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神鳴りさんと夕立ちの午後  作者: 六青ゆーせー
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二柱の神様

殿様は、安彦と吹雪を、渋谷のホテルのラウンジに招待してくれた。


「いやぁ、今日は一日、ずっと廃工場のことを考えてしまってね。

ちょっと私なりに思うところもあったものだから…」


ニコニコと殿様は言う。

安彦は、自分も先生に怒られた、と笑った。

吹雪は師匠に会いに行ってきた、ことを告げた。


ふむ、と殿様は考え。


「まず、やはり専門家の話を聞いてみよう」


吹雪ちゃんは俯き、今のところ、はっきり言えることはほとんど無いのです、と答えた。


「二柱の神様や仏様が並ぶものは意外なほど少なく、大抵その神様が男女という関係になっていることが多いようです。


イザナギ、イザナミ両神から、道祖神まで、二つ並ぶ神は男と女として表されます。

それは海外も同じで、ギリシャ神話の神たちが多く夫婦であるように、どういう関係でか男女神という形が多いようです。


でも、世俗の信仰となると難しくなってきます。


手長、足長は男であると記される文章もあるし、大ガマと小ガマが背に乗る、いわゆる背負い神、という例もあります。


大きな神社では、俗な神様は大昔には祭られていたとしても近代化の中で捨てられていった、そんな神々も多く居、しかも今となっては、どういう由来であるのか分からないものも多くあります。


河童やタヌキといった妖怪でも地方によっては大小二揃で、親と子、夫婦といった並びはあるのです。


また古事記の神々にも海幸彦山幸彦神話や少彦名とオオナムチ等、親子でも夫婦でもない二柱の神々はいるのです。


ただし、二柱の神が吊るされている、という特異な信仰、服を毎年着せていく、という祭り方は、独特なようです。特に昭和十九年まで行われていたらしい交互に一年ずつ、と言うのが非常に珍しい、とのことでした。


師匠は引き続き調べてくださっているので、何か分かれば教えてもらえるようお願いしています。

ただ、神様というのは、それこそ、そこにだけしか無いような、逆さ地蔵、とか首つり地蔵、回し地蔵など、ほぼ無尽蔵にあるものなので、逆に、どういう理由でお祭りしていたのか、つまり、元々の工場は何だったのか、が分かれば自ずと範囲も狭まる、というご意見でした」


しまった…、と安彦は心の中で悔しがった。

滝沢氏が生鮮加工の工場にする前から、工場はあったという話を、すっかり忘れていた。


「なるほどねぇ」


と殿様は感心し、さすが専門家だ、と吹雪を褒めた。

吹雪は、成果が少なくて申し訳ありません、と小さくなった。


「安彦君も考えてくれていたようだね」


殿様は安彦に振った。


「はい。三点、これから手に入れたい情報がある、と考えました。

一つは首を吊った滝沢氏が、生前、何か言葉を聞いていた、とのことだったので、それがどんな言葉だったのか?


二つ目は、寝たきり、という娘さんに話を聞けないのか。

これは、高速道路での事故が、今回の事件と関係のないただの事故なのか、それとも何か関係があるのからば、なにかのヒントになるはず、と思ったからです。


三に、工場の従業員さんたちの態度を考えると、やはり何か、ここはもう駄目だ、と思うようなことがあったのだろう、と考えます。

なんとか話を聞きたい、と思いました」


殿様は、うんうん、と頷いて。


「なるほど、その三点は注意して探らせるとしよう」


にっこりと笑って。


「実は私も、今日は仕事が手につかなくってねぇ。

なに、会長職などというのは年度末が終わってしまえば、まぁ社員の担いだ神輿に乗っているだけだからね。

プロジェクトがあれば、相手先に電話の一本もかけるし、会社が回るように手も尽くすが、会社を動かしているのは社員のみんなだからね。


そこで今日は予定を返上して、ずっと考えていたのだよ。

実は滝沢君には叔母さん、という人がいて、練馬に住んでいたんだ。今日、会う予定を取り付けさせてもらったのだが、君たちも一緒に来てくれないだろうかね?」


安彦は、行きたい! と思ったが、吹雪を見た。


吹雪は頷いた。


「ご一緒させて頂きます」


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