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「遠野さん、好きです」
「私そういうのよくわからなくて……」
優芽ちゃんは今日も告白されていた。もちろん断ってはいるのだが。
「…………」
私も男の子だったら、なんて思ってしまった。胸が苦しくなる。女の子が好きだなんておかしいのはわかっている。でも、止められない。優芽ちゃんのことが好きなのだ。
「……あ」
優芽ちゃんがこちらを見て苦笑いを浮かべた。私はドキっとする。今日も優芽ちゃんは可愛い。
今日もいつも通りの学校生活なのだが、私はついつい右斜め前に座る優芽ちゃんを見てしまう。普段は眠いだけの授業が、好きな人が出来るとここまで変わるのか。
「じゃあ、秦野さんここ読んで」
「あ」
「あはは、由香ちゃん寝てたの?」
「あーえっと……」
優芽ちゃんはコーヒーを飲みながら私に問いかける。昨日のジュースはもちろん私がもらった。
まさか優芽ちゃんを見ていて授業を聴いていなかったなんて言えるはずもない。
授業中突然差された私はもちろん答えられず、その場で戸惑ってしまった。それを今私は優芽ちゃんに笑われている。
今私たちは学校から少し離れたカフェにいた。今日また優芽ちゃんに誘われたのだ。もちろん私がそれを断るはずがない。
「そういえば、今日また告白されてたね」
「うーん、困っちゃうよね」
私は今日告白されていたことを話題にあげた。
「まあ、優芽ちゃん可愛いから」
「由香ちゃんのほうが可愛いよ」
突然可愛いと言われて私は顔が赤くなるのがわかった。好きな人にそう言われて嬉しくないはずがない。
「ねえねえ、由香ちゃん好きな人とかいないの?」
「え、いないよ」
本当は優芽ちゃんが好き、だなんて言えない。
「んーモテそうだと思うんだけどなー。おっぱい大きいし」
「いや、胸は関係無いでしょ」
「だってさ、おっきいほうが男の子の受けいいでしょー。私小さいから羨ましいな」
「大きくてもあんまりいいことないよ。肩はこるし、服もあんまり選べないし」
「むーそれ私に対する嫌がらせ?」
優芽ちゃんはぶすっとして自分の胸を見下ろす。そこには少しだけ膨らみがある。可愛い。本当に好きな人のことは全部可愛く見える。
「えへへ、なんか由香ちゃんと話してるとほんと楽しい」
私の方がもっと楽しい。
「今度はさー休日に出かけようよ。学校帰りだとあんま時間もないし」
「うん、それはいいけど」
私はニヤニヤを必死にこらえる。なんて幸せなんだろう。
「私が由香ちゃんのおっぱいに似合う服を選んであげる!」
「なんで胸が基準なのよ!」
「あはは」
「……もう」
優芽ちゃんはきっと友達と話している感覚なのだろう。
私はもっと深い付き合いをしたい。もっともっと、優芽ちゃんが、ほしい。