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ステイホーム  作者: till*
2/2

第2話:アリス

「ありすちゃん!」


小さな女の子は僕に向かってそう言った。


「確か……不思議の国のアリスっていう童話があるのよね?新しい場所に来て戸惑っている様子のあなたにとっても似合っているわ。何よりとっても可愛いもの!」


母親も僕をアリスと呼ぶ気満々のようだ。


「僕のような日本人に似合う名前だとは思えないけど……」

「ねぇアリスちゃん、不思議の国のアリスっていうお話は知っているのかしら?」


不思議の国のアリスっていったら……うさぎを追いかけたアリスが変な世界に迷い込んで大きくなったり小さくなったりするあれだよね。


「大体は知ってるけど……」

「アリスちゃんはとっても賢いのね。」

「かしこーい!すごーい!」


僕にはうさぎを追いかけるような好奇心は無いし似合う気は全くしないんだけど……

こうもおだてられると悪い気もしないな。


「そういえばあなた達の名前は……?」

「あっ、そうね、名乗っていなかったわね。私はドミナ・アムール。でも、お母さんって呼んでちょうだい。この子はシオンよ。」

「しおんだよー!」



かくして、僕はアリスとしてアムール家で暮らすこととなった。どうして僕はここに居るのかとか、どうしてここで一緒に暮らすこととなっているのかとかは、聞いても全部はぐらかされた。


だけど、もはやそんなことはどうでもよかった。そんな事より……


「おはよう、アリスちゃん。今日も可愛いわね。」

「ありすちゃーん!よしよし〜」


めちゃくちゃ可愛がられる!可愛い獣人に可愛がられるとか天国でなければ何なのだろうか。



「それじゃあ今日はお散歩に行きましょうか。シオン、アリスちゃん、用意はいいかしら?」

「いーよー!ありすちゃんもおててつないで行こーねー!」


僕は一人で外に出てはいけないようで、今日初めて外に出る。シオンちゃんの手も離しちゃいけないらしい。まあ、こんな可愛い手を離す理由もないけど。


外に出て真っ先に見えたのは大量のブロッコリーだった。


「なんでこんなにブロッコリーが……」

「私ブロッコリーが大好きで……家庭菜園のつもりが思ったより広がってしまって、だから毎日沢山食べないと無くならないのよ。」


お母さんは笑いながらそう言った。

やけにご飯がブロッコリーまみれなのはそういうことか……


町並みはどちらかと言うと村といった感じで、木造の家と花壇や家庭菜園などでいっぱいだった。

ただそんなことより気になるのは……


「僕以外にも人間って結構いるんだね……?皆手を繋いで歩いてるし。」


皆穏やかな表情をしているように見えるが、なんだか少しだけ変な感じがした。


「ふふ、人間って可愛いもの。手を繋いであげないと心配だし。」


幼いシオンちゃんの手を繋いであげないといけないのかと思っていたが、心配されているのは僕の方らしい。


「別に手を繋がなくたって大丈夫なのに。」

「こんな所でもし迷子になってしまったらと思うととっても心配よ。ちゃんと手を離さないでいてちょうだいね。」


本気で心配そうな顔で言うものだからそれ以上は何も言えなかった。それに僕、方向音痴だから本気で迷子になりそうだし。


「ねぇみて!おはなばたけだよー!」


シオンちゃんが指さす先には部屋に飾ってあった花が沢山咲いていた。色合いは一つ一つ違くてとても綺麗だ。そして何よりとても落ち着く香りがする。


「ねぇ、この花なんて言う花なの?」

「この花は、ファリオネっていうのよ。とってもいい香りがして穏やかな気持ちになれるでしょう?」


この香りを嗅いでいると幸福感に包まれる。最初はお菓子みたいな甘ったるさを感じたけれど、慣れてくると焼きたてのパンみたいなやわらかい香りに感じる。


「それじゃあおうちに帰りましょうか。」


来た時と同じ道を戻る。やっぱり人間を連れている獣人が結構いるようだ。皆幸せそうで、僕も幸せだ。


この世界にはやるべき事は何もないし、やらなきゃいけない事なんかない。僕はただ家族として暮らせばいい。こんなに快適な世界があるなら、もっと早く来れればよかったのにな。


シオンちゃんの小さな手を握りながら、僕はブロッコリーでいっぱいの家まで無事に帰ってきた。

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