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都市門前の広場は凄い人混みであった。
中央付近の住民が軒並み避難してきているのだから当然ではあるが、それに加えて冒険者たちも勢揃いしているので万を超える人数が居る。
どうやら解決したのを察しているらしく、避難していた人々は端の方から帰宅を開始しているようだ。
きっと高い所から戦場を眺めていた猛者が居たのであろう。
「ポンさ〜ん! こっちで〜す!」
ギルドマスターであるトマス氏はどこだろうかと探していると声を掛けられた。……斜め上から聞こえたような?
見上げると宿の2階から兎獣人の受付嬢が手を振っていた。ギルドはあそこを拠点として使用しているらしい。
ふむ――人混みの中だと視界が通らず状況把握が難しかったのであろう。天竜のブレスを考慮すると少し危ない気がするが、どこに居ても危ないとも言える状況だったので効率を優先したに違いない。
私は手を振り返して宿の入口に向かう。
窓から入るのはさすがに行儀が悪かろう。
「――討伐ご苦労だった。屋上から観ていたが想像を絶する戦いだったな」
見張りにでも任せれば良さそうなものを、トマス氏も高い所に登って観戦していたらしい。さすがはデュラムのギルマス、肝が据わっている。
――宿の2階に行くと大部屋の扉が開きっぱなしで固定されておりすぐに分かった。
入ると部屋の奥でトマス氏が椅子に座って待っていたので私も向かいの椅子に座ったところである。
「さすがに苦戦させられたが何とかな……。そうだ、共闘していた謎の仮面は先に帰ったぞ。――仕事が溜まっているそうだ」
トマス氏は愉快そうに目を閉じると小さく笑う。
「ふっ……忙しないお方だな……。彼への礼は個人的に何か贈っておくとしよう」
さすがに正体を察してなお謝礼無しというわけにもいかないのだろう。しっかりしている。
トマス氏は仕切り直すように表情を戻すと私を見つめた。
「――それで、報酬をどうするかなのだが……」
私は頭を振る。
「私も緊急対応に当たった内の1人に過ぎない。依頼を受けたわけでなし、他と均一で構わない」
それを聞いたトマス氏は困った顔をした。
「ありがたい申し出ではあるがそういうわけにもいかんだろう。間違いなく第1功だ。――そうだ。確かランク7だったな? ランクアップはどうだ?」
ランクアップか……。
別に嬉しくはないが、それで困りもしないな。むしろ制限が緩和されるぶん動きやすくなるだろう。
折衷案としては優秀ではなかろうか。
「いいだろう。それで頼む」
了承する私に、トマス氏は満足そうに頷いた。
そして申し訳なさそうに眉根を寄せる。
「本来であれば帝ランクを付与してやりたいところなのだがな、それが出来るのは帝国だけだ。最大のランク9で我慢してくれ」
――んん? 私の認識と齟齬があるようだ。
「てっきりランク8に上がるものだとばかり思っていたが……」
困惑する私にトマス氏は少し口角を上げる。
「ここはデュラムだからな。他とは評価のシステムが違うというわけだ」
そうなのか……ではありがたく昇格させてもらうとしよう。




