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リンファは朝日を感じて瞼を開いた。昨日はある程度話した後、眠りに就いてしまったのだ。精神的な疲れが休息を求めていたから。そして、目覚めて驚いた。
空になったベッドが一つ。四つの内、三つのベッドにはリンファ、ロヴァーナ、リヒャルトが居る。
「イオン・・・?」
そこはイオンが眠っていた筈だ。
だが、そこにあるのは空のベッドだった。そして、その代わりのようにあるのを見つけた手紙。
たった一言、「ごめん」と。
リンファは焦りを感じていた。今までは何だかんだで、イオンが居たからやってこれたと思っている。真実大切に育てられた妹とは違うが、リンファとて王女なのだ。
分からない事も多かったリンファをさり気無くフォローしてくれていた。そんな彼がこんな紙切れ一枚で居なくなったのを不審に思わない訳が無い。
(何かがあったのだ)
リンファは確信する。普段の彼はこんな薄情な事をしない。ならば、考えられるのは緊急事態が起きたのだろう。
(そうであるなら・・・気を付けなければ)
これから、どうなるのか分からない。リンファの胸に不安が押し寄せる。今まで彼女は一人きりでは無かったし、今も一人では無い。
しかし、今のリンファには世界でたった一人になってしまったかのような悲しみが襲い掛かる。
(私は・・・守らなければ)
ミリアム王国の王女なのだから。ミリアム王国を守る世継ぎの姫、それがリンファだ。彼女の細い両肩には一つの国が乗っている。例えその国が小さくても、そこに暮らす人々の営みは代わらない物。
リンファは自身が背負う物の重さに押し潰されそうだった。
(私は・・・たった一人では、こんなにも弱かったのだ)
それでも、立ち止まってはいられない。彼女達には、そんな余裕は無かった。追ってくる者から逃げなくては。
リンファは二人を連れ、歩き出す。
「ふふふ・・・」
その背中を見つめる目は暗い陰りが宿っている。三人の向かう先を見て、その目の持ち主は笑う。
「やぁっと、来たね」
リンファ達が向かうのは、嘗て小さい国土でありながらも、絶大な力を持っていた亡国があった場所。今はセイラム王国の一つの都市になっているが、その土地の力は健在だ。
その力を使おう。この復讐の為に。
彼女の名前は・・・エミアーナ。セイラムの王女であり、輝くような白髪に宝石のような赤の瞳が美しい人だ。だが、彼女の母親は・・・
近付く何か 完




