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元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
ifルート編

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エンディング 茜編

『墓参り……五十嵐の……』


謎の倒置法メッセージで俺は茜ちゃんに呼び出された。


そう言えば、お盆の時期か……五十嵐のお墓は柴田家の敷地内にあり、久々にシェアハウスに訪れた。


「泉……よっ……」


「おう、久しぶり!

茜ちゃん、少し大人っぽくなったね」


「うん……バディボーな大人になった……」


「なんだよバディボーって……」


離れの裏手に五十嵐のお墓があった。


お墓の仏花やお供え物が新しく、綺麗に整備されている。


誰が手入れをしているかは明白だ。


茜と並び、手を合わせる。


「五十嵐……泉は私を捨てたけど……元気にしてます」

茜ちゃんが細目で俺を睨む。


「うっ……」


五十嵐さんから、茜ちゃんを頼まれていたが……俺は自分の道を進んでしまった。


もう、彼女に俺は必要ないだろう。

仲間も居場所もここにある。


ルミナスイリアで俺が抜けた穴は結花ゆうかさんが埋めてくれていた。


時々、NF(ネオンフラグ)のフルパマッチの配信を見ると、みんな楽しそうにプレイしている。


少しだけ、その輪に入れないことを寂しくも思う。


――俺が生活していた離れに戻る。

部屋はもともと置いてあった家具が多く、住んでた頃は俺は生活用品ぐらいしか持ち込んでいない。


「ここも、変わらないな」


「ここ……五十嵐の部屋だったんだよ」


「そういえば、そんなこと言ってたっけ」


部屋を眺めていると、茜ちゃんが俺の服の袖を掴む。


「泉……私、今が食べ頃だよ?」


「ぶふっ!?

あ、茜ちゃん、突然何を言い出すのかな?」


「ええっと……夜伽のお相手ならいつでもするよ」

茜ちゃんは白いワンピースのスカートの裾を少しだけまくり、太ももを見せつける。


「おい……それ、結花さんの入れ知恵だろ?」


「うっ……おかしいな……こうすれば、童貞はイチコロって言ってたのに……」


「結花さん、子どもになんてことを教えているんだ」


茜ちゃんは真正面から俺を見上げる。


「子どもじゃない……私、もう子どもじゃないよ!」


彼女のグレーの瞳に、強い光が宿っていた。


茜ちゃんはもう成人している。

いつまでも子ども扱いは失礼か。


「茜ちゃん……ごめんね」

いつものように、彼女の頭を撫でようと思ったが、子ども扱いはやめ、手を引っ込めた。


茜ちゃんは俺の腕を掴んだ。

「頭は……撫でてほしい……」


胸の鼓動が跳ねた。


うっ、なんだこの可愛い生き物は……、

茜ちゃんが異様に可愛く見えた。


思わず、茜ちゃんを抱きしめる。


「うっ……泉……痛い……」


「あっ、ごめん……つい」


俺は慌てて茜ちゃんから手を離す。


「ううん。大丈夫……ようやく、泉も私の魅力に気づいたか……」


今度は茜ちゃんが俺の背中に手を回した。


茜ちゃんは目を閉じて、背伸びをする。


かすかに上を向いた顔が何を求めているかは、すぐにわかった。


俺も期待して目を閉じた。

茜ちゃんの吐息が、顔にかかる。


あれ……しばらく待っても、唇にはなにも触れない。


ゆっくりと目を開くと、茜ちゃんが目の前で頬を膨らませていた。


「……届かない」


そっか、茜ちゃんと俺だと身長差がありすぎて届かないんだ。


「ぷっ……」

思わず吹き出してしまった。


「むぅぅ……」

茜ちゃんはいっそう頬を膨らまし、ぷいっと顔を背けた。


彼女は怒って部屋を飛び出したが……すぐに戻ってきた。


……足台?

茜ちゃんの手には木製の台が抱えられていた。


それを俺の前に設置して、「よいしょ」とその上に上がる。


そして、期待するような顔で目を閉じた。


「ぷっ、あはははは……」


ムードもクソもない状況に笑いが堪えきれなくなる。


「むっ……泉……嫌い……ふん!」


茜ちゃんは、部屋から出ていってしまった。


これは……俺が悪かったな。


今まで、茜ちゃんは妹のような存在だと思っていた……流れでキスをしかけたが、俺は本気で彼女のことが好きなのだろうか。



とりあえず台だけ戻そうと、離れから茜ちゃんを追いかける。


彼女の部屋の襖をノックしようとしたが、中から啜り泣く声が聞こえてきた。


今は、入らない方がいいか。


……このまま帰るわけにもいかず、居間で時間を潰していた。


「あれ……泉くん? 来てたんだ」

おっとりとした声が背後から聞こえる。


「あっ、結花さん。お久しぶりです」


「今日はどうしたの?」

彼女はそう言いながら、長机を挟んで向かいに座った。


「五十嵐さんのお墓参りに来まして……」


「茜ちゃんは?」


「いろいろあって……」


結花さんは好奇の目でこちらを見ている。


「なになに! お姉さんに話してみなさいよ!」


「もう、結花さんのせいでもあるんですからね。

そんな、面白がらないでくださいよ」


俺は仕方なく、結花さんに経緯を説明した。


「俺……どうすればいいですかね?」


「あらあら、青春ねえ」


「茶化さないでください……」


「泉くんは、茜ちゃんのこと好きなの?」


「好きですけど……恋愛的な意味かと言われると……まだ、わからないです」


「なによ、煮え切らないわねえ。

泉くん。そんなに難しいことでもないのよ」


「えっ?」


結花さんは笑顔をやめ、姿勢を正す。


「茜ちゃんはね、泉くんが家から出ていって、毎日、スマホとにらめっこしていたのよ。

メッセージ……なんて送れば会えるのかって。

五十嵐さんを口実に会うのを提案したのは私なの……始めは、茜ちゃんも後ろめたさで、拒否していたの」


でも、結果は俺のメッセージに残されていた。


茜ちゃんはそんなに毎日俺のことを考えてくれていたのか。それだけ本気だったということ。

それなのに俺は……彼女が怒った理由がようやくわかった。


「好きかどうかは手を握るだけでもわかるのよ」


「そんなこと……」


「ほら、今から謝りに行くよ!」


「でも、泣いているし……」


「女の子が泣いている時は、慰め待ちなの!

早く行くわよ!」


「えっ、ちょっと……」

半ば強引に結花さんに引っ張られて行く。


茜ちゃんの部屋の前に行くと、まだ泣いていた。


「茜ちゃん……開けるね」


「……」

結花さんが声を掛けるが返事は返ってこなかった。


結花さんはそのまま襖を開けた。


薄暗い部屋の中で、茜ちゃんは頭まで布団を被っていた。


部屋の中は彼女の匂いで満たされていた。


「えい!」

いつの間にか背後に回っていた結花さんに、突然背中を押される。


「ちょっ!」

俺はバランスを崩し、茜ちゃんの上にダイブする。


「ふぎゃっ!」

茜ちゃんの可愛らしい悲鳴が短く響く。


俺は、振り向き結花さんを睨むが、彼女は手を振りながら襖を閉めた。


あの人は……無茶苦茶だ。


「泉……重い……」

茜ちゃんが布団から顔を出し、消え入りそうな声を漏らす。


「わっ、ごめん!」

俺は慌てて飛び退く。


「……何か用?」


やっぱり茜ちゃんはまだ怒っていた。


一緒の布団に入り、茜ちゃんの手を握った。

細く、柔らかい手が熱を帯びていた。


確かに、結花さんの言う通りかもしれない。

頭で考えるよりも体は素直だ。


茜ちゃんは俺の手に指を絡めしっかりと握り返してきた。


彼女の温もりを離したくない。

それだけは確かだ。


言葉で伝える代わりに、茜ちゃんの頬に手を添え、彼女の唇に重ねる。


「ん……」


唇が震えていた。 怖かったはずなのに、それでも彼女は逃げなかった。


茜ちゃんは、俺なんかよりもずっと大人だ。


「茜ちゃん。好きだ……」


茜ちゃんは返事の代わりに、俺の唇に彼女から重ねた。


§


気づいたら二人でそのまま夜まで寝ていた。


目覚めると、茜ちゃんの瞳が俺を映していた。


「茜ちゃん……起きてたんだ……」


「うん……泉……入籍はいつにする?」


「入籍か……って、入籍!?」


「柴田家は……接吻した者と籍を入れるしきたりなの」


いつの時代の風習なんだよ。


でも、それが本当なら彼女はあの時、俺と添い遂げるぐらい本気だったってことだ。


「茜ちゃん……まずはお付き合いからどうかな?」


「うん……それでもいい……でも、もう逃さないよ」


茜ちゃんが俺の胸に手を置く。


「逃げるなんて……しないさ」

茜ちゃんって実は愛が重いタイプなのか?


「信じる……」

茜はそう言って笑った。


窓の外から月明かりが差し込んでいた。


五十嵐さん。

一度は約束を違えた俺だけど――

これからは、最後まで茜ちゃんの隣にいますから。

ここまで応援してくださった読者様には本当に感謝でいっぱいです。

これにて正式に完結とさせていただきます、

細かい推敲や表現を変えることはありますが、物語としてはこれで完結です。


五月から書き始めて約一ヶ月半で書ききることができました。


書きたいプロットがたまっていてガンガン次に進んで行きたいと思います。


また、別作品がどこかで皆さんの目に触れる機会がありましたら、お会いしましょう!


よろしければ、評価や感想をいただければと思います!

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