16.シロの視点
話を変更しました。
青色さんもとい、フランを送ってきた。
城に戻ると辺りは騒然としていた。
「………どうしたの?」
近くにいたメイド仲間に聞いてみる。
「あ、シロアちゃん無事だったのね!」
「………ん。………で、この状況は?」
「それがね、お城の中に魔物が出たんだって。で、騎士団が討伐に行ったら返り討ちにあったとか」
そう言って、少し怖がるメイド友。
「………それはまずくない?」
そんな強い魔物がお城にいるのは、かなり危ないんじゃないの?
「それがその魔物は、目撃された部屋から出てこないんだって。それで、監視をつけて放置してるんだってさ。怖いよね」
「………変な魔物」
そんな魔物が、お城の内部で急に発見されたってのも変な話。
まさか、城下町にいた兄様を奪ったやつ関連?
それだったら許さない。
あれは、後で聞いたら何らかの方法で、人ではない存在になっていたらしい。
腕とかも堅く、証言からかなりの戦闘力持ちだったので、兄様が倒さなかったら町は大変なことになっていたらしい。
少なくとも兄様は町を守ったのだ。
「それでね、その魔物はカミア様のお部屋の隣に出たって聞いたから、朝カミア様と一緒にいたシロアちゃんを探してたの」
「………へぇ。………そういえば、かあ…カミア様は?」
私がカミア様を母様と呼んでいるのは秘密なんだって。
「それが、お昼に急に飛び出していったっきり見つかってないんだって」
じゃあ母様は兄様を連れてどこに行ったのだろう?
「それよりもシロアちゃん、どうしたの?すごい顔をしているよ?」
メイド友が不思議そうに聞いてくる。
兄様の死はすぐに発表されるはず。
あんな人混みで殺されたのだ。
発表しないわけにはいかない。
「………兄様、レイヤード様が死んだ」
「えっ?」
「………カミア様を呼んだのは私。兄様をどうすればいいかわからなかった」
「えっ、え?ほ、本当に?」
本気で驚いた顔をするメイド友。
兄様は私の事もあって周りの人から敬遠されてる。
でも、メイドや女騎士などからは嫌われてはいない。
常に、周りに丁寧に接していたから。
「………ん」
考えたら、また涙が………。
「ご、ごめんねシロアちゃん!まさかそんなことになっているなんて思わなかったの!」
「………いい。それじゃお部屋に戻ってる」
「う、うん。じゃあね………」
気まずそうに手をするメイド友。
魔物を見ようとしたけれど、厳重な警備だったので見ることはできなかった。
母様はその日帰ってこなかった。
次の日、兄様の死は発表された。
原因は街に降りていた際に人に殺されてしまった、と。
その犯人は近くの孤児院の青年で、何者かによって化け物にされていた、と。
それを兄様が町を守るために戦闘し、相打ちになった、と。
その犯人を化け物に変えた男は、近くで隠れて見ており、【鑑定】持ちの騎士に見つかって、捕らえられた、と。
文句を叫びたかった。
フランから聞いた話と少し違ったから。
普段、嫌悪していたくせにこういうときだけ、まるで王族が素晴らしいかのように語られるのが嫌だったから。
でも、私はそれどころじゃなくなった。
「………え?」
「なんだ?もう一度言ってほしいのか?愚図が」
朝唐突に表れた、兄様の一番上の兄が言った。
「貴様は元々うっとおしかったのだ。あの変人が獣人なんかを城に入れるから品格が落ちていたんだよ。だから、あいつが死んだのは好都合だ。貴様の奴隷契約も解除されているだろう」
「………あぁ」
忘れていた。兄様はいつも私を守っていたのだ。
私の生活を、ここで暮らすための盾になってくれていたのだ。
「だから、貴様は奴隷商に売る。あいつがお前に熱を入れて育てたからな。買い手はすぐ付くだろう。まぁ、どういう未来に行くかは決まっているがな。あいつ以外の貴族がお前をまとも扱うはずがないしな」
「………あ、あ」
「なんだ、今更気づいたような顔をして。まぁいい、来い」
首輪に、兄様が私を守るために付けてくれた大切なものに、鎖をつけられる。
それで無理やり引っ張られる。
正直抵抗する気は起きなかった。
兄様は死んでしまったのだ。
母様はここにはいない。
もう私をだれも守ってくれない。
そのまま城の一階の部屋に連れていかれる。
いやらしい顔をした肥えた男がいた。
「いや~王子様この度は私をご贔屓にしてくださりありがとうございます」
「いや、何。奴の残した負の遺産を片付けたいからな。お前ならすぐに片づけられるだろう?」
「えぇ。実はもうすでに候補に手を挙げる方が数名いるのですよ」
「ほぅ。物好きもいたもんだな」
「いえいえ、あの男が手塩にかけて育てたこの子は、見た目がかなりいいですからな。この奴隷を欲しがって直談判していた貴族もいたそうですよ」
「へぇ、そんな事があったのか」
「まぁあの男は、必ずと言っていいほど激高し、誰が貴様などにあの可愛い妹をくれてやるか、馬鹿が!と言って突っぱねたそうですが」
兄様………。
私がいない所でもやっぱり守ってくれていた………。
会いたいよ………。
「ふん、人の成りそこないなどを妹と呼ぶなど狂っているな」
「まぁ第二王妃様も娘と言って可愛がっていましたからな」
「あの女も変人だ。父上の寵愛をすべて理由をつけて断り、挙句捨て子を拾い子供として育てたのだからな」
え?兄様は捨て子だったの………?
「まぁあの女も死んでしまったがな」
え?
「………母様が死んだってどういう事ですか?」
「なんだ奴隷風情が。まぁもうすぐいなくなるのだ、土産に教えてやろう」
そう罵りながら私に言う。
「あの女は、今レイスになっているのだ。城内で迷惑な事に」
え?という事は昨日聞いた魔物は母様だったの?
「なぜか知らんが自分の部屋の奥に隠し部屋を作っていたらしくてな」
「膨大な魔力が検知されたから、騎士共が見に行ったらな、レイヤードの死体に寄りかかりながら死んでいたんだと」
「それで騎士がレイヤードの死体を取ろうとした瞬間、起き上がってレイヤードに手を出した騎士を切り飛ばしたんだと」
「それで鑑定のできるものを読んで見てもらったらレイスになっていたんだとよ」
「騎士が言うには生にしがみ付いた死者がなりやすいアンデットの一種らしいな」
「どんな執念を持っていたか知らんが相当強い魔法使いだったからな。人の手には負えないレイスになってんだとよ、ほんと迷惑だ」
「まぁ部屋に入ってレイヤードの死体に手を出すと、動くらしいから放置することになってるんだよ」
「レイヤードもゾンビになる可能性があるから、早く始末したいのに本当に迷惑だ」
「………あぁ、ああ………………」
そんな、兄様も母様も死んでしまったの………?
私を置いて行って………?
「貴様は死なせないからな?売るのだからな」
王子が何か言っているがもう私には聞こえていなかった。
もう私には絶望しか残っていなかった。
「まぁいい。さっさと契約更新をやってくれ」
「了解しました。ほら来い!」
鎖を無理やり引っ張られる。
「………あぁ」
もう逆らう気も起きない。
生きている意味すらない。
いっそのこと死なせてほしかった。
「【契約】。契約内容は、目の前の奴隷の主人変更」
奴隷商が何かを唱えて私に手を伸ばす。
あぁ、兄様………。
パンッ!
「なっ!?」
奴隷商が私に触れる瞬間、首輪が光り始め奴隷商の手を弾く。
そして、周りに声が響く。
『契約変更不可。この奴隷の主人は存命です』




