[閑話休題]安全講習
〜補足説明〜
○軍の階級
軍は王立陸軍と王立海軍からなり、どちらも、基本的には貴族が就く将官(元帥→大将→中将→少将→准将)→騎士が就く士官(大佐→中佐→少佐→大尉→中尉→少尉)→騎士や平民が就く兵卒(最上級兵曹長→上級兵曹長→兵曹長→兵曹→一般兵)の順に階級が下がる。
○サロス
王立陸軍大佐。
普通の騎士家に生まれ、兵曹から実力で大佐までのし上がった。
そのため、まだ言葉遣いがあまり身についておらず、熱が入ると汚い言葉使いになるという欠点がある。
また、実力でのし上がったという点や積極的に色々な活動を行う点が大きな騎士家から嫌われる要因となっている。
○キャザイン
弱小の男爵家に生まれた3男。
とても気弱で温和かつ知的。
いじめを止めたいが、それによって自分に矛先が向けられるのを恐れてなかなか実行に移せない。
○マリーディアーン
公爵家の長女。
もともと100年に一人の才女と呼ばれていたが、ジェイウェルの3人の子供にその称号を取られた。
そのため、ジェイウェル准男爵家をとてもライバル視している。
だが、決して家格で勝ったり、圧力をかけて勝ちたいのではなく、あくまで実力で勝ちたいと思っているため、本人に危害を加えることはない。
○ハルバート
カクゼンの幼馴染であり親友。
彼自身もとても賢く、同じく賢いカクゼンと近い価値観を有しているため、出会ってすぐに仲良くなった。
ただ、最近のカクゼンの価値観の変化についていけず、疎遠になりつつある。
「お前らはそこらへんの奴らよりは強いが、基本的には襲ってくるやつより弱い。」
特別講師として学園に来た王立陸軍大佐のサロスが最初に言い放った言葉だった。
私は最初、なぜこのようなうつけを講師として呼んだのか不思議でならなかった。
ただ、この発言は学園の教師たちの想定外だったそうで、あたふたしたり、サロスを講堂の教壇から下ろそうとしたりしているのを見て、内心もっとやれとも思った。
少なくとも、実力も無いのに上から目線のゴミどもをここまで焦らせる彼に、尊敬に近い感情を抱いたことは確かだろう。
だからだろうか、彼の言った言葉はすっと入ってきたのだ。
今思うとこれは学校に対する反骨心だったのは疑いようのない事実だが、当時の私は彼の言葉に惹かれていると感じてしまったのだ。
ゴミどもからの注意を受けたあと、あからさまに不貞腐れてこう言った。
「まぁ、一部のやつは違うかもしれねぇがな。」
良くも悪くも彼はそこまで頭が良くなかった。
だから彼が言わされているのか言いたいことを言っているのかはひと目でわかった。
彼が言いたいことを言う時は目を子供のように輝かせ、身振り手振りを大きく使い、顔が真っ赤になるまで続けた。
だが、言わされたことを言うときは酷かった。
彼の目には生気が宿っておらず、ボソボソとやさぐれたように言い、すぐ次の話題に行こうとした。
他のクラスメートは「貴族をコケにしている!」と憤慨していたが、私にしてみれば圧倒的な権力にも屈しない正義の味方であるかのように感じたのだ。
また、説得力はとてもあったのだが、とにかく内容が薄かったのも記憶に残っている。
彼は恐らく何を話すのか決めてから学園に来たのではなく、あくまで自分がその時話したいことを話すというスタンスだった。
だからだろうか、同じ内容の話を何度も繰り返し、ゴミどもの怒りを無駄に買っていた。
彼が主張していたのは唯一つ、『知らない場所、人からは逃げろ』だ。
そもそも彼の話をよく聞いていればわかるのだが、彼の言っていることは基本的に正しく、ちゃんと理論に基づいているのだ。
例えば、彼は知らない場所から逃げる理由として、『自分の知らない敵や罠が出てくる場合があるから』としていた。
これは至極最もで、誰もが理解していそうなものであるが、毎年馬鹿な貴族の子女が数人貧民街などに世直しを掲げて行き、殺されたり誘拐されているのもまた事実なのだ。
この講義が終わったとき、拍手したのは私と私をいじめない唯一のクラスメートであるキャザインと、私のライバルのマリーディアーン、領地が近いため子供の頃からの交流があった幼馴染のハルバートの4人のみだった。
その一方で、残りの生徒や教師は拍手をするどころか「学院を汚した。」「所詮は騎士だな。」とサロスを口々に罵っていた。
だが、私は彼を尊敬する。
きっと、彼の言葉を忘れることはないだろう。
そして、彼の言葉が役に立つ日が来たら、しっかりと活躍しよう。
そう私は誓ったのだった。
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