【ロスタイム】 はしる星の歌
クリスマス・イブ。プランタンからの帰り道。
手のひらに感じる熱を確かめるように、小さな手をぎゅっと握る。
花音が俺を見上げて、くすっと笑った。
俺はかぁーっと顔が赤くなるのが自分でも分かって、花音から視線をそらして駅までの道のりを歩いた。
「あっ!」
空を見上げて、花音が声をあげた。
「流れ星!」
その声に、俺も空を見上げる。
チリチリっと、聞こえない音を立てて、星が夜空を駆けて行った。
「ねね、知ってる? 迷いの森の聖なる木に――」
嬉しそうに話す花音が可愛くて、くすっと笑う。
「オレンジ色の星を飾ると願いが叶うんだろ?」
そう言った俺を見上げて、花音が眉間にしわを寄せる。
「なんだ、知ってるのか……」
「小さい時にそんな内容の本を読んだ記憶がある」
「香川も読んだの?」
そう言った花音をじぃーっと見つめる。俺の視線に気づいて、花音が首をかしげた。
「なんで呼び捨て? せめて呼び捨てなら、下の名前で呼べよ……」
俺が、ちょっと不満げに言うと。
「やだよ! だって、ずっと香川って呼んでたのに」
「待て! 一度も香川って呼ばれた記憶ないんですけど?」
「心の中でだよ! そーいう香川だって、私の名前一度も呼んだことなかったくせに、いきなり花音って呼び捨てにしてるじゃない!」
「なんだよ? ダメなのかよ?」
少しふてくされて言うと、花音がぱっと俺から視線をそらした。
「いきなり名前で呼ぶのは無理……、恥ずかしいもん」
見ると、耳まで赤くなってて、その姿が可愛くて頬が緩んだ。
「あっ、また流れ星!」
ぱっと顔をあげて、花音が叫んだ。
「なんだ? 今日はたくさん星がはしるな……」
「香川は、何かお願いしないの?」
そう言って見上げた花音の顔をまじまじと見つめる。
俺の願いは、もう叶ったからな――
「ねえ?」
手を引っ張って訪ねてくる花音に聞き返す。
「花音こそ、願い事ないの?」
「えっ、私? うーん、私は、これから、いっぱいいっぱい大好きなものが増えていったらいいな」
そう言って笑顔で俺の顔を見る。俺も笑い返して、改札に向かう階段を登り始めた。
これにて、完結です!
ここまで読んでくださってありがとうございます。
1ポイントでもいいので評価頂けると今後の励みになります。
初めて男性視線で書いたので、上手く表現できているか心配です。
続編を書く予定なのでそちらもよかったら読んでみて下さい。
誤字などありましたら、お知らせください<m(__)m>
誤字訂正、本文も少し訂正しました。(2011.2.26)