、聖女の防壁は壊すものではないとだけ言っておこうか。
タイチ:
カスミ。アレクの挑発に乗るなよ。
カスミ:
挑発ですか?
賢者アレク:
バレてしもうたか。
カスミ:
????
タイチ:
聖女が作った防壁を破壊出来るってことは、この均衡をも破壊することが出来るってことさ。
アンズの魔法を破壊するだけではなく、アレクの魔法も破壊出来ることを指すんだ。
カスミ:
それの何処が挑発なのですか?
タイチ:
あの二つの魔法が均衡している状態に割って入ろうと思うか?
カスミ:
思わないです。
タイチ:
そうだ。普通は入ろうと思わないだろう。
だが、あの近郊を壊せる力があると分かると壊してみたいという衝動に駆られる者もいる訳さ。
勇者の力を使って均衡を破壊出来るなら勇者の力を試してみようとな。
カスミ:
私はそこまで思いませんでした。
聖女の防壁を壊す=禁忌に触れるか何かと思っていました。
タイチ:
そう捉えることも出来なくもないが、出来るならこの均衡を壊してみろの方が強いな。
カスミ:
私は嫌ですよ?
あの【神炎の矢】が嵐のように飛んでいる中に入ろうとなんて思いませんよ。
城壁から集中豪雨のように飛んでくる矢の雨の中に入れと言われているようなものですからね。
誰も好き好んで入ろうとは思わないはずですの。
でも、心の何処かに私の力であれば全てを消し去ることが出来るかどうか試してみたい気持ちがないとは言えないのです。
私の能力値が高くなったと言っても、こんな状態を全て無かったことの打ち消すことは出来ないと思う今日このごろです。
評価やブックマークをしていただけると励みになります。
ーリメイク情報ー
終焉の起源をリメイクしています。
こちらの作品も宜しくお願いしますmm




