操魔師
安彦と吹雪は学校に帰ってきた。
まだ午前の授業中だが、吹雪の言うように、赤服に文句を言う先生などいないようだった。
カフェテリアはまだ開いていないが、お茶とコーヒーは飲めるようだ。
吹雪は、今はまだ淹れたてのコーヒーをマグカップに注いだ。
いつものテラス席に着き、安彦はお茶を啜った。
「だけど、どうして俺は平気なんだろ?
周りの人は障りが出ているのに?」
「幽霊と言うのは、存在自体が不自然なのよ。
動物や植物は、よほど甘やかされたペットでもないかぎり迷うことはないわ。自然と世界に帰っていく。
しかし、人は迷うのよ。
死が恐ろしい、自分が無くなるのが怖い、愛する人と寄り添いたい。
様々な理由で人は迷うわ。
自然でないという事は、つまりは神の逆、世界にとっての大きな歪みになるの。
普通、そんな歪みの中に身を置いたら、人も世界の一部なのだから、色々な不都合が生まれるわ。
人体というメカニズムの異常、心の警鐘、そして周りの歪んでいない世界との軋轢。
そういったことが重なると、やがて精神が壊れる、という状況を生み出す。
だけど、あんたは子供の頃から剛体術を身につけているせいか、あるいはただの鈍感なのか、まぁ両方なんだろうけど、赤い恋人を受け止めるキャパシティーを持っているのね。
ただ、そのままずっと赤い恋人を受け止め続けるとしたら、退魔の修業が必要よ」
「修行かぁ、一体どんな?」
「普通の退魔師はヒトガタを使うとき、小さな魂を犠牲にするの。でも、いわゆる使い魔、操魔を使う退魔師のことを操魔師というの。
あたしは操魔師じゃないから、どんな修行かは知らない。
近いうちに師匠に会わせるわよ」




