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幸せの愛し方  作者: 涙目
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8/8

第八話 ありがとう

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

失恋というものは、


もっと分かりやすいものだと思っていた。


---


泣いて。


---


酒を飲んで。


---


友達に愚痴をこぼして。


---


時間が解決してくれるのを待つ。


---


そんなものだと思っていた。


---


だけど。


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現実は少し違った。


---


告白をした翌日。


---


朝は普通に来た。


---


太陽も昇った。


---


会社もあった。


---


電車も走っていた。


---


世界は何も変わらなかった。


---


変わったのは、


俺の心だけだった。


---


通勤電車に揺られる。


---


窓の外を眺める。


---


流れていく景色。


---


人々の日常。


---


誰も俺の失恋なんて知らない。


---


当たり前だ。


---


世界は俺を中心に回っていない。


---


それなのに。


---


胸の奥だけが静かに重かった。


---


悲しかった。


---


本当に悲しかった。


---


涙は出なかった。


---


不思議だった。


---


本気で悲しい時、


人は案外泣かないらしい。


---


ただ静かに痛い。


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ただ静かに苦しい。


---


そんな感じだった。


---


会社へ着く。


---


彼女がいる。


---


いつも通りだった。


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少し笑って、


誰かと話している。


---


昨日と同じだった。


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いや。


---


昨日までと同じでいてくれた。


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それが少し嬉しかった。


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そして少し苦しかった。


---


俺は席に座る。


---


パソコンを開く。


---


仕事を始める。


---


大人だから。


---


社会人だから。


---


やるべきことはやる。


---


それでも。


---


ふとした瞬間に思い出す。


---


夕焼け。


---


帰り道。


---


昼休み。


---


笑い声。


---


他愛のない会話。


---


全部残っていた。


---


消えてくれなかった。


---


いや。


---


違うな。


---


消したくなかった。


---


本当は。


---


消えてほしくなかった。


---


その日の帰り。


---


電車に揺られながら、


俺はずっと考えていた。


---


責める気持ちはある。


---


悲しい気持ちもある。


---


傷ついた気持ちもある。


---


裏切られたと思う気持ちもある。


---


全部、本当だ。


---


どれも嘘じゃない。


---


でも。


---


それ以上に浮かぶ言葉があった。


---


ありがとう。


---


何度考えても、


最後はそこに戻る。


---


ありがとう。


---


幸せだったから。


---


本当に幸せだったから。


---


半年前。


---


俺はただの同期だった。


---


朝、会って。


---


昼に話して。


---


帰りに少し笑う。


---


そんな毎日だった。


---


でも。


---


その時間の中で、


俺はたくさんのものを受け取った。


---


笑った。


---


嬉しかった。


---


楽しかった。


---


誰かを好きになった。


---


未来を想像した。


---


胸が高鳴った。


---


明日が楽しみだった。


---


それは全部本物だった。


---


振られたからといって、


無かったことにはならない。


---


傷ついたからといって、


嘘になるわけじゃない。


---


幸せだったものは、


幸せだった。


---


嬉しかったものは、


嬉しかった。


---


悲しいものは、


悲しい。


---


それでいいんじゃないかと思った。


---


人は時々、


感情に理由を求める。


---


正しかったのか。


---


間違っていたのか。


---


意味があったのか。


---


無駄だったのか。


---


でも。


---


全部に答えなんて要らないのかもしれない。


---


ただ。


---


幸せだった。


---


悲しかった。


---


ありがとう。


---


それだけでいいのかもしれない。


---


窓に映る自分を見る。


---


少し疲れた顔をしている。


---


少し痩せた気もする。


---


でも。


---


どこか穏やかだった。


---


なぜだろう。


---


考えて、


少し笑う。


---


分かった気がした。


---


俺は失ったものだけを見ていなかった。


---


受け取ったものも見ていた。


---


だからだ。


---


人は失ったものだけを見ると、


憎しみになる。


---


受け取ったものを思い出すと、


感謝になる。


---


そして今の俺は、


感謝を選びたかった。


---


彼女のためじゃない。


---


自分のためだ。


---


幸せだった時間を、


自分で否定したくなかった。


---


本気だった自分を、


自分で裏切りたくなかった。


---


だから。


---


ありがとう。


---


そう思った。


---


夜。


---


家へ帰る。


---


靴を脱ぐ。


---


部屋へ入る。


---


静かだった。


---


一人だった。


---


でも孤独ではなかった。


---


胸の中には、


たくさんの思い出がいた。


---


幸せも。


---


悲しみも。


---


後悔も。


---


感謝も。


---


全部いた。


---


そして。


---


全部連れて生きていこうと思った。


---


悲しいを悲しいまま。


---


嬉しいを嬉しいまま。


---


幸せを幸せのまま。


---


持っていこう。


---


無理に忘れなくていい。


---


無理に許さなくていい。


---


無理に前向きにならなくていい。


---


ただ。


---


本当だったものを、


本当だったまま抱えて歩けばいい。


---


人は何度でも転ぶ。


---


傷つく。


---


失う。


---


泣く。


---


それでも。


---


また立ち上がる。


---


また歩く。


---


なぜなら。


---


俺たちは、


ありがとうの中で生きているから。


---


窓の外を見る。


---


夜の街が流れていく。


---


明日もきっと朝が来る。


---


俺はまた会社へ行く。


---


また笑う。


---


また傷つくこともあるだろう。


---


それでもいい。


---


俺は知ってしまったから。


---


人を好きになる幸せを。


---


感謝する強さを。


---


そして。


---


自分の足で立ち、


また歩き出せることを。


---


だから。


---


ありがとう。


---


本当にありがとう。


---


そして、


さようなら。


---


俺は、


俺の人生を生きていく。


---


ありがとうの、その先へ。


---


**完**

お読み頂き、ありがとうございます。

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