大脱走
〜補足説明
○平民の暮らし
貴族は勘違いをしていることが多いが、基本的に貴族の見ている町は一部の金持ちが住んでいる特別な場所であり、多くの平民はユーレンが言っていたように、明日を生きるのに精一杯であることが多い。
そのため、ボロボロの建物の中で1日中仕事をしているなんて言うのもザラである。
また、基本的に外出する余裕なんてないため、人通りが少なく、人がいたとしても、それはオシャレな服に身を包んだ商人かボロボロの服を着た平民である。
さらに、お金がない為1日1食しか取れず、身体を濡れたタオルで吹くのも1月に1回しかやらない。
つまり、平民の殆どは小汚く、痩せこけていて、ボロボロの服を着ている。
○クーニッツ学園
ジェイウェル准男爵領にある、貴族が通う学園。
これの他には王都にあるライトシェア王立学園しか貴族が通える学園がないため、かなり通う人が多い。
ただ、その分いじめも多く、位の低い準男爵や男爵の子息はよくいじめられている。
○犯罪
基本的に罪をさばくのは領主が行う。
そのため、領主に近しい人ほど罪が軽く、危害を加えた人に対する罪が重くなっていく。
昨日姉に言われた『位の差』が無ければどれだけいいことか。
今通り過ぎたいい匂いがするパン屋も、オシャレな服から平民用の服まで何でも揃ってそうな服屋も、いろんな面白そうなゲーム機があるオモチャ屋も、全部貴族でさえなければいけるのに…。
あの日からいつも考える。
平民だったら小さい頃から同い年の子が何人も周りにいて、学園が終わったら街とか山とか海とかを探索して、夜になったら家族全員で寝るのかな。と。
学園の授業はいつも退屈だ。
私が7歳の頃に理解した内容を自慢気に話す教師、間違ってる理論、単純な内容ですら理解できないクラスメート………
もううんざりだ!
なぜこんな馬鹿ばかりなのだろう。
なぜこんな頭が良いのだろう。
なぜこんな位だけは高い人ばかりなのだろう。
なぜこんな位が中途半端に高いのだろう。
もっと頭が良いクラスメートが多かったらいいのに。それなら私が学園で孤立することもなく、あの馬車から見る景色のような日常があったのに。
もっと馬鹿だったらいいのに。それなら私はこの世界の不条理に気づくこともなく、あの馬鹿たちとバカなことして仲良くなれたかもしれないのに。
もっと位が低いクラスメートが多かったらいいのに。それなら位が低いからっていじめをすることもなくなるし、教師も親も見てみぬふりなんかしないのに。
もっと位が高ければいいのに。それなら彼奴等に復讐できるのに。
もっと位が低ければいいのに。それなら平民同士で仲良くなれたのに。
何で私だけこんな酷い目に合わなければならないんだ!
気づいたら私は学園を飛び出していた。
気づいたら私は知らない道を走っていた。
どのくらい走っただろうか。
走っているうちにいつしか周りの建物がボロボロになり、歩いている人が減り、その歩いている人の身なりもだいぶ悪くなっていた。
一度立ち止まってみると、人間というものは意外と冷静になれるものだ。
途端にこの知らない町並みや道、人が怖くなってきた。
途端に嫌いだった親や教師、クラスメートの顔が目に浮かんできた。
途端に温かいスープが飲みたくなってきた。
おうちにかえりたいよぉ……
「おい、大丈夫か!」
「だめだ聞いてない。」
「ん?こいつ結構いい服着てるな。」
「てことは、こいつ貴族か。」
「おいおい、まずいんじゃねーのか。俺たちがさらったってことになったら処刑だぞ。」
「やべーな!逃げるぞ!」
「あぁ!」
一旦冷静になろう。
私は貴族だ。気品ある振る舞いをしなくてはならない。足が震えているが、それよりも平民の前で泣いている姿など見せられない。
落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け………
少し落ち着いてきた。
まだ心臓はドクドクいっているし、足は震えている。きっと涙の跡も隠せていないだろう。だが、動かなくてはならない。
意味は無いが目のあたりを二の腕で拭ってから、ずっと無駄だと思ってきた安全講習の内容を思い出した。
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