ひねくれオーグスト
「…ということで、今日からはパーティー単位での演習に入る。このポルト平原には、角ラビと百足ヘビぐらいしかいない。なんでもいいからパーティーで魔獣を10体狩ってくること。制限時間は夕刻までだ。けが人が出たら、まずは聖女様にお願いして、問題があったら報告しにくるように」
ワルデック先生と、Bクラスの担任の先生と、スワンソン先生が引率で、校外演習だ。
私の横にレアナ、マルク、ニコラくん…そしてオーグスト。
会ってからまだ一度も口をきいていない。
挨拶しても、無視された。むかつく。
ニコラくんの話によると、パーティーが発表されたときに、担任の先生に猛烈に抗議したそうだ。
なぜ僧侶が聖騎士を守る必要があるのか、と。
守ってくださいなんて私は頼んでませんけどね。
「おい…どうするよ、あいつ」
「知らないわよ。別にいなくても4人で十分じゃない」
「そりゃそうだけどよ」
オーグストは訓練だというのに、帯剣していない。
聖女様って呼んでやろうか。
目の前を角ラビが横切ったので、レアナがさっさと倒す。
最近レアナは熱心に剣の稽古をしていたので、絶好調だ。
「突っ立ってないで狩らないと、獲物いなくなっちゃうよ!」
レアナは早く終わらせて帰りたいようだ。
内心は結構怒ってるけど、我慢してると思う。
「聖騎士様のお手並み拝見しましょうかね」
オーグストが初めて口を開いた。
腕を組んでニヤニヤしながらふんぞり返っている。
「剣も持ってない聖女様は、危ないから下がっててくださいねー」
と言ってやったら、ムッとしたようだ。
ふん。売られたケンカは買うぞ。
私は悪くない。
マルクはやれやれ、という顔をしているし、ニコラくんはオーグストの顔色をうかがっている。
雰囲気最悪。
本人が嫌だって言ってるんだから、違うパーティーにしてあげたらいいのに。
他のパーティーの様子を見ると、かわいい聖女様が加わって、男子たちは生き生きと走り回っている。
「ルイっ! お願いっ!」
レアナが仕留めそこねた角ラビがこっちに向かってくる。
剣を抜いて、とどめをさす。
「ふっ、子ども用の短剣ですか。聖騎士様が」
「うるさいわね! 雑魚の討伐にはこれが便利なの!」
「ルイ。そんなやつ相手にするの、やめなよ…時間の無駄だよ」
めずらしくレアナが冷静だ。
ニコラくんはちまちまと手でアイスランスを放って、角ラビを攻撃している。
それを見て、オーグストは不愉快そうな顔をする。
「デルビーも本当に情けない。なんでこんな落ちこぼれパーティーにこの僕が…」
「ちょっと!聞き捨てならないわね。ニコラくんはあんたなんかより、よっぽど強いわよ!」
「ル、ルイーズさんっ、やめてくださいっ。僕のことはいいですから」
「よくないわよ! 私はともかくニコラくんまでバカにするなんて!」
「ふん、いつからデルビーは聖騎士様の腰巾着に? 走れないから守ってもらうつもりですかね?」
あ、もうキレたぞ!
ニコラくんが走れないのを知ってて蔑むなんて、許せない!
人間としてサイテーだ。
こいつの根性叩き直してやるっ!
「我が名は聖騎士ルイ…もがっ、むぐっ、ちょ、放し…」
「馬鹿か、お前が決闘申し込んでどうすんだよ」
「…マルクっ、放してったら」
マルクに羽交い締めにされて止められてしまったけど、こいつだけは許せない!
「はははっ…子ども用の短剣で決闘? 冗談も休み休みにしてほしいですね」
「おいお前、いい加減にしろ。こいつらは大事な仲間だ。やる気がないなら帰れ!」
「いいでしょう。僕の力なんて必要なさそうですからね」
オーグストはくるりと踵を返し、手をひらひらと頭の横で振る。
どこまでも嫌味なやつ!




