17.シロの視点
話を変更しました。
『契約変更不可。この奴隷の主人は存命です』
存命?
主人って兄様だよね?
つまり、兄様は生きてるってこと!?
奴隷契約の繋がりを意識してみる。
………あった。
細い細い微かな物ではあったが確かにつながりは存在していた。
兄様はまだ………!
「馬鹿な!?あいつが生きているだと!?騎士に確かめさせたときは確かに死んでいたはずだ!」
「わ、私にもよくわかりま……グゥッ!?」
驚く王子を、なだめようとしていた奴隷商は急に呻く。
『契約違反発生。対象奴隷の契約に対する干渉を確認』
また無機質な声が響く。
この声は何なんだろう?
私の奴隷契約の時には聞こえなかったはず。
『罰則を違反者に発動。違反者への【拘束】の発動、及び、【魔力探知】への反応、及び、登録音声の再生、を行います』
奴隷商を見ると、既に【拘束】が発動し、魔力の鎖が手足や体をがんじがらめにしていた。
【拘束】:魔力で構築された鎖で、対象を拘束する。発動者のINTが高いほど拘束強度が上がる。
確か母様が、奴隷契約の際に『巻物』を使用して登録していたはず。
『巻物』は一度のみ、登録されている魔法を発動できるアイテムで、母様がダンジョンから持ってきた物の一つだったはず。
つまり、相当の強度の鎖なはずだ。
そして、ジジッッという音の後に登録された音声が聞こえる。
私はこれを知らない。
『あー、聞こえてるな?』
兄様の声がした。
『貴様は俺の大切な妹に手を出しやがったな!こいつは俺が守ると決めているんだよ!それに手を出した貴様は容赦しない!そこで首を洗って待っていやがれ!』
兄様………!
兄様はやっぱり私を守ってくれていたんだ………!
「ど、どういうことだ!」
拘束されている奴隷商を見て慌てる王子。
………バゴォンッ!
さらに、城のどこかから爆発音が聞こえた。
その音はどんどん近づいてくる。
そして………
ドゴォンッ!!
壁が突き破られ、何かが突っ込んできた。
それは、氷の翼を持ち、黒ローブの下地の上から氷の鎧を纏っていた。
そして、氷の剣を構えて私の前に立った。
見間違える事は無い。
いくら顔が青白かろうと、体が半透明であろうとそれは誰かは一目瞭然だった。
思わず叫んでいた。
「母様ぁ!」
涙があふれる。
「ふふっ、遅れてごめんなさいね、シロちゃん」
そう言って体は前を向いたまま、顔だけをこちらに向けて笑う母様。
生気は全くと言っていいほど感じない。
でも、私に向ける感情はすごく暖かった。
「さっき、【魔力探知】に大きい反応が来て、やっと気が付いたのよ。それまでは完全に魔物になっていたわねぇ」
つまりさっきの罰則で母様の意識が戻ったという事らしい。
「兄様は!?」
気になっていた。
生きているはずなのだ。
でもここにはいない。
「レイなら大丈夫よ。ただ、レイはここにはいないらしいの。だからシロちゃんもレイの所へ行きましょうか」
「行く!!」
もう、涙は止まらない。
死んだはずの兄様も母様もいるのだ。
なら私は、兄様と母様がいる所に行きたい!
「分かったわ。その前に私の可愛い娘に手を出した悪い子達を怒りましょうか」
そう言って母様は前を向く。
「さて、この子に手を出した覚悟はできているわね、アリオン?」
アリオンとは、この第一王子の名前らしい。
興味がなかったので、知らなかった。
「なぜ貴様は生きているのだ!?」
母様を指さして叫ぶアリオン。
「いいえ、死んでいるわよ?確かに私はレイスになっているもの」
「ならばなぜ意識があるのだ!?」
「私もわからないわ。でも、私は人を辞める覚悟でスキルを使ったもの。別に問題はないわ」
そう言ってのける母様。
「でも、これで私は拘束できないわねぇ。魔物を法律では抑えられないものね」
そう言うと母様の剣に魔力が集まるのがわかる。
私でもわかるほどの、大きな魔力が剣に集まっていた。
「レイが死んだ事に貴方たちは何か関わっていそうなのよねぇ。まぁ八つ当たりでもいいわ」
剣を挙げる。
「私はねぇ?今、すっっごく怒っているのよ?」
笑いながら、そう言って剣を振り下ろす。
剣が地面にぶつかる。
その瞬間
コォォォォォ………!
室内なのに強風が吹き始める。
すごく冷たい風だ。
「城の外に迷惑はかけないし、そこの奴隷商以外殺す気はないわ。でも、見せしめね」
剣を地面に突き刺す。
刃の部分の氷が魔力となって散る。
剣の柄は杖でできていた。
「だって私のレイとシロちゃんに手を出したんだもの当然よねぇ?」
散った魔力が奴隷商のあたりに集まる。
「や、やめてくれ!助けてくれ!」
叫ぶ奴隷商。【拘束】で逃げられない。
「嫌よ?」
ニコッと笑う母様。
すごく怖い笑みだった。
魔力が集まり始め、奴隷商の体が凍り始める。
「い、嫌だぁ!死にたくない!?」
「あなた非合法の奴隷商よね?私、大っ嫌いなのよ」
母様が杖を振り上げる。
「だから、氷の花を咲かせて死になさい?」
振り下ろす。
「【氷地獄】」
その日、城下町にいた者達は城を見ていた。
第三王子の死亡宣言を聞いていたから。
だから、見逃さなかった。
冷たい風が吹いた。
そして、そう感じた一瞬で
城が全て凍った。
表面は氷に覆われ、所々から氷の棘が生えていた。
外の木は全て凍り、周りを飛んでいた鳥たちは全て落ちた。
一目見て生物が生きられない世界に見えた。
その様はまるで、一種の地獄のようだった。




