ユート、初めてのクエスト
次の日も朝から冒険者ギルドに来ている。
「ネロなんか面白い依頼あるかな?」
「わざと聞いているでしよ。私が字を読めないの。知ってて。」
って言ってネロは俺の肩をぐーで殴った。
俺は、それに懲りずに
「これなんかどうかな?」
て聞いたら、
「ユート君のばか・・・」
って言ってネロは冒険者ギルドを出ようとしたので、
「冗談だよ。」
って行って謝った。
そんな様子を見ていた、
冒険者ギルドの職員の男が、話しかけてきた。
「お、君はアリスの息子だよね。冒険者になったのかい?」
あ、こいつは、祝福を受ける前に、
冒険者ギルドの前で、デブに絡まれた時に、止めに入った人だ。
「その節はどうも。」
「覚えていてくれたかい。そうだ、あの時は大丈夫だったかい?」
「はい。大丈夫です。おかげさまで。」
「そうか良かった。そういえばさ、あの時に絡んでいたデブ、いたでしょ。
あいつギースといって冒険者ランクはDなんだけどさ、
昨日、裏の通路の少し開けたところで、
そいつと数人が怪我をして動けなくなっていて、
気絶していたやつもいたな。なんか知らないか?」
あ、やばい俺たちだ。しらばっくれよう。
「さ~知りませんね。なあネロ?」
「うん。私も知らない。」
「そうか。ま、いいんだけど。
特に死んでいるとかではないからな。
でもあんまり騒ぎは起こさないでくれよ。」
あたかも俺たちが犯人とばれている言い方だな。
「いえいえ、俺たち本当に知らないので。」
「そうかい。ま、なんかあったら相談してくれ、
アリスにも借りがあるからな。ははは~」
そう言って男は事務室に戻っていった。
ネロが
「ばれてたね。」
と耳元でささやいたので
「たぶん。」
と返事をした。
気分を仕切り直して、
「じゃあとりあえず、初クエスト行きますか。」
「なになに?」
「え~と、薬草取り。」
「え~。薬草取り~。魔物討伐とかはないの?」
「ないよ~。初心者冒険者なんだから、まずそこからでしょ。」
「なんかユート君ってまじめだね。」
「やっぱり初クエストは薬草取りって決まっているの。行くぞ。」
といって冒険者登録をしてもらった、
おね~さんにクエスト番号を伝えた。
「はい、受理いたしました。
冒険者カードを提出してください。
このクエストは期限がありません。
ただ薬草を取ってくるだけです。
報酬は書いてある通り、一束、銅貨1枚です。
それでは行ってらっしゃい。」
うん。そう言えば、取ってくると言っても入れ物がないな。
しかも適当に切ったりすると葉っぱってすぐ、
しわくちゃになるよな。植物だと。どうするかな。
「なあ、ネロ。薬草を取ったら入れる、入れ物、持っているか?」
「ない。」
「だよな。それじゃあ、雑貨屋に行って大きい袋と小さいシャベルを購入しよう。たぶんこれからも使うと思うから。」
「いこう。いこう。」
そうして雑貨屋に向かった。
そこには雑貨屋と看板が立てかけており、扉は開いていた。
ほんと、いろいろな物が売られている。っていうか何に使うか解らない物がほとんどだ。
ネロも興味がありそうだ。キノコの置物みたいなものをつんつんと触っている。
「何か御用ですか?」
と中のカウンター越しに40代ぐらいの気のいい、おばちゃんが話しかけてきた。
「すみません、丈夫な大きな袋とシャベルと紐を10mぐらいありますか?」
「ん~。ちょっと待ってて。」
ネロはさっきの置物に飽きたのか今度は猿みたいな置物を手に取って眺めていた。
「おまたせ~。これでいいかい?」
カウンターに置かれたのは、
麻のような植物を乾燥させて編んだ1m×2mぐらいの袋と
不格好だが先の尖がっているシャベルと
袋と同じような素材でできている結構丈夫そうな紐が置かれた。
「すみません。袋とシャベルは2ついただきたいのですが。」
「あるよ。」
「全部でおいくらですか?」
「全部で大銀貨1枚でいいよ。」
「え、いいんですか?」
「いいよいいよ。また買いに来てね。」
と言われ、大銀貨を1枚出した。
はっきり言って高いか安いかは解らない。
地球の常識だと高いと思う。
しかしこの世界だとそこまで物があふれてはいないし、
しょっちゅう売れるものでもないと思う。
でもこのおばちゃんは商売上手なのかもしれない。
ま、いいか。そのうち金銭感覚も解るだろう。
でも、値札が付いているわけじゃないから難しいかな。
おばちゃんがもう一つ準備をしているときに、店の中を見まわしてみた。
そしたらカウンターの奥に魔法の袋と書いたものが棚に飾ってあった。
「ん、ネロ。あれ、なんだか知ってる?」
「知らない。」
「そっか。おばちゃんに聞いてみるか。」
「お待たせ。これ商品ね。」
って物を渡された時におばちゃんに聞いてみた。
「あの、魔法の袋ってなんですか?」
棚に飾ってあるものを俺は指で差した。
「これね、書いてある通り、魔法の袋だよ。
たくさん物が入るし、腐りにくいの。
よくお金持ちの人が、食料とかを入れるために買っていくね。」
ん、地球で言う冷蔵庫か。しかも携帯に便利だ。すごい欲しい。
どのくらい入るか解らないけどできれば購入したい。
「高いと思いますが、おいくらですか?」
「うちで扱っているものはそこまで多く物が入らないけど大金貨1枚だよ。」
げ、高い。
大金貨1枚って日本円にしたら1, 500万円くらいかな。
全然買えない。薬草だといったいいくつ取ればいいんだよ。
まあいい。これは目標だ。絶対に手に入れてやる。
とりあえず、賞品を受け取って店を出た。
薬草は町の西側の少し行ったところ。
一時間程度歩いて、森を抜けると少し開けた場所があり、
そこに群生していた。
「ネロ、適当に抜いちゃだめだよ。根っこから取るんだぞ。」
そういって大きな袋とシャベルを渡した。
「わかったわ。」
ネロはそう言ってスカートをうまく膝の裏で挟んでしゃがんで薬草を取っている。
「今日のご飯が食べれるぐらい取るぞう!!目標、2人で200束」
そう言って2人で黙々を薬草を取り続けた。
お昼も取らないでっていうか用意していない。忘れた。
俺はこういうことは嫌いじゃない。
ネロも文句を言わず頑張っている。
「さーてと、どんな調子だい。」
「こんな感じ。」
「お~きれいに取れているじゃないか、見直した。」
「ありがとう。褒めてくれて。」
「俺もこのくらい。いい加減疲れたな。腰もつらいしな。」
「そうだね。」
「日も傾いて来たし戻ろうか。」
「うん、終了。」
そう言って二人はギルドに戻った。




