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聞いてみるよ  作者: 浅黄
3/3

03:じゃあ、歩こう

何で俺はこんなとこにいるんだろう…?

じりじりと暑い秋の日差しが俺をやきつける

ギャアギャアと隣で騒いでいる金髪を、「静かにしろよ」と黒髪がなだめる

俺たち3人の後を俺たちと同い年くらいの少女たちがついて来る

俺たちは6人で遊園地に来ている

何故来たのか、俺は確か金髪のヒロとスタジオに行くと約束をしたはずだった

なのに行き着いた場所は遊園地

ヒロはもともとここに俺を連れてくるつもりだったらしい

俺はこんなとこ来たくは無かった

人付き合いはハッキリ言って苦手だ

「おい、シュウ」

ヒロが俺に話しかけてきた

「今から2人で行動だってさ。くじ引き」

ヒロの拳からはみ出たつまようじの束の中から1本を引き抜いた

「赤」

俺は短く一言言うとヒロにつまようじを返した

「ってことは…」

1人の少女と目が合った

見覚えのあるその顔を驚きの表情に変え、少女は言った

「シュウも赤?」

「ああ」

少女は俺たちのバンドのメンバー、ケイだった

「お前、来れないんじゃなかったのか?」

ケイは小走りで俺に近づいてくる

「うん。来る筈だった子が急に行けなくなっちゃって、代わりに来た」

俺はふーん、と気の無いような返事をした

実際は知らない女と一緒に過ごすよりはケイの方が過ごしやすく、心強かった

「よろしく」

ケイは俺に手を差し出した

俺は黙ってケイに手を差し出し微笑んだ

「ああ」

ヒロは大人しそうな女の子とペアになっていて、黒髪のハルヒは積極的な女の子とペアになっていた

ハルヒは腕を引っ張られながら俺たちの元から去っていった

ヒロはそんなハルヒを笑いながら「頑張れよ」と声援を送り、女の子が行きたいと言っていた店へと向かった

ヒロはバンドのムードメーカーだ。悪い空気になったときはいつもこいつが立ち直してくれる

また、ヒロは人見知りをせず、誰とでもすぐに打ち解けることができる

そういうところは、少し羨ましかった

「私たち、どうする?」

ケイは俺の方を覗き込みながら聞いた

「どうするって…」

俺は、ケイが満面の笑みを浮かべている事に気が付いた

「何でそんなに楽しそうなんだ?」

俺が言うと、ケイは顔に手をやった

「え?」

俺はケイがおかしくって少し笑うと言った

「別に、気にしなくてもいいぞ」

「だって、かっこ悪いじゃん一人だけにやけてて…」

「…まあ、な」

俺は一旦ケイから視線をはずし、空を見上げた

真っ青な綺麗な空だった

前に綺麗だと思った空は真っ赤だった

「せっかくだし、どっか行く?」

ケイは俺より先に歩いて聞いた

「そうだな」

俺が言うとケイは振り返った

ふわりと長い髪がゆれる

「行きたいところ、ある?」

俺はケイの隣に並び、歩きながら言った

「お前の行きたいとこでいい」

俺が言うとケイが笑った

「何だよ…?」

「『別に…』とか答えるかなって思ってたから意外だな、って」

確かに、昔の俺ならそう言っただろうな

俺はケイの横顔を見つめながら思った

ケイって思ってたより子供っぽいところがあるんだな

「じゃあ、乗り物とか乗ろうよ」

「ああ。問題無い」

ケイは嬉しさで目を爛々とさせながら、また俺より先に歩いていった





昼飯をはさんで、俺たちはたくさんアトラクションに乗った

ほとんどがケイの希望したものだが、それでも俺は全然かまわなかった

「ハルヒがシュウのこと一番頼りにしてるって言ってたよ」

ケイは手に持っていたオレンジジュースを置くと言った

「俺のこと…?」

「そうそう。『だけど俺は頼りないからかシュウには冷たくされてばっかだなー』ってため息ついてた」

俺はハルヒのことを頼りにしていないわけではない

むしろ、ハルヒのことは一番頼りにしている

廃部寸前の部をこうして無理をしながらも支えているのだ

だから、ハルヒには感謝しているし、それに―――

「違う」

気づけば俺は声を上げていた

「俺は、ハルヒを頼りにしてないわけじゃ…」

「分かってるよ」

ケイは笑うと続けた

「だからリーダーに言ってやった。それは違うよって」

俺は視線を落とした。

別にハルヒに冷たくした覚えも無い。

ただ、俺は皆みたいに優しく声をかけたり、気さくに遊びに誘ったり出来なくて―――

俺が話しかけたら相手が嫌な顔するんじゃないかといつも不安だった

初めて俺は自分の不器用な性格を後悔した

「リーダーは私たちのこと良く分かってるからね。大丈夫だよ」

「…そうだな」

俺は頷くとそのまま顔を伏せたままでいた

心配そうにケイが声をかけてくるのが分かる。

でも、目から熱いものがあふれてくる

泣きたいわけじゃない。泣きたくない。なのに涙が止まってくれない

「……俺は最低だ。いつも自分のことばかり考えて」

ケイは同情のそぶりを見せず、落ち着いた声で言った

「大丈夫。まだ間に合うよ。皆シュウが本当は優しい子だって知ってるから」

滲んだ景色はとても綺麗だった

驚くほどに、それは俺の心を落ち着けてくれた

俺は片手で涙を拭いながらケイにひとこと言った


すると、ケイは微笑んだ

はにかんだような、ふわりとした笑みだった

二人を良い雰囲気にしてやろうとたくらんでたんだけど駄目だった

これは…!デートじゃない!

シュウは想像以上に動かしにくかった



最後のシュウのひとことはご想像にお任せしますね

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