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絆・猫が変えてくれた人生  作者: 冬月やまと
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第69話 忘年会

 今日は、木島さんと菊池さんを呼んで、善次郎の家で忘年会である。

 年明け間もなく引っ越ししてからこの一年、いろんなことがあった。

 美千代と洋平に再会し、夏の二度の入院、自分の独立と、波瀾万丈の年だった。

 夏の入院を機に、木島さんと菊池さんとの親交も深まり、木島さんは大三郎と巡りあえた。

 善次郎がここへ越してきてから、初めて迎える年の瀬を、みんなで騒ぎたくて、善次郎は忘年会をしようと思い立った。

 木島さんは、いつものごとく、大三郎を連れてきていた。

 菊池さんの猫は、人見知り、猫見知りが激しいということで、連れてきていない。

 相変わらず、三匹は楽しそうにじゃれあっている。

 善次郎は、そんなに酒は強いほうではない。

 木島さんと菊池さんはよく飲む。 酒豪いっても良いほどだ。

 美千代も、本気で飲めば、善次郎よりは強い。

 宴が始まってから三時間。

 ビールから始まり、日本酒、ワインと、すでに相当数の缶や瓶が空いていた。

 洋平は、この間のシャンパンに懲りたのか、ずっとジュースを飲んでいる。

 善次郎に似たのか、まだ子供だからなのか、夏の退院祝いに木島さんに勧められてシャンパンを飲んだあと、洋平はぐったりしてしまった。

 飲んだ量は、ほんのショットグラス一杯分くらいだ。

 今日も、木島さんにビールを勧められたが、洋平は首をぶんぶんと振って断った。

 その仕草が、よほどおかしかったのか、四人は笑い転げた。

「酷いなあ」

 それほど拗ねてもいない様子で、洋平が不平を漏らした。

 美千代が、善次郎と決別して洋平と二人で暮らしているときは、洋平はこんなに明るくはなかった。

 家族三人で暮らしているときも、あまり笑ったことはない。

 それが、今では、よく笑う。

 最初は、遠慮してか、大人の話に入ってこなかった洋平も、今では、木島さんと菊池さんにすっかり心を許し、よく会話に入ってくる。

 善次郎に対しては、家族でいたときは、ただの父親との認識でしかなかったが、今は、大好きなお父さんになっている。

 父親として、男として、尊敬もしていた。

「本当に、あの三匹は仲がいいな」

 菊池さんの口調には、どこか羨ましさがこもっていた。

「そう思うんだったら、菊ちゃんよ。自分とこの猫も、連れてくればいいじゃないか」

 いつの間にか、木島さんの呼び方が、菊ちゃんになっていた。

 それだけ、仲が深まったのだろう。

 善次郎との関係ほどではないが、木島さんは、菊池さんを友として認めていた。

「しかし、夏も大変だな」

 大三郎と追いかけっこをする夏を目で追いながら、木島さんがため息混じりに言う。

「仕方ないよ。そういう生まれつきなんだから」

 善次郎も、夏の姿を目で追った。

「だけどなあ…」

「もう、よそうぜ」

 まだなにか言いかける木島さんを、善次郎が遮った。

「どうにもならないことを、悔やんでみたってしようがないだろ。毎月検査を受けて、カルシウム剤さえ、間違いのない分量で飲ませていれば、夏も、普通の猫と変わらないんだから」

 善次郎の口調は、さばさばとしていた。

「そうだけどよ、だけど、善ちゃんは偉いよな」

 さすがに、かなり酔いが回ったとみえて、木島さんはろれつが回らなくなっている。

 まあ、いくら酒に強いとはいえ、ひとりでビール五本と、ワイン一本、日本酒を一升も空ければ、こんなもんだろう。

「検査にも金がかかるし、薬代だって、馬鹿にならない。たかが野良猫に対して、そこまでするなんてよ」

「そんなことを言うけど、あんただって、大三郎が同じ目に遭ったら、それくらい平気でするだろう」

「違えねえ」

 木島さんが、膝を打った。

「つまりだ、俺たちは、バカだということだ」

「バカでいいじゃないか。あんなに楽しそうにしている姿を見れるんだぜ。バカの方が幸せってもんさ」

「そうそう。俺たちは、バカで幸せなんだよ」

 相槌を打つ、菊池さんのろれつも、怪しくなっている。

「そこに、私も混ぜてね」

 美千代が笑いながら言うと、「僕も」洋平もすかさず自分の顔を指さした。

 大三郎は遊び疲れたのか、幸せそうに眠っている。

 その両脇に、活と夏が寄り添うように身体をくっつけていた。


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