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魔導甲冑マジェスティア  作者: 後藤
3/3

ちっぱい

(しかし、これが女の体、かぁ…)



情けないことに、俺は今、鏡に映る自分に欲情している。

自分の体なのに!

…胸が無いが、2次元のキャラだからこそのバランスだよなぁ。

…胸は無いけど。



…いやでも、仕方ないよな。

生きてる時、というか前の人生では彼女なんか居たこと無いしな。


改めて、周りを見る。

多分、病院の一室だ…けどやけに広いな。

8人部屋ぐらいの広さはあるが、俺一人だ。


ふーむ、一人、か。

俺は再度鏡の前へ移動する。


(…うん、まぁ、ね?)


少し躊躇しながら、自分の体の胸を服の上から触ってみる。

小さくてもおっぱい…俺はその柔らかさにある種の感動を覚えた。

これが、俺の体…!



「…何してるんだい」

「いっ!?」


胸を揉むのに夢中で扉が開くのに気付かなかった!

振り向くと呆れ顔の姐御に、その他大勢。

あー、やっぱおなじみのキャラだ。





コクピットで俺や姐御と話してた老人。

身長が140センチと低いが、顔つきは厳格。

白髪に白い口ひげの学長兼所長、如月博士。



巨乳で真っ赤なナース服。

垂れ目でお姉さんな雰囲気の医療班班長、加藤さん。


紫のパイロットスーツと金色の短髪。

一見チンピラだけど身内には凄く優しく料理上手。

女主人公の兄代わり、ゲキテツパイロットの甲斐。



あとは…あまり覚えてないな。

設定資料集のイメージ図で見たかもしれないが…曖昧だな。

モブだったキャラかも知れない。




「いえ、体に異常がないか、その…」


とりあえず誤魔化しとくか。

口調も無難なのがいいな。

…天音ってどんな口調だったっけ。

たしか、まんまお嬢様だった、気がするな。

オーホッホッホって高笑いするアレ。


…いや、アレをロールプレイするのは無理だぞ俺。

でも、しないと怪しまれるし…。



と、そこでふと考える。


「気付いたらゲームの中でした」

「中身男だけど天音になっちゃったんです」

そう、正直に話したらどうなるだろうか。

皆、俺が生き残るのに力を貸してくれるかな?





…無理、だろうなぁ。

今、目の前に居るのは俺からすればゲームのキャラで、ここはゲームの中だ。

でも、当人達にとってはここは現実だ。

俺が訴えた所で、信じてもらえる可能性はきわめて低いだろう。


何より、この天音は嫌われている。

余計に立場を悪くしてしまう可能性は…大だ。

結果、途中離脱をする確率を高めてしまうかも知れない。

さすがにギャンブル過ぎる。




ならばゲーム知識を伝える、つまり出来事を予知してみるのはどうだろう。

何時、何処で、何が起こるか、どんな敵が出るか。


…いや、難しいか。

基本的にイベントはランダム発生だったしな。

ゲームの中ではステータスが見れたし、ある程度発生時期を予測は出来た。

でも、ステータスなんて見れないし、そもそもステータスが存在するのか?ココ。


それよりも最悪、敵のスパイ扱いされる可能性が高い。

イベントで少し触れられてたが、スパイは極刑だ。

生体的な部品にもされる、とあったな。

こっちもギャンブル過ぎる。



んんんんん、どうしたもんか。



「…君!蓮集院君!大丈夫かね?」

「え?あ、は、はい!」


いかんいかん、すっかり考え込んでしまった。

気付くと、若干名を除き心配そうに俺を見ている。



「少し、色々と混乱してまして」


実際、この状態に対して大混乱だけどな。

あまり変に思われては後々困りそうだから、下手に出ない方が良いか。

俺の言葉に納得したのか、一同が頷く。

そして、如月博士が再び口を開く。


「ふぅむ、あの高さから落ちたのだ、さぞ怖かっただろう」

「えぇ、外傷が無いだけでも奇跡ですよ」



脳波に異常もありませんでしたし、と加藤さんが続ける。

実際、かなりの高さから落ちてたんだろう。



「でも、元はと言えばコイツの責任だろ?」

「止めな、甲斐」


金髪が俺に鋭い目を向け、言い放つ。

チンピラだなぁ。

俺、というか天音相当嫌われてるぞ。

こちらとしては甲斐の良い部分をゲームで見てるから嫌いにはなれないが。


姐御も口では止めてるが、口を塞いでくれるそぶりは無い。

ホント、この先を考えるとつらいな。

どうやれば仲良くなれるんだろう。


「コイツが無理に飛行実験しなきゃ、こうはならなかったんだ」

「ふぅむ、甲斐君、敵の出現は偶然だしソレは結果論じゃよ」

「何が結果論ですか!アイツがいなきゃ俺も死んでたんですよ!」

「お嬢、甲斐の言う通りだ。アンタも下手すりゃ死んでいたんだよ?」


甲斐が俺を怒鳴り続ける。

所長は多分立場的に止めてくれてるんだろうが、効果は薄いな。


たしか…ストーリーの導入は魔導甲冑の飛行試験だったな。

となると、俺になる前の天音は飛んでいたんだろう。

それこそ『目立ちたいため』を理由に無理を押し通してたはずだ

結果、偶然にも敵の侵攻と重なり被害を受ける。


それなのに、俺の体は勿論、機体も無事だった。

それもこれもカレッジの姐御の力だ。


…まぁ、機体が動かないと主人公が搭乗できなくなるからな。

ご都合主義ももちろん作用してるんだろうけど。

でも、ココは素直に感謝しておく。



「はい、姐…カレッジさんのおかげ、ですね」


俺は姐御の方に体を向け、頭を下げる。

ストーリー的に、天音…俺がこの時点で死ぬことは無い。

…と思う。


だが、ゲーム内でも姐御の力が、2人と機体を救った。

天音の魔導甲冑を動かす能力は、かなり低い。

なので、バディとして姐御が付き添いで乗っている。


ゲーム内でも序盤は姐御無双だったしな。

キャラとしては、魔導甲冑試作型のパイロットだ。

現場で学び生き抜いた、若いけど老練な人物。

引退しようとしてた所を、天音の我侭でバディにさせられた。

そんな理由のため、天音との仲は別によくない。

初期値は普通以下だったような気がするな。



顔をあげると、みんなの驚いた顔。


(…あ、天音のキャラじゃなかったか)

 

コイツが素直に、しかも相手を立てる謝罪なんてありえないか。

と、考えたときは既に遅し。


「いかんな加藤君、やはり脳に異常が…!」

「蓮集院さん大丈夫!?痛いところは無い!?」

「…気持ち悪くて鳥肌立っちまったよ」

「…同じく」


ちょっとムッとするほど驚かれて、心配された。

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