盗賊と遭遇
「ちょっとユート君。人間の気配がするわ。私たちを待ち伏せしているみたい。気を付けて。」
ネロが警戒をしている。
この階にくるまで人に会ってはいない。
他のPTには遭遇するかな~と思っていたけどいなかった。
やっと人に会えると思ったら、待ち伏せしているようってどういうこと。
「ちょっと警戒しょうか。強盗かもしれないから。」
「ええ、わかったわ。」
俺たちは警戒しながら進んだ。
ネロが腕を横に出して俺たちを停止させた。
ん、来るか。
曲がり角の先から男が数名現れた。
「あははは~。聞いているぞ。お前たちはダンジョンが初めてなんだってなぁ。」
と男がしゃべり出した。
「いい女が3人いるぞ。いひひひ~」
そんな言葉が男たちの後ろからも聞こえてくる。
ネロは男たちを睨んでいるがまだ剣には触れていない。
「大人しく、金目のものを置いて行け。
痛い目に遭いたくないだろ。
ダンジョンの中だと殺されたら死体も残らないぞ。」
先頭の男はニヤけていて、後ろの男たちもニヤけている。
ほとんどが俺を見ていない。
女性陣3人を見ている。
「はぁ~。こいつらね。盗賊って。やっつけていいよね。」
ミラが男どもに聞こえるように言った。
「なんだ。てめ~。殺されたいようだな。」
先頭の男の横にいるやつがミラに威嚇してきた。
「ちょっと待ってください。手を出さないって約束したでしょ。」
男どもを掻き分けて、メガネの男が姿を現した。
冒険者ギルドで俺たちに話しかけてきたユモトだ。
「何だ、ユモト。こいつらを知っているのか?」
「ええ。昨日、冒険者ギルドで仲間に勧誘しました。」
「で、俺たちの仲間になったのか?」
「いえ、断られましたけど。でも、この人たちは、何か感じるものがありまして。」
「なんだ感じるものって?」
「はっきりとは分からないのですが、この人たちと敵対してはいけないような。」
お、ユモトは俺たちの強さを感じられるのか。
「おい、ユモトの話なんかどうでもいいから、やっちまおう、ぜ。
俺はさっきの威勢のいいおね~ちゃんを頂くからな。」
「約束を破るのですか。隊長に報告しますよ。」
「うるせ~ ! 」
そう言われ、ユモトは男に腹を殴られ、うずくまっている。
「だめです。この人たちと争ったらいけない。」
と言いながらユモトは気を失ったようだ。
「何だよ弱いくせに。おい、早くこいつらをやっちまおうぜ。ついでにユモトもその後にやっちまおう。どうせ、死体は残らないんだ。適当にごまかせる。」
「ああ、ユモトの言っていることも気になるが、全員でかかれば、大丈夫だろう。
しかも美女が3人いるし。
いっししし女は殺さない程度に痛めつけろ。男は殺していい。」
と仲間同士で話している。
なんか。あいつらだけで話が進んでいるな。
「ちょっと。ユート。どうするのよ。ウザったいわよ。」
ミラの目つきが怖くなっている。
「ユーちゃん。殺していいの?」
サラまで言葉が怖くなっている。
ネロの雰囲気はもっと怖い。
どす黒い怒りのオーラを纏っている感じ。
俺は、盗賊を呆れて軽蔑の日で見ている。
「わかった。剣だけな。殺すな。全員捕まえて、ギルドに差し出すぞ。」
「やっちまえ~。」
先頭の男の叫びが合図となって、20名ぐらいの海賊たちが一斉に俺たちを襲ってきた。
先頭に居るネロは男の剣を素早く躱し、男の首に手套を落とした。
男はその家ま、気を失い、膝から前かがみに倒れ込んだ。
その様子を見ていたミラとサラは、ネロの両サイドから強盗に向かった。
その後は説明するほどでは無く20名近くいた強盗は、全員無傷で気を失っている。
「お疲れ。」
俺は彼女らをねぎらったが、
「準備運動にもならなかったわ。」
ってミラに言われた。
ま、そうだろう。
「それじゃあさぁ。こいつらを紐で結んで。体の後ろに腕を持って来て、手の親指同士を取れないように結んで。こうやって。」
俺は見本を見せた。
「わかったわ。で、この子はどうするの?」
サラが聞いていた。
「ああ、ユモトね。こいつも盗賊の仲間だから同じ様に縛って」
「わかったわ。って。この子。獸人よ。」
あ、本当だ。
髪の毛の上から三角の耳が2つ出ている。
「ギルドの時もフードを深くかぶっていたから解らなかった。」
俺は話した。
とりあえず、盗賊全員を一本のロープで繋いだ。
ユモトは最後だ。
「ミラ。冷たい水で起こしてやれ。」
俺はお願いした。
「了解。」
ミラは魔法でキンキンに冷えた水の塊を人数分作りだし、縄で繋がれている男ども頭に一斉に落とした。
「うお。」
「冷たい」
など、男たちは声を漏らしている。
「おい、てめ~。俺たち縛りやがって。俺たちの仲間は他に居るんだぞ。」
と言ってきた男が居たので、気絶しない程度に思いっきり殴ってやった。
その様子を見ていた仲間たちは黙り込んだ。
「はい。うるさくすると殴りますよ。地上に戻りますからいい子に付いて来てね。」
そう言って俺たちは地上に戻ることにした。
期間的にもちょうどいいし。
帰りはネロの指示で、どんどん上に昇る階段を見つけ上がって行った。
あともうすぐで、地上に出られると思ったら、
「カチ」
っと音がした。
俺は何かを踏んだようだ。
すると俺はダンジョンの壁に吸い込まれた。
「ユート君!」
ネロが壁に吸い込まれる俺の手を掴まえようとしたが、遅かった。
「ネロどうしたの?」
ミラが心配そうに聞いた。
「ユート君が壁に飲み込まれた。」
「あははは~。ざまぁ~みろ。ダンジョンに喰われたんだよ。」
男が叫んだ。
「どういうこと?」
叫んだ男の胸ぐらをネロは掴んでに聞いた。
「たまにあるんだよ。直接ダンジョンが人間を攫うことが。あいつは死んだな。ぐはっ。」
ネロは男を殴った。
「どうしよう。ユート君を助けないと。」
「ネロちゃん、落ち着いて。情報が足りないわ。一旦。こいつらをギルドに引き渡してから、ユーちゃんを探しに行くわよ。大丈夫。
ユーちゃんが私たちを置いて先に死ぬわけがないわ。」
「そうよ。ネロ。ユートを信じて。私たちも、ユートを探してダンジョンの深くまで潜るわよ。」
「うん。そうね。ユート君が死ぬわけないもんね。」




