クリストフ信者
「そいつ、クリストフの熱狂的な崇拝者で。子どもの頃から聖騎士に憧れて、ずっと剣の腕を鍛えてたようなやつなんです。しかし、実際は僧侶で、Bクラスにいるんですけど」
「それがどうかしたの?」
「…ルイーズさんのこと、目の敵にしてるみたいなんです」
ああ…そういうことか。私の逆バージョンだ。
私は聖女になりたかったけど、聖騎士になってしまった。
なので、感情的に聖女様たちにあまりいい印象がない。嫉妬心かな。
その人は聖騎士になりたくて剣を鍛えたのに、僧侶になったのね。
気の毒といえば気の毒だけど。
私を目の敵にされてもなあ。
「僕がルイーズさんとよく一緒にいるところを、見てたみたいなんですよ。それで話にならなくて」
「そうだったんだ…ごめん、面倒かけちゃったよね。いいよ、別に剣の場所がわからなくても」
「すみません。もう少し自分で調べてみますけど。あと、そいつ、オーグスト・プルマンっていう名前なんで、気を付けてくださいね。決闘とか申し込みそうな勢いだったんで、念のため」
「いやいや、決闘なんて受けないけど。オーグストね、覚えとく。面倒くさい人だね」
ニコラくんは、ゼミの準備があるので、と言って、話すだけ話すと行ってしまった。
しっかし、魔導士科にも血の気が多い人、いるんだね。
決闘申し込むような人が僧侶って、なんか間違ってる気がするけど。
この世界、職業を自由に選べないっていうところが、なんだか窮屈だ。
そんなに聖騎士になりたいなら、代わってあげたいよ、ほんと。
今日はニコラくんが不在なので、久しぶりに早く帰ってのんびりしようかと廊下を歩いていたら、ワルデック先生に呼び止められた。
「おう、デイモント、ちょうどいいところにいた」
「なんでしょう?」
「いや、お前のパーティーなんだけど、Bクラスのやつと組んだのか?」
「いけませんか?」
「いや、いけなくはないんだが…Bクラスのやつには俺の目が届かないからな。どんな奴かよくわからんし。それと魔導士科のデルビーってのは、スワンソン先生の助手のやつだろう? もやしみたいな」
「ニコラくんはもやしじゃありません! それに学年主席です!」
「そうだが、ダンジョン攻略には向いてるやつと向いてないやつがいるぞ? 大丈夫か?」
「全然大丈夫です。心配してません」
ワルデック先生は悪気はないんだろうけど、マルクとニコラくんの実力を知らなさすぎるよ。
Bランクモンスターだって倒せる最強メンバーだと思ってるのに。
「お前のパーティーだけ、半分が女子だからな。今スワンソン先生と相談して、聖女様じゃなくて、結構剣が使える僧侶のやつをつけてもらうことになったから。ええっと、なんて名前だったかな…」
「…オーグスト」
「おお! そいつだ。オーグスト・プルマン。知ってるのか?」
「さっき知りました…」
「おお、そうか。そりゃよかった。仲良くやれよ」
うーん。フラグだったか…オーグスト。
面倒なことになったなあ。
決闘は避けたいよ…トホホ。