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ユートと女の子

新年、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

この町には2つの宿屋がある。


一つは高級そうで、もう一つは普通だな。


もちろん普通の方に入って行った。


ここは、祝福を受けた時にも泊まったところで、

入ったらすぐにロビー兼食堂となっている場所になっていて、

いくつもの机と椅子が並べられていた。


受け付けにはこの前と同じおばちゃんが居た。


「あ、坊やこの前、祝福を受けに来たアリスさんとこの息子だよね?」


「そうです。ユートと申します。」


「あら、お行儀が良い子ね。今日はどうしたんだい。」


「実は冒険者になるために村を出てきました。」


「おうそうか。それでうちに泊まりにきたのかい?」


「そうです。」


「おや、後ろにいる女の子はお前の連れかい?」


「そのようなものです。」


「坊やも隅におけないね~。

前に一緒に来ていたあの子はどうしたんだい。」


「違います。これはそういう関係じゃないです。」


「そうなの。あんまり根掘り葉掘り聞いてもかわいそうね。」


「2部屋、空いていますか。」


「ごめんなさいね。1部屋しか空いていないの。どうする?」


「ん~ん。」


 と悩んでいると


「私は大丈夫よ。」


ネロが言ってきた。


「今日は仕方がないか。それじゃあお願いします。」


「分かったわ。

1泊夕食と朝食付きに2人で小銀貨8枚だけどいいかしら。」


「はい、お願いします。」


と言って俺は、小金貨を一枚出した。


おばちゃんは、ビックリしたように小金貨を見つめている。


「ユート君おつりがないわ。」


困ったように話しかけてきた。


「ごめんなさい。僕、これしかお金もっていないの。」


「もうわかったわ。いいわ。とりあえず、今日は泊めてあげる。明日、両替所でお金を両替してきて。」


といって小金貨を返された。


「どうもすみません。

明日になったらその両替所に言って、すぐにお支払します。」


「お願いね。夕飯はまだなんでしょ。

そこに座って待ってて、今、作るから。」


ネロと向かい合わせで座った。


「ユート君。本当にいいの。私、払えないよ。」


「いいよ。出世払いで。」


笑顔で答えた。


なんせ俺はお金の価値が解らない。

たぶん今までの人生、ネロよりは恵まれていると思う。

少しネロに聞いてみるか。


「ネロはどうして冒険者になろうと思ったの?」


「私は、お金を稼ぐため。

私の村はとっても貧しいの。

だから私が居たらその分、食料も必要になるから、

出稼ぎに出たり、冒険者になってまずは、

一人で稼ぐことを覚えなければいけないの。

それで、余裕が出来たら村にお返ししなくてはいはないの。」


「へ~それで、結構、村にお返しされているの。」


「いや、それは建前でほとんどの人は、

村から出てったらそのまま音沙汰なし。

だからどんどん村はさびしくなっているのよ。

むかつくでしょ。

村で今まで育ててくれたのにお返しをしないで、

のうのうと暮らしている人が居るなんて信じられない。」


「ほー。ネロはいい子なんだね。」


「やめて、まだ稼いでないし。

逆に、ユート君にお金借りているし。」


「ははは~そうだね。」


 などの話をしていると、おばちゃんが夕食を持ってきてくれた。


「はい。シチューだよ。

それにパン。どうぞ召し上がれ。」


 スプーンで一口すくって飲んでみる。

牛乳を使ったっというか。

何の乳を使ったかは、解らないが、

地球のシチューをちょっと薄めたような感じかな。

地球の味を知っているのですごくおいしいって訳でもないけど、

普通に食べられる。

野菜や肉も入っており栄養満点だ。

前に座っているネロを見ると固まっていた。


「ネロどうした 食べないのか?」


「食べていいの?」


と涎を垂らしそうな勢いでシチューをガン見していた。


「どうしようかな。」


ちょっといじめ心が湧いてきた。

ネロはこちらを見て、目をうるうるさせている。


「ごめん。いいよ。食べて」


了解を得た途端、スプーンを持って一口すくって口に入れた。


そしたらまたネロは固まった。


おいしかったのか。まずかったのか。よくわからないがネロは急に目から涙を流し始めた。


「どうしたんだよ。ネロ。こんなところで泣くのやめてくれよ。

周りの人も見ているだろ。」


 俺はどうしようとあたふたした。


「ごめんね、ユート君。

私、こんなにおいしいもの食べたの、生まれて初めてだったから、。

うれしくて・・・・」


「わかったから。頼むから泣くのやめてくれ。」


「うん。」


ネロはひっくひっくしながら無言で食べていた。


まじか~。そりゃぁ今まで俺はダンとアリスの子供で恵まれていたかもしれない。


しかし、地球でもシチューで泣くような子供はいなかったし。


この世界は貧富の差がほんと厳しいのかな。

そうするとある程度、考え方を変えないといけないな。


食事を終え、ネロと部屋に行った。


6畳ぐらいの部屋に両サイドの壁に沿ってベットが二つ並んでいた。


おれは、無造作に片方のベッドに荷物をおいて、座った。


ネロは、部屋に入ったまま突っ立ている。


「どうしたネロ、突っ立ってないで、そっちのベッド使ってくれ。」


「え、いいの?」


「いいよ。」


恐る恐るネロはベッドに手をついて、座った。


たぶんこいつはベッドも初めてなんだろうな。


「今日は疲れたしもう寝るぞ。」


この世界にはお風呂がないわけではない。

公衆風呂はある。

ただ、値段が高い。


その理由は誰でも入ることが出来ると、

お湯がすぐに汚くなるのである程度ルールを守れる人、

イコールお金をもっている人しか使えないのだ。


普段は桶を使って体を拭くぐらいだが、

今日は歩いたり、オークをやっつけたりしたが、

ほとんど汚れていないし、

汗もそんなに書いていないネロの方は特に臭くは無く、

いい匂いがしている。


着ている者は古くてあれだが、

きっときれい好きなんだろう。


と思った。


だから特にはおばちゃんに桶は容易してもらわなかった。



ベットに腰かけたネロは物思いに耽っていた。


ユート君ってお金持ちの息子かなにかなのかな。

なんとなくというか。楽しくてここまで付いて来てしまったけど。よくよく考えてみたら、危ないよね。


どうしよう。


でも美味しかったな。

シチュー。それとサンドイッチ。


あんな食べ物があるなんて知らなかったわけじゃないけど、

食べられると思ってもみなかった。


私、部屋に着いたら襲われるのを覚悟していたのに、

もうすでにユート君は横で眠っているようだし。


本気でお金を返してもらおうと考えているのかな。

でも、私、お金ないし。

どうやって稼ぐのかも解らないし。

いっそ襲われた方が楽だったのに。

私は魅力がないのかな。

私のこと好みじゃないです。

って真正面から言われたし。


ん~ん。


今後、どうなるか解らないけど、

恩は返さないとだめだから、

何とか返せるように頑張ろう。

寝る前に体をきれいにしようつと。


「クリーン」


 

俺は、寝ようと思って目を閉じているが・・


眠れない。


だって隣にネロが居るんだぜ。


少し残念そうな女の子ではあるが、普通に綺麗だ。


この子が野宿しらた、たぶんというか高い確率で変な男に声をかけられて騙されるタイプだな。


それはそれで運命なので仕方がないが。


でも、俺が命を助けたし、

俺の近くで不幸になっていくのは嫌だな。


かなり貧乏そうだし、騙すのは簡単だろう。


でも俺はそんなことはしない自称、紳士だ。


ヴァンパイアは紳士だろ。


決まっている軟派なヴァンパイアはかっこ悪いだろ。


この後、一緒に冒険をするかは解らないが、

世間を知らない俺が言うのもなんだが、

ある程度、ネロが一人で稼げるように、

騙されないようになるまで一緒に居るかな。


ま、俺もこの世界の常識は知らないが、

地球の方がもっと巧妙な手口の悪さを

テレビで新聞やらで報道されていて、

注意喚起とか見たし読んだから大丈夫だろう。


と考えていたら、


「クリーン」


という言葉が聞こえてきた。


ネロの方を見ると青白い光が消える時だった。


俺はビックリして起き上がり、


「ネロ、なんかしたのか?」


と少し大きな声で問い詰めた。


ネロはおろおろした様子で、


「ごめんね。私一人だけ、ユート君も必要だよね。」


とネロは言って


「クリーン」


と呪文みたいなのを唱えた。


俺が青白い光に包まれたと思ったら、

なんか体のべた付き感が無くなったように感じた。


「ネロ、何これ?」


「え、ユート君しらないのマジで?」


「なんのこと?」


「本当に知らないんだ。ちょっと自慢しちゃおうかな。」


「なんだよ教えてよ。」


「これはね。魔法の一つ。クリーン。誰にでもできるよ。」


「え、俺、見たことない...」


「え。私の村の女の人はみんなできるよ。」


「おれ、本当に今までみたことないしそんなこと聞いたこともない。」


「え、そうなの。私の村が変なのかな。」


「ん~解らないよ。他にもいろいろできるの?」


「私はこれだけ。

本当はいろいろな魔法があるんだけど、

私あんまり出来が良くなくて。

でも女の子はいつもきれいにしていなくてはいけないと

お母さんから言われてて、

何とか2年かけてクリーンだけは習得したわ。」


と胸を張って話している。


「超便利じゃん。教えてよ~」


「え~簡単に教えられるもんじゃないよ。

さっきも言ったけど2年かかったんだから。」


「そっか~、じゃあそのうちゆっくり教えでね。

でもさ、それ、たぶん人前でやったらビックリされるよ。

っていうか、こんな便利な事すると目立って、

その噂が王国にも伝わって、絶対に大騒ぎになるよ。」


「そうなの!!」


「絶対になる。

たぶんそんなことできること自体がおかしい。」


「そういえば、

お母さんに人前で魔法を見せてはいけないよって言われた。

って言うか、ユート君が寝ていると思って使ったのに・・・」


「俺は見ちゃったよ~。ばらしちゃおうかな~」


「それだけはやめて、なんでもするから。」


「どうしようかな~」


「意地悪~」


なんて話をしながら、

オークの血が付いていた腕の臭いをかんだらすっかり消えていた。


そんな他愛もない話をして二人は別々のベットで眠りに就いた。



なんかこいつめちゃくちゃ便利じゃん。


なにこのクリーンって魔法、

そんなものがあるのか。


本当に魔法じゃんか。


俺でもできるかな。


まさかネロがこんなにすごい特技を持っているなんて。


これを持つていたらオークなんて討伐し放題じゃんか。


ん.....。


ネロのやつあの時、クリーンの魔法隠してやがったな。


俺がさんざん臭いで苦労していたのに。


ん~でも、しょうがないか。


あんな魔法、人前で使ったら、それこそ大騒ぎだし、

お掃除の⚪スキンの職が無くなるぐらい画期的だ。


なんか、ネロの生い立ちに興味が出てきたな。


面白くなってきた。


無理にとは言わないが、一緒に来てくれるなら一緒に冒険したいな。


ま、何とか別々に行動する前にクリーンを習得できればいいんだか。


スッキリしたし、そろそろ寝ようかな。


そう思いながら眠りに就くのであった。


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