準備、そしてダンジョンの中へ1
「あのぅ、すみません。」
ミラが受付のお姉さんに話しかけている。
「あ、貴方は先ほどの。ギルドカードはお持ちになられましたか?」
ミラはギルドカード4枚を渡した。
「ん、貴方たちは、今、話題の!!」
「すみません。内緒にしていただけませんか。なんか恥ずかしくて」
俺は、受付のお姉さんの言葉を遮った。
「どうしてです?」
「なんか、俺たちより強い人がたくさんいるみたいで。」
お姉さんは、頭の上に?マークを浮かべている表情をしている。
「お願いしいます。」
俺は、再度、頭を下げた。
「ええ、わかりました。それで、ダンジョンについて説明しましょうか?」
「はい。お願いします。」
「ダンジョンに入るにはチケットを購入していただく必要があります。金額は冒険者ランクに比例します。ユートさんのPTだと、小金貨5枚になります。」
「ちょっと高くない?」
ミラが反論している。
「階層が深くなればなるほど、宝箱の出現確率は上がりますし、宝箱から出るものは貴重なものですので、高く売れます。」
「そっか~、というこは、ダンジョンから出る宝箱は自分のものにしていいということ?」
「はい。ですか、第一交渉権は王家になりぼすので、いらない物があり宝したら、まずは王家と取引をしてください。」
よし。これはおいしいかも。
「それと、チケットは一旦ダンジョンから出ますと、毎回必要になりますので、良く考えてダンジョンに臨んでください。」
「このダンジョンの深さはどれくらいですか?」
「深さはわかりませんが、最高到達階数は、ソロス城の騎士団で構成されたPTが達成した地下52階です。
ちなみに、20階層ぐらいから魔物が魔法を使ってくると聞いておりますので、魔法が使えないAランク級は20階層を超えると危険になりますので、気を付けてください。」
「わかりました。それと、ちょっと兵士の方に聞いたんですけど、なんかダンジョン内で強奪があると?」
「ええ、ユートさんたちのPTでは関係ないと思いますが、ダンジョンの低層では、強奪による殺し合いがたびたび起きています。
本来は取締りを行うべきことなのですが、ダンジョン内で起きるため、なかなか証拠が掴めなくて。」
「そうなんですか。」
「あ、そうだ。良かったらギルドからの依頼を受けて頂けませんか。」
「何ですか依頼って?」
ミラが聞いて来た。
「強盗を取り締まっていただきたいです。取締りをしていただけるなら、3日間はダンジョンの中に入るのを特別に許可します。」
「でも、ダンジョンに入るためのお金は?」
「もちろん必要ありません。」
「あと、強盗を捕まえられなかったら?」
「別に、それならそれで結構ですが、十中八九、ユートさんたちは襲われと思います。」
「僕たちは危険じゃないですか?」
「ユートさんたちだったら問題ないと思いますが、強制できませんので、良ければお受けください。」
「ちょっと待ってください。みんなどうする?」
「ギルドのお姉さんの言い方も気になるけど、ダンジョンに入ることには変わりがないから、問題ないんじゃないの。」
ミラが話した。
「ユーちゃん。初めてのダンジョンを3日間無料で入れるのは、ここのダンジョンのことがいろいろと解るから有り難いわよ。お試しね。」
「ネロは?」
「ユート君に任せる。」
ネロに聞いた俺がバカだった。
「それじゃあ、依頼を受けます。それで、ダンジョンの地図は有りますか?」
「ありがとうございます。強盗が現れたら、生け捕りにしてください。いろいろと尋問をしなくてはいけないので。
地図については、外の露店で売っています。探してみてください。」
「わかりました。それじゃあ、もうダンジョンに入ってもいいですか。」
「あ、これをお持ちください。許可証です。入り口の兵士に渡してください。」
「わかりました。それでは行ってきます。」
「お気をつけて」
そう言われ、冒険者ギルドを後にした。
その足で、露天商で地図を購入することにする。
「あ、あれね。」
ミラが早速見つけたみたいだ。
「すみません。ダンジョンの地図は有りますか?」
ミラが露天商に聞いている。
「あるよ。何階層がほしい?」
「え、どういう料金の仕組みになっているの?」
「地下一階から5階までで小銀貨1枚だ。それ以降は、5階層ごとに値段は上がる。」
「どうするユート?」
「すみません。初めてダンジョンに入るので、地下一階部分だけでも見せていただきますか?」
俺は露天商に聞いた。
「おう、一階だけだっらたいいぞ。みんな知っているしな。」
そう言って露天商は地下一階の部分を見せてくれた。
「この地図の正確性は?」
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「20階までは結構正確だ。それ以上は、何とも言えないな。」
「ありがとう、また今度にします。」
「そうか、必要になったら購入してくれ。」
そう言われ、俺たちは露天商から離れた。
「ユート、地図は買わないの?」
「ああ、最初から地図に頼ると、覚えられないからな。それに、ダンジョンの中の様子を見て必要になったら買えばいいんじゃないの。」
「私もそう思う。3日間は無料だしね。しかも、さっき見た一階の地図はそんなに広そうじゃなかったしね、ユーちゃん。」
「ああ、迷路を楽しもう。」
「楽しもう。」
ネロは迷路と聞いて楽しそうだ。
「わかったわ。それじゃあ、もうダンジョンに潜る?」
ミラが聞いて来た。
「ああ、行こう。」
そう言って俺たちは、ダンジョンの入り口に向かった。
「お~、お前はこの前の坊主か。」
俺たちはダンジョンの入り口で兵士に声をかけられた。
「あ、この前はどうも。これをお願いします。」
「おう。ん。これは。坊主、ごめん。まさかお前が、Bランク以上とは?」
「ん。どういうことですか?」
「この依頼は、冒険者ランクB以上の仕事だ。それを持ってきたということは、お前たちは、Bランク以上という事だろ。」
「そうです。」
「何だよ。最初に言ってくれよ。心配しちゃったじゃんか。でも、Bランク以上だったらもう心配する必要が無いか。」
「どうしてですか?」
「だってよ。せいぜい強盗の強さは、Cランクぐらいだ。」
「そうなの?」
「そうだよ。」
「でも、ここでダンジョンに潜っている人たちって、結構深いところまで、行っているんじゃないの?」
「ああ、そうだが。それが?」
「だって、俺たちって、ダンジョンに昔潜った事あるけど、地下5階でしたよ。
さっき冒険者ギルドであった人は地下10階まで行ったって。」
「う~ん。私にはよく解らないが、ダンジョンに入れば解るんじゃないの?」
「そうですね。いいですか。入って。」
「どうぞどうぞ。ただし、必ず、3日後には戻ってきてください。」
「わかりました。」
「では、気を付けて」
そう言って、俺たちはダンジョンに入って行った。
「おお、ここのダンジョンは、白系ね。」
サラがダンジョンの光を見て呟いた。
「そうだな。エルフのダンジョンは緑系に光っていたけど、ここは白いね。土地柄が関係あるのかな。」
「さ~わからないわ。ユーちゃん。」
「迷路、迷路」
ネロは楽しそうだ。
「一階だから、そんなに強い魔物はいないと思うけど、ちょっとは慎重になるか。」
「大丈夫よ。心配性ね。ユートは。行くわよ。」
そう言ってミラは、先頭を歩き出した。
ま、一階だしね。問題ないだろう。
「それでさ、この前のエルフのダンジョンは迷ったりしなかったの?」
俺は、女性陣の方向音痴度が知りたくて聞いた。
「ユート。私は普通よ。」
なんだ普通って。
「ユーちゃん。私はだめ、全然わからない。でも、ネロちゃんはすごいわよ。完璧に覚えているの。」
「本当なの。ネロ?」
「ん。よく解らないけど、一度通った道は解るよ。なんか雰囲気で解る。」
「すごいな。ネロ。勉強はだめだけど、そう言うところは鋭いな。」
「なによ。もう。」
ちょっとネロはむすっとしている。
「ネロ、褒めているの。じゃあ、ネロにまかせれば、問題ないな。でミラの普通ってどういう意味?」
「私も覚えている方なんだけど、たまに間違えるから。ネロと比べたら、普通ってこと。」
なるほど。ミラは頭がいいから一般人と比べたら覚えがいい方だけど、野生のネロには勝てないってことか。
「あ、ユート。スライムよ。」
ミラが叫んだ。
初の魔物だ。しかも赤いスライム。
赤く半透明で中に核がある。
「ちょっと、近づいて来るけどどうする。ユート?」
「いいよ。適当にやっつけて。」
「わかったわ。」
そう言ってミラは、石を拾う真似をして、手の中で氷を発生させ、「えい」と投げつけた。
でもさ、ダンジョンの中って壁は土の様に出来ているんだけど、すごくきれいで、石とか落ちてないんだよね。
スライムは、ミラの投げた石のような氷がスライムの核に当って砕けた。
スライムは形を維持できなくなり、地面に吸い込まれるように消えた。
「ミラ、ワザとらしい。石なんかどこにも落ちていないよ。」
「あははは。ばれたぁ」
「ちょっとミラちゃん。私たちのPTは(魔法)使えないことになっているんですからね。」
サラが指摘した。
「だって、スライムに対してトラウマがあって、剣で戦いたくないんだもん。」
「あ~思い出した。そう言えば。」
「ちょっとユート言わないでよね。」
「なになに、ユート君。ミラがどうしたの?」
ネロが楽しそうに聞いて来る。
「こうなるともう黙ってられない状況だよね。ミラ、諦めて。」
「もう、しょうがないわね。」
ミラは諦めた。
「別にたいしたことは無いんだけど、初めてミラがスライムをやっつけた時に、スライムの反撃にあって、怪我をしたってこと。」
「え、ミラ。スライムから怪我を負わされたの?」
ネロの目がビックリしているようだ。
「ええ、怪我をしたわよ。それがどうしたの?」
「本当に?」
ネロは再確認した。
「本当よ。」
ミラはちょっと怒っている。
ネロとサラは目を合わせて、ゲラゲラと笑い出した。
「だから教えたくなかったのよ。」
ミラがむすってしている。
「ちょっと、どうしてそんなに笑っているんだよ?」
俺はネロとサラに笑う理由を聞いた。
「だってユーちゃん。スライムよ。いくらなんでも。わはははは~」
「そうよ、ユート君。スライムで怪我をするなんて、子どもでもしないわ。」
とネロとサラは涙目になっている。
「そういうもんか。あの時のスライムは結構、鋭かったぞ。」
「もういいわ。やめて、ユート。恥の上書きになるから。」
「わかった。ハイ。みんなも、もうおしまい。人には言えない過去はみんなもそれぞれ持っているんだから、しつこく笑わない。今が大事。」
「はーい。もう笑いません。」
「私も。」
と言いつつ、何とか笑いをこらえているネロとサラ。
「ちょっとユート。スライムはあんたが倒しなさいよね。」
「わかったよ。ミラ。怒るなよ。」
「怒ってなんかいません。」
そう言ってミラは歩き出した。
「ちょっと待ってミラ。」
俺はミラを追いかけた。
ネロとサラは、二人で顔を合わせ、笑い過ぎたと思ったのか
「ミラちゃん、ごめんね。」
「ミラ、笑い過ぎたよ。反省しています。」
といって後ろから走って来た。
そんなこんなで、地下2階への階段を見つけてしまった。




