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ステイホーム  作者: till*
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第1話:僕の名前は―

いつも通り、見飽きた家路を辿る

いつも通り、今日も1人で

いつも通り、車がうるさい



流石にそろそろ何かあってもいいんじゃないだろうか。こうもずっと同じ毎日だといくら何でも気が滅入る。


あまりにも退屈なものだから、最近はよく空想にふけるようになった。


僕がもし天才だったら……最強だったら、近所に悪の組織がいたら、異世界転生したらついでに超絶美少女だったら……!


なんて。……いくら何でも考えることが子供っぽすぎるか?


そんな事はともかく、何でもいいから何か起こってくれないものかなぁ……最悪なにかヤバい事件に巻き込まれるとかそんなんでもいいから!


……それは流石に嫌だな。


「朝起きたら、何か面白いことが起こってますように。」


なんとなくそう呟いて眠りについた。今日は布団を被ると少し暑くて、足を布団から放り出した。明日は暑い日になるんだろうか、そう考えると少し憂鬱になった。




いつも通り、目を覚ま……したと思った。全然いつも通りじゃない、起きたそばから知らない天井と目が合った。


僕は普通に家で寝たはず……ここはどこだ……?誘拐?にしては窓もついてる綺麗な部屋だし、病院って感じでもない。


もしかして夢!?……いや、その発想が出る時点で違うな。とりあえず拘束されている訳でもないんだし、部屋を物色してみましょうかね。


木造の温かみのある部屋で、全体的にとても綺麗に掃除されている印象だ。内装は僕の寝ていたベッドとクローゼット、机と椅子、それと見たことのない花が飾られた花瓶が置いてあった。


花と言うよりお菓子のような甘い香りのする、赤と黄色と紫の3色グラデーションの花弁の不思議な花だ。


扉も施錠されていないようで普通に開いた。ちらっと見えた廊下には子供が描いたっぽい絵がいくつか貼られていたし、普通の幸せな家庭の一軒家にしか見えない。


こんな家の子に産まれたら幸せなんだろうな。さっきから耳に入る子供の声もやかましいくらいに幸せそうだし。



これからどうしようか考えあぐねていたらガチャリとドアが開いた。


「あら、目が覚めたのね。」


部屋に入ってきたのは20代後半くらいの女性だった。優しそうでいかにも母親って感じだ。


だけどそんな事よりも……


「ケモ耳!しっぽ!生えてる!?」


「あら、驚かせてしまったかしら?ここに来たばかりだもの、無理もないわよね。この耳としっぽは本物よ、獣人だもの。」


確かにどう見ても生えているし動いている。でもこの世界に獣人なんて居るはずがない。


「ということは異世界転生!?」


「異世界転生……はよく分からないけど、お腹は空いてないかしら?今すぐにでも用意するわよ。」


なんかやけに食事を勧めてくるなぁとは思いつつ、お腹は空いているので一旦お言葉に甘えることにする。


「人間の食べ物ってこれでいいのよね?」


湯気の立つ温かいご飯が運ばれてきた。

理想的な一汁三菜……に見えるけど、なんかブロッコリーが多い。


「何かおかしなところがあったかしら?ごめんなさいね、人間のご飯を作るのは初めてで。」

「いや、なんかブロッコリー多いな?とは思ったけど美味しいですよ。」


「そうなのね……じゃあ好きな食べ物は?」

「ピザ……とか?」

「ピザ……?」


どうやらピザが何なのか分からないようで困った顔をしている。というか凄く整った顔をしていて可愛い。


「ふふ、もぐもぐしてて可愛い。」


「へっ!?」


可愛い人に突然そんなことを言われるから食べ物を吹き出しそうになった。


「黒い髪に黒い目……とっても可愛いわ。」


「いや別に日本人みんなそうだけど……」


獣人の感覚なんだろうか……よくわからない。


「声も可愛いし、仕草も全部とっても可愛いわ。お迎えしたのがあなたでよかった。」


「あなたでって……そもそも僕は何でここに……?」


「あら、可愛い女の子なのに一人称は僕なのね、それもそれで可愛いわね。」


なんかもう可愛いしか言ってくれなくなった……

まあ別に悪い気はしないけど!



「おかあさーん!」


そう言って走って部屋に入ってきたのは小さな女の子だった。勿論この子も母親と同じケモ耳としっぽが生えていて、めちゃくちゃ可愛い


「あっ!にんげんさん!おはよ!」

「おはよう!」


人懐っこく飛びかかってきたので頭を撫でる。髪も目も母親と同じ色でとても綺麗。絶対美人さんになるね!


「おかーさん!この子のおなまえは?」

「そうね、まだお名前を決めていなかったわね。」


名前を……決める?


「いや……僕はか―」


「いいのよ、新しい名前をつけましょうね。今日からうちの子なんだから。」

「どんなおなまえがいいかなー!」


「え……いや……あの……僕の名前は―」


「心配しなくても大丈夫よ、今までの名前はここでは使いにくいわ。それに、これから一緒に暮らすのに今までの名前のままだと……ちゃんと家族になれてないみたいでちょっと寂しいわ。」


そのまま押し切られて、断ることもできず、目の前の2人は楽しそうに僕の名前を考え始めた。


ただ不思議と……これでいい、と思った。

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