カビたパンくらいの値段で売れた
「それで、あなた達は何者なんですか?」
汐霧は正座させたヴァン達に問い掛けた。一通り吐き出してスッキリしたのか、今は落ち着いている。
とはいえ表情こそ穏やかだが、片手の拳銃から立ち昇る殺気はちゃんと濃密だ。黙秘なんかは一切許されないとヴァン側も理解したのだろう、僕の時とは打って変わって素直に口を開いた。
「……ニューヨークコロニー、エネルガンド正規軍士官候補養成学園、第一選抜部隊隊長のヴァンだ。以下三名……」
「自己紹介は結構です。任務と目的を話してください」
「そ、れは……」
「いいよ、話して。オレが許可する。じゃなきゃ殺されちゃうぞ〜」
イルが軽薄に取りなす。下手な血を見なくてホッとする僕と、「そこまでしないのに」とムッとする汐霧。じゃあどこまでやる気だったんだろう。人間の痛め付け方をあんまり小分けに想像させないでほしい。
「……オレ達に与えられた任務は東京コロニーの実地調査と活動の下地作りだ。目的は後に来る本隊が十全に動けるようにすること。これで十分か?」
「あれ、まだクレイドル本隊って来日してないの?」
てっきりコイツらがそうだとばかり。
「そりゃーそうでしょ。安全確保くらいするよ。ウチの輸送機が着いた瞬間撃墜されないとも限らない」
「なんだ、じゃあお前たちは死んでもいいカスなんだ。優しくして損したな」
「遥、一回シャラップです。任務については了解しました。では次です。あなた達が追っている少女について話してください」
沈黙が場を包む。あれま、この状況でもなお渋る機密か。汐霧が拳銃の激鉄を上げても誰も口を開かない。
誰の四肢が吹っ飛ぶかなぁ、などと呑気に眺めていると、イルが首を傾げた。
「あれ? ヴァン准尉、君らが確保していたんじゃないのか」
「その反応……まさか大尉側も?」
「……なるほどね。アイツらもレジスタンスだったんだ。それも君らとは全く別グループと」
「そのようですね。お互いしてやられたようで。……オレ達を殺しますか?」
「いや? 今殺界装置の頭パーにするわけにもいかないもん」
「そうですか……」
「正直残念だけどねえ。人権主義のレジスタンスなんてオレが一番好きな抹殺対象なのにさ」
「いつから気付いていたのですか」
「ハハ、あんま人を舐めなさんなって。異国の学生にすら会って数時間でバレてんだよ? そんなんで本国の防諜部をだし抜ける訳ないでしょ。ワザと泳がせてたんだよ――」
ズガンッ。
「ァァァァアッ!?!!」
「こちらにも分かるように話してください」
脳天を撃たれてひっくり返った女生徒を一顧だにせず、汐霧が銃口を隣に移す。ヴァンが目を剥き、イルは口笛を吹いた。よ、容赦ないなぁ……。
頭が弾けてないあたり鎮圧系統ではあったらしいが、汐霧の出力なら失明くらいしてもおかしくない。それは流石に可哀想なので応急処置に入る。
「オーケーオーケー、そちらのお嬢さんはとにかく訳が分からなくて仕方がないと見える。とはいえ、それはこちらも同じでね……」
「無駄口のレートは脳髄一つですが」
「別に殺しさえしないならどうとでもしなよ。どうせ最後にゃ脳みそぶちまけて情報吸い出すんだからさ。むしろここで活力削いでくれるならありがたいくらい」
「ふむ……」
汐霧はさりげなく足を鳴らした。『嘘はありません』。わぁ、ガチの内ゲバかぁ。これは面白くなってきたぞ。
が、それならそれで疑問が生じる。
「そこまでどうとでもできるなら、何故わざわざ連れて来たんだ? そっちの本国で処理しちゃえばいいじゃん」
「逆逆。むしろ本国だとコイツらのバックについてる連中とのしがらみマシマシでうっぜーの。あと殺界装置がね……」
「殺界装置?」
また新しいワードが出て来た。が、流石に誰を指しているかくらいは察せる。
「それがあの女の子か」
「そゆこと。彼女だけはオレ達にとっても大事でね。んで、そのメンタル管理のためにプライベートで仲良しなそこのスパイ君たちが選ばれたってわけ」
「そこまで分かってて逃げられたの? だとしたら無能すぎない」
「それがさぁ、コイツらとは別口のレジスタンスが混ざってたっぽくて。てっきり同じと思って対処遅れたんだよね」
「国賊を輸出し過ぎじゃない?」
「これが昔は世界の警察名乗ってたってマジですか?」
「容赦ないね君ら……」
つまりはまぁ、昨日少女を追っていたのは両方ともレジスタンスだったということらしい。凄い偶然もあるものだ。
そして分かったこともある。彼らの本来の任務は異界攻略、引いてはそこの帰還品と資源の奪取で、かなりの重要任務。
にも関わらず反乱分子と分かっている連中を連れて来たのは、それだけ殺界装置とやらが異界攻略に必要だということ。
コイツらより早く確保できれば、後々大きな有利になるのは間違いない。
「イル、その子探すの手伝ってあげる。お礼はこっちの言い値で払ってね」
「殺すよクズ。ありがとね、助かるよ」
僕たちはにっこり笑って握手をした。
海を超えた友情。
嘘です。
◇
セレンの痕跡探知、汐霧御用達の情報屋、イルの読みを合わせて、レジスタンス2号の居場所が分かったのはそれから三時間後のことだった。
場所はE区画南部の大倉庫の地下。ジオフロントをぶち抜いて建造された拠点だ。この分だとあらかじめこの辺の犯罪組織に渡りをつけていたらしいな。
「この辺りの一帯は白龍グループの縄張りです。中華系傭兵集団を母体とした非合法企業で、人数と重機関銃を用いた火力制圧を得意としています。こと拠点防衛に限れば上澄みの難敵ですね」
「人数ねぇ。シオギリ、あそこの拠点にいるのは何人くらい?」
「時期にもよりますが、50人は下らないでしょうね」
「うげ、だっるぅ……」
げっそりと溜息を吐く。その人数の中華系かぁ。嫌だなぁ、やりたくねえなぁ……。
「君、アメリカ系だけでなく東洋系も嫌いなのか? ほとんど同じ民族だろうに」
「はは、気持ち悪い中国人って頭痛が痛いと同じ構文だよね」
「……筋金入りのレイシストめ。君のような人間こそが最も唾棄すべき人種だろうに」
ヴァンに呆れられた。ぶっちゃけそれは正しく、国家という枠組みが消え人種がグチャった今、そういう差別に正当性は一切ない。
……ないはないのだが、困ったことにこれ楽しいんだよね。麻薬と一緒、やめられない止まらない!
「分かるよ。人に勝手にレッテル貼っつけて差別するのって最高に楽しいよね……!」
「そこのクズ二人は放っておいて、まず作戦の方針を定めますよ。それに応じて突入メンバーを決めましょう」
「「「イエス・マム」」」
信用を失った僕とイルが体育座りをしている間に、作戦は汐霧主導で決まっていった。
まず救出作戦であるため、基本は潜入。無傷での救出が最優先なので、戦闘は最低限とする。殺しもできるだけナシ。突入メンバーはイル、ヴァン、僕と汐霧。
「残りの学生連中はどうするの?」
「ウチの部隊から暇なの呼んで付けとくよ。もちろん変な動きしたら即殺するように言っとく」
「なるほどね」
エネルガンド学園……恐らくはニューヨーク版クサナギ学院だろうが、選抜部隊とは言っても学生レベル。三人くらい正規軍人なら簡単に抑え込めるはずだ。
というか、動きたくても動けないと思うな。汐霧にボコボコにされたダメージがかなり残ってるみたいだし……。
「そっちこそウチのイザコザで同じコロニーの人間と戦うなんていいの? 今からでも後方支援に回してあげるよ?」
「はは、そうはいかないよ。僕は何としてでもお前らに恩が売りたいんだ」
「そう? ならいいけど。シオギリは?」
「……はぁ。まぁ、乗り掛かった船ですから。遥、今日の補習分のお勉強は帰ったらみっちりやりますからね」
「ははッ」
爽やかなスマイルで誤魔化して僕は屋上の鉄柵を蹴った。彼女のような特異生物と違って、僕は普通に勉強が嫌いな一般的学生なのだ。お願いだから勘弁して欲しい。
自由落下、くるくる回る。ビル一つ分の落下衝撃を適当に殺して目標の屋根に着地。他の突入メンバーも同様に並ぶ。
「【ソナー】」
「【シンパシー】」
汐霧が屋根に手を付け、魔法を行使する。魔力波による振動探知魔法。その横でイルが共有魔法を起動。僕らの脳みそに建物の間取り、警備の位置情報が染み渡る。
その情報を元にイルが最適な侵入路を策定し、汐霧が先行する。機敏に辺りを見回し、ハンドサイン。僕たちもそれに続く。
「まずはサーバールームを落とします」
「ふむ。直進はまずい?」
「敵に感知されない程度の探査魔法じゃ地下までは探れません。一階ずつ行動を決定するより最初に一括で決めた方が簡単です」
「ハハ、仰る通り」
程なくしてサーバールームに辿り着く。中を窺うと、守衛が三人見えた。
イルが僕を指差してくる。ちょっとは働け? はは、仕方ないな。
「はい、GO」
ドアをブチ蹴る。獣の速度で汐霧、イル、ヴァンの三人が突入し……人の気配が三つ一気に減った。
端末の解析はイル達に任せ、気絶した守衛を縛り上げておく。すると汐霧が彼らの端末に魔法を施していく。どうやら定期反応を偽装する魔法らしい。ほんとコイツ何でもできるなぁ。
「場所分かったよ。地下三階の研究室みたい」
「……この計器の数に警備の配置、地下への入り口はどこも厳重に固められてますね。戦闘は避けられそうにありません」
「オーケー、じゃあそこからは電撃戦でいこう。このままシオギリが先行してくれ」
「わかりました」
「えぇ……」
この広さを地下三階までガンダッシュって。もうちょい足腰を労ってやろうよ。
同意を得ようとヴァンの方を見る。が、そんなに消耗しているようには見えない。あれぇ?
「ヴァン、やせ我慢はよくないよ。辛い時は辛いって言おう?」
「何の話だ……? 確かに速いが、この程度ならまだ着いていける」
「はー。エネルガンド学園ってすごいんだねぇ」
てっきり黒崎とかあの辺くらいかと思っててた。でも考えてみればコイツらは選抜部隊、あっちの上澄みも上澄みなんだ。こっちで言う汐霧や梶浦の位置にいると考えれば、少し舐めすぎていたかもしれない。
「……そういう自負もあったにはあったが、先ほど根本から折られたさ。あの女の子は一体何なんだ? 本国にもあんな強さの魔導師はそういない。あれで士官候補生だなんて冗談が過ぎる」
「あーそれねー……」
多分出会った頃の汐霧なら、割といい勝負だったんじゃないかな。それが最近の難敵に次ぐ難敵との戦闘でやたらと強くなってしまっている。
だが精神面はその逆で、年齢相応どころか以下だ。咲良崎や僕への依存傾向にあるのも頂けない。仮にどっちかが死んだ時、セットで身投げしかねないくらいには。
「何話してるんですか? そろそろ行きますよ」
「はは。はーい」
ま、その時はその時。今考えたって仕方ないか。
僕はへらへら笑って汐霧の後を追った。
その後、施設攻略はとんでもなくスムーズに進んだ。
いくら傭兵集団とはいえAランククラス二人にB中位一人じゃどうしようもない。僕がオマケしている間にあっという間に最下層だ。
「お前はっ……【羊の沈黙】!? 何故今更縄張り荒らしなど……がああああっ!!」
「要求を呑んでください。でないと撃ちますよ」
「せめて何か要求して、引き金から手を離してから言いなよ……」
言ってる間にマフィアは沈んだ。すぐに物理的及び魔法的処理で記憶を奪っておく。ごめんね、明日はいいことあるといいね。
「ところで【羊の沈黙】って?」
「昔の二つ名です。……ちょっと恥ずかしいので、あんまり呼ばないでください」
「そう? かっこいいじゃない。というかそっちより【殺戮兵装型少女】のがよっぽどあ痛ッッ!?」
「人の魔法名いじるのはライン越えでしょうが!!」
「はいはい、コントしてないでカムヒアー」
手を鳴らすイルを見ると、そこにはイルやヴァンと似た雰囲気の装備の魔導師が三人お縄についていた。
全員気絶しており、頭に軽い焦げ跡がある。電気系統の魔法で脳みそを読んだらしい。
「こいつらがレジスタンス2号?」
「そ。紹介はいるかい」
「いらない。それより目的の女の子は? ここにいるんでしょう?」
見た感じここが最奥だ。可愛い女の子はどこにもおらず、泡吹いてぶっ倒れてる大男だらけ。華が足りないよ。
「それがちょっと面倒なことになってね……コイツら、魔導師としてはカスなのに商売人の才能はあったみたい」
「なるほど、既に売られてたんですね」
「その通りだよシオギリ。それも三重契約だ。この辺に土地勘もコネもないオレ達が追うのはかなり難しい」
「ハイ質問。三重契約って?」
「「契約の契約の契約」」
諜報コンビが口を揃えてさらりと歌った。なるほどね、そりゃ元を辿るのは大変だ。
こっちのコロニーに来てすぐにそんな渡りをつけられるとは……いや、元々コネがあったんだろうな。どうにせよ相当な手際の良さだ。魔導師としてはビックリするほど雑魚だったけど。
僕は汐霧にこっそり相談する。ちょいちょい。
「ね、お前この辺に詳しいんでしょ? 何とか辿れない?」
「あのですね……人身売買を営む法人あるいは個人なんて、この辺にいくらあると思ってるんですか。最短でも一週間はかかりますよ。遥こそいつもの変態的な人脈でどうにかならないんですか?」
「はは、僕はそもそもここら辺にツテないしなぁ。あっても根本的な人手が足りな……」
あ。そっか、それなら。
「イル、提案があるんだけど」
「なあに? 言っとくけどオレら今結構ピンチだからくだんないことだったら怒るよ」
「いやさ、こうなったらもう素直に正規軍頼らない?」
「何を言うかと思えば……こっちの軍に救援依頼なんかしたら、オレらは君らのコロニーそのものに借りを作ることになる。本隊は上陸前からお人形確定だ。呑めるわけない」
「うん、だから頼るのは軍そのものじゃない。正規軍のうちでもある程度の人間を動かせる地位にいて、それでいて『個人的なお話』で留めてくれるような奴を頼るんだよ。ちょうど僕たちにはそんなお友達がいるんだけど……」
どう? と首を傾げる。と言ってもそれはほとんど確認作業。返答は決まりきっている。
一分後、僕は我らが優しいお友達、梶浦謙吾少佐に向けてラブコールを送るのだった。
◇
現場に到着した梶浦はまず大きなため息を吐いた。えー、なにゆえ。
「遥、俺はつい最近言ったばかりのはずだ。こういう厄介な状況に遭遇したらまず俺に報告をしろと」
「うーん、僕オッケーしたっけ?」
「もう死ねよお前」
あらま、どシンプルな暴言。これ相当疲れてるなコイツ。それだけ大規模遠征やクレイドル受け入れの準備で忙しいのだろう。
しかしどんなに多忙でもクソ有能なのがコイツのいいところ。ホロコールでの状況説明ののち、すぐに人を動かしてくれている。目星がつくのも時間の問題だ。
梶浦、及びそれに付き従う紅雛はイル達の前に立ち、敬礼する。
「東京コロニー正規軍梶浦謙吾少佐だ。貴官らの来訪を心より歓迎する」
「ハハ、センキュー。それにしてはどうにもささやかな歓迎だね?」
「何分サプライズだったものでな。我らが不徳の致すところだよ」
「オレ達はただの観光客で、はぐれてしまった友人の捜索を依頼しただけ。そうだね?」
「俺はそれを学友に請われて、血税を私的に利用して協力する悪徳軍人。言葉を返すが、そちらこそ理解しているのだろうな」
「トーゼン! オレのオトモダチが着いたらしっかり仲良くするよう言い含めるさ。例えば何かお話するときは必ず君を窓口にするとかねぇ」
要するに身分を秘密にしたまま力借りるけど、その借りは梶浦個人にちゃんと返すよってお話だ。それを長々と……立場上仕方ないとはいえ、うーん、くだらない。
ウンザリした僕は二人の会話に割って入る。
「前振りはそのくらいにして、本題に入ろうよ。梶浦、なんか分かった?」
「優先項目――運び込まれた場所の候補、そこから顧客に売り払われるまでの時間は分かった」
「流石。説明お願い」
「場所はB区画第五エリアのオペラハウス、またはA区画第七エリアの白亜インダストリー、本社オフィス三十五階。リミットは三日後のオークション終了日まで」
「オークション?」
「ああ……そういえばそんな季節でしたね」
首を傾げる僕の横で汐霧が納得の呟き。彼女が知っていると言うことは、恐らく裏組織関連だろうか。
「大東亜競売会。前時代の第四次核大戦期から続くとされる大規模なオークションです。東亜煉合――複数の主要な裏組織の連合が主催の、東京中の要人とパイプを作ることを目的としたイベントですね」
「オークションねえ。何を売るのさ」
「何でもですよ。主には兵器や薬物ですけど、アンティークドールや楽器、絵画のような芸術品も取り引きされてます。もちろん人間も」
それならアメリカの秘密兵器なんて格好の商材……うーん、どうだろ。僕なら報復を考慮して売らないかな。
裏組織というと勘違いされそうだが、そのほとんどは正規軍の管理下にある。コロニー運営の邪魔になるような連中はムラクモか第四連隊辺りが動いて即首チョンパ。
そんなわけで、多少法律を無視しようが本当に超えてはいけない一線は超えない。数十年単位でそういう風に調教してきてのが今の正規軍だ。
「梶浦。このイベント、軍は掴んでるの?」
「主催側に招待されているさ。今回も防諜部と高級士官を派遣している」
「じゃあやっぱりおかしいんじゃない? そんな公然の秘密のような状態なら、むしろ件の少女みたいな厄ネタは取り扱えないはずだよ。いくら不可侵を謳っても一線はある。殺界装置は明らかにその線の向こう側だ」
「……推測ですが、それはそうせざるを得ない状況にある組織の仕業じゃないでしようか」
「というと?」
「ここでの出品内容は東亜煉合における発言権にも大きく影響します。殺界装置の誘拐がこんな開催ギリギリなことも踏まえて、土壇場で欲に負けた組織があっても不思議じゃありません」
「成程……そう言えば、今年は例年以上の商品が入ったと喧伝していた組織があったな。そこか、もしくはそこに対抗するためか……何にせよ特定の材料になるはず。精査を急ごう」
流石は若くして正規軍左官階級のエリート。梶浦に任せておけば誘拐した組織の特定はすぐに済む。そうしていろいろ確定したらいよいよ突入だ。今のうちに体を休めておいた方がいいな。
そう思って目を閉じた僕に、梶浦は言った。
「遥、お前売るから」
そんなわけで、僕は売られた。