34話 闇鍋
12月25日――久しぶりに五人全員が集まった。
「それでは、みなさん――泣いても笑っても、鍋は美味い! 本日は闇鍋をします!」
声高らかに叫ぶ。
「配信外でそのテンション……ないわ」
あれから楓は、あまり自分を偽らなくなった。
「うっせぇ、俺に挨拶を押し付けておいて、
そのリアクションはあんまりじゃないか?」
「闇鍋……強そう!」
茜ちゃんは別の意味で喜んでいる。
俺は、部屋の灯りを薄暗くした。
「海人くん……怖い……!」
舞ちゃんが抱きついてきた。
「大丈夫……俺がそばにいるから」
「先輩ら、バカやってないで、さっさと食べましょう。……んじゃ、ウチから鍋に入れますね……って、ホントに暗くてなにも見えねえっすよ?」
台所に用意した鍋に、岬が向かう。
「見えたら闇鍋じゃないだろ」
「なんで、配信でするような企画をオフでやってんのよ」
楓がため息をつく。
こいつは文句ばっかだな。
それでも、楓が本音で話してくれていることが、
少し嬉しかった。
「これで、面白かったら配信でもう一度するか?」
「なんか……キッチンからシュワシュワ聞こえるんですけど」
「闇鍋……闇鍋!」
怯える舞ちゃんとは対照的に、茜ちゃんは楽しそうに体を揺らしている。
全員が“ブツ”を入れ終わった。
――恐る恐る煮詰めた鍋を、テーブルの真ん中に置く。
「ねえねえ……なんか、甘い匂いがしない?」
楓の言う通り、確かに甘ったるい匂いが鼻にまとわりつく。
ちなみに俺は、無難にチキンにした。
クリスマスだし……。
薄暗い中、蝋燭の灯りを頼りに、器へつぎ分ける。
「それでは岬……乾杯の音頭を……」
俺たちを繋ぐきっかけを作ってくれたのは岬だ。
彼女に託そう。
「ウチっすか? ま、いいっすけど……
それじゃ、KP!」
「「KP!」」
岬の声に合わせて、全員で鍋を口に運ぶ。
……うっ、舌にまとわりつくドロッとした感触――
ええい、迷ったら余計食べれなくなる。
ひと思いに、器の中身を口に運んだ。
うっ……少し、生臭さもあるが、
意外と悪くない……。
柔らかい鶏肉にドロドロした汁。
なんか、小さいつぶつぶも入っている。
「ちなみにみなさん、何を入れました?
……クリスマスと言えばチキンだから、俺は鶏肉を入れたけど」
「ウチはシャンパン!」
「岬……それは普通に飲みたい……」
それでさっき、シュワシュワ、音が鳴っていたのか。
「私は……キャビア……」
「キャビア……もったいない……」
茜の報告に、楓が悶え苦しんでいる。
「私は、ホールケーキ!」
舞ちゃんの声が跳ねる。
「うっ……甘さの原因はこれか……」
「だって、クリスマスだから……」
舞は、口を尖らせる。
「それはそうなんだけど……」
「まったく、あんたらろくなもの入れないわね」
楓が大きくため息をつく。
「そんなに文句をいうなら、楓は何を入れたんだよ?」
「私は……その……すっぽんの生き血よ」
「えっ……すっぽん?」
舞ちゃんが箸を落とす。
「すっぽん……なにそれ?」
茜ちゃんが首をかしげる。
「なんでまた……?」
「それはね……海人くんとこの後……」
楓が艶っぽい声で俺の太ももを撫でる。
「楓……そういうことなのか?」
「海人くーん? 全部聞こえてますよー!」
「舞ちゃん――いででででで」
逆方向の太ももをつねられる。
「先輩は相変わらずモテモテっすね!」
「おい、岬――助けてくれ!」
「いやっすよ、舞先輩怖いし」
俺たちが騒いでいる中、
茜ちゃんだけが、黙々と一人で鍋を食べ進めていた。
……金輪際、闇鍋はやらない。
§
年末――浅場さん発案による、
大晦日イベントが開催された。
【ルミナスイリアVSアストラ】
アストラは、俺が所属していた元プロゲーマーチーム……充のチームだ。
NFでの交流戦。
とはいえ、2ゲーム先取での本格的な試合だ。
まさか……こんなに早く、自分の古巣と戦うことになるとは。
今の俺がどこまで通用するか――試すいい機会だ。
俺は震える手を押さえ――NFを起動した。




