表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元プロゲーマー、VRで銃が当たらないので投げナイフだけで無双します。  作者: 那須 儒一
一章 再起編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/27

14話 コーチング

「ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」


玄関先で、舞ちゃんが頭を深く下げている。


「嫁入り前かよ……」


「な!? 海人さん、また変なこと言って!

まったく、初めはクールな人だと思ってたのに……」


変なこと言ってんのはどっちだよ。


「今は、どうなんだ?」


「うっ……優しくて……その、クールです」


「まさかの、褒め殺し」

俺は、笑いながら舞ちゃんを部屋に招き入れる。


§


ボロアパートのエアコンを新調してもらい、

俺の部屋も快適になった。


最近、知ったんだけど、ここのアパート、会社持ちの物件だったらしい。


そう言えば、契約が切れた後、

金の無い俺に浅場さんがこの物件を紹介してくれたっけ。


チームを辞めたってのに……

俺は、ずっと前から彼に助けられていたんだ。


「海人さーん、おーい!」


舞ちゃんが、俺の顔の前で手を振る。


「っと、わるい。少し、考えごとをしてた」


「海人さんも、予定があるのにごめんね……

私に付き合わせて」


数日前――舞ちゃんから、

NF(ネオンフラグ)のコーチングの依頼があった。


「私、レイちゃんの隣で戦えるぐらい――強くなりたいんです!」

彼女の強い眼差しに、思わず承諾してしまった。


オンラインでのコーチングでもよかったのだが、

NF(ネオンフラグ)はVRに移行してから、

VRゴーグルとコントローラーの動かし方――

上半身の使い方が重要になる。


VR・FPSは、まったくの別物に進化したといっても過言ではない。


「海人さん、

このトレーニングモードってやつでいいの?」


「そうそう」


舞ちゃんにはVRのイヤホンだけ外してもらい、

俺の声が直接聞こえるようにして、コーチングを開始する。


NF(ネオンフラグ)は、エイム以上に、情報が大事なんだ」


「……情報?」

舞ちゃんとゲーム画面のアバターが首をかしげる。


「スキルの使用状況。敵の人数、ダメージ報告。

相手が強ければ強いほど、この報告を増やさなければいけない」


「……なるほど」


彼女に実際にCPUと撃ち合いをしてもらう。


「舞ちゃん。角を出る時、頭だけ覗かせて、すぐに引っ込めると、待ち構えてた敵から倒されるリスクを減らせるよ」


「はい!」

次第に慣れてきたのか、彼女は頭を下げて、ベットラインを外したりと細かい動きも次第に身についていった。


§


どれだけ時間が経っただろう。

気づけば、外は真っ暗だ。


「舞ちゃん。今日はこれぐらいにしよっか」


「遅くまで、すみません!

今日はありがとうございました」


ぐぅ~

――目の前の小柄な女性が、腹の虫を鳴らす。


「す、すみません。朝から何も食べてなかったから……」

彼女は頬を赤らめ、お腹を抑える。


「それなら、一緒にご飯食べよっか」


「えっ、いいんですか!」


「ああ、楓が作ってくれたオムライスがあるんだよ」


「楓って呼んでるんですね。

それに、ご飯まで作ってもらって……」


さっきまで明るかった彼女の声が、なぜか落ちる。


「あ、うん。舞ちゃんだけ名前呼びで羨ましいって言われたから……俺、料理できないからさ、ときどき楓がご飯を作ってくれるんだよ」


立ち上がり、冷蔵庫を開けようとした時――

「ま、待ってください!」


舞ちゃんが冷蔵庫の扉を必死に抑える。

「わ、私が作りますから……海人さんは、座っててください!」


「いや、お腹空いているでしょ?

作り置きを食べた方が早いよ」


「ダメです!

コーチングのお礼も兼ねて作らせてください!」


――圧がすごい。

別に、断る理由もないしな。


「じゃあ、お言葉に甘えるよ」


「はい!」

彼女は跳ねるように、

自分の部屋に食材をとりに行った。


§


キッチンで、舞ちゃんは、小さな体をぴょこぴょこ動かしながら、必死に料理をしている。


……彼女は、いつも真剣なんだ。

遊ぶ時も、配信するときも――そんな一生懸命な姿に、俺も勇気づけられたのかな。


しばらくすると、端が少し焦げたオムライスが出てきた。


チキンライスを卵で包むのは難しかったようで、

チキンライスの卵乗せになっている。


「ご、こめんね……

自分から作るって言っておいて」


俺はスプーンですくい、大きく頬張る。

……ジャリ……ジャリ。


「ご、ごめんなさい……」

舞ちゃんもそれに気づいたのか、食べる手が止まり、目元を擦りだした。


少し、嗚咽を漏らしながら、彼女は肩を揺らしていた。


お世辞にも、美味しいとは言えない。

でも、俺のために一生懸命作ってくれた。

それが、何よりの調味料だ。


何も言わずに、オムライスを平らげた。


「ふぅ〜、食べ応えがあった!」


「ふっ……海人さんらしい感想ですね」

彼女は泣き腫らした目で、笑っていた。


「食べないなら、俺が食べるぞ?」


「ダメです。私だってお腹空いているんです!」


舞ちゃんには感謝している。

色のなかった部屋に、いつの間にか誰かの温度が残るようになっていた。


彼女には、返しても返しきれない恩がある。


殻が砕ける音が響き――二人だけの時間が過ぎていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ