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世継ぎの姫君と花婿  作者: 如月瑠宮
第二章
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近付く何か

 リンファは頭を抱える。分からない事だらけなのだ。

「リンファ、はい」

 そんな様子のリンファにイオンはシューを差し出す。円らな瞳がリンファを見上げた。それは、リンファを慰めているようでもあり、甘えているようでもある。

 シューの様子に彼女が微笑むと、シューは嬉しそうに飛び跳ねる。

(大体、シューの体はどうなっているんだ?)

 彼(で良いのかは分からないが)は愛くるしい目をリンファに向けて首を傾げる。そもそも、首は何処から何処までだろうか。球体のような丸さを持っているのに、案外動きは似ていない。動きはあくまで、小動物を思わせる。

 柔らかな体毛に覆われた球体。シューを表す一番簡単な言葉だ。

「お前は気楽そうだな」

 リンファの言葉にシューはただ真っ直ぐ彼女を見た。


 その日の夜、リンファは中々寝付く事が出来ないでいた。彼女の枕元ではシューが寝息を立てる。

 リンファはその柔らかい毛を撫でながら、今までの事を思い出していた。

 生まれ育った国を離れ、妹の代わりに嫁ごうとした。ただ、国の事を思っての行動である。

 それが良かったのかは分からない。

 しかし、リンファの決心は揺るがないだろう。もう一度、選択したとしても結果は同じ気がする。彼女の意志は固いのだ。

(きっと、このままでは見つかるのだろうな・・・誰にかは分からないが)

 妹も、自分も追われている。今後の事を考えれば、国に帰る事は出来ないだろう。これ以上、迷惑は掛けられない。

 逃げ続けるしかないのだ。

(国を守る為には・・・)

 リンファは再び決意する。彼女が『王女』である限り。




「うふふふふ」

 愉しげな笑い声が聞こえる。それはきっと自分にしか聞こえていないだろう。

「逃げられない、逃げられない・・・逃がさない」

 歌う様に呟いている。

「すぐに行くわよ・・・待ってて」

 呟きからは逃れられない。それを自分は知っている。


「逃がさない、逃がさない。必ず、捕まるの・・・私が捕まえるから。待ってて、待ってて、待ってて・・・・・・」

 声は、憎しみを込めて呟き続ける。この声が彼等に届く様に。

 近付いていく何かは、うっとりと嗤う。これからが愉しくて仕方が無いのだ。

「この憎しみを、やっと」

 解放出来る。私達を地の果てに追い遣った彼奴等に復讐を遂げられる。

「待ってて・・・必ず、私はお前達を」




 気配を感じて目が覚めた。彼は窓へと目を向ける。窓の外に渦巻く殺意を帯びた影に舌を打つ。

 彼はベッドから抜けると、一文だけの手紙を残して部屋を出て行った。

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