守護霊
「まぁ、これが、あんたの強力な除霊能力の原因ってわけよ」
「わけよ、って言われても! 何なの、この大きな霊は?」
「あら、あんた、自分で言ってたじゃない。赤い病院とかいう怪奇心霊スポットに遊びに行ったんでしょ?」
「ええっ! じゃあ、これ…、いや、このお方は…、あの赤い恋人さんだっていうの?」
「見たところ、そのようよ」
「だけど、色々おかしいよ。なんで俺を守ってるの? そういう霊じゃないじゃない!」
「あんたの話を総合して考えると、たぶん彼女は憑りついているのよ」
「えぇー! でも俺には何の害もないよ!」
吹雪は、はぁー、と溜息をついた。
「わたしも、まぁ、まだ一人前の退魔師ではないんだけど、普通はこれほどの霊が憑りついていたら、分かるはずなのよ。
でも、全然分からなかった。
あんたの言うように障りも出ていないし。
で、思うに、霊にしろ神様にしろ、魔にしろ、障りと言うのは、例えば、神様の憑いた子供を殺そうとする、とか特定の行動をとる障り、と普通の霊が人間に、特に自分を見える人に、認知してほしくて近づいて、でも霊と言うのは普通に自然界にあるものじゃないので、霊に憑かれた人の周りで様々な問題が発生する障り、とがあると思うのよ。
で、彼女はその後者の例で、肝試しの時には、あんたに憑りついていたんだけど、あんたは鈍感すぎて何も気づかずに、周りの人に軽微な障りを引き起こしていたんだけれど、その後、あたしに会う前に、彼女が全く見えなくなるような出来事があった、と考えるわけよ」
「できごと?」
「つまり窪田安彦少年は、神の山で、神様に憑かれたっていう」
「ええっー、そこと繋がるの!」
「おそらくそうだろう、ってことよ。結果、彼女は、ちょうど抜身の刀に、鞘と柄が剣身を守るように被さって、そのことを彼女自身もことのほか気に入っているらしい、ということよ。
だから、近づく霊を問答無用で弾き飛ばしているんじゃないかしら。気持ちいい場所をとられたくない、みたいな事なのか、ちょっとあたしも霊の気持ちまでは分からないんだけど、とにかく彼女は、今や、あんたの守護霊様、ってわけよ」
「守護霊なんていないって…」
「普通いないわよ。自然界には輪廻転生と言う大原則があるんだから。自ら、世の理に逆らってまで祖先の世話を焼く意味なんてどこにもないでしょう。
ただ彼女は、今の状態が気に入ってる、ように見える。
本当のところ霊の心なんて分からないけど、そう思える行動を彼女は取っているわ。
今のところ」
あまりのことに呆然と息を飲んだ安彦だが、急に焦りだした。
「えっ、もしかして、俺、お風呂とかも見られてるのっ!」
吹雪はゲラゲラと笑い、知るわけないでしょう! と安彦の頭を叩いた。




