↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法は嘘をつく ―賢者が残した遺産―  作者: 虚空小白
終章:少年は英雄となる
79/79

第75話 英雄になった日

 地下室には、カビ臭さが漂っていた。


 静寂の中、小さな檻に閉じ込められた骸が顔を上げた。

 それは、鼠の骸だった。


 骸は、地の底から響くような声を発した。


「ネクロヴァルよ、我を殺す手段は見つかったか」


「左様。聖女が不死——貴様を浄化する」


 不死がクリスの方へ顔を向けた。


「小娘、我を殺してみせよ」


 クリスは手を組み、祈りを捧げた。


「女神ルミナ様、ワタクシに力をお貸しください」


 クリスの全身が光に包まれる。

 その光が、不死へと降り注いだ。


 しかし——霧散した。


 クリスは目を見開き、半歩後ろへ下がった。


「浄化の力が、効きません……!」


 不死は、笑い声を上げた。


「なるほど。小娘、貴様が死ぬ気になれば、我の願いは叶うかもしれぬな」


 次の瞬間、カイレン、カルロス、クリスが胸を抑えて苦しみ始めた。


 ネクロヴァルが一歩前に出た。


「不死、何をした!」


「我からの贈り物だ。半刻もしない内に死ぬ呪いだがな」


「何じゃと!?」


「小娘、死ぬ気で、我を殺してみせよ」


 地下室に、不死の笑い声が響いた。


 ロゼンは、苦しむ三人を一瞥した。


 拳を握り締め、不死に問いを投げかけた。


「不死、なぜ俺とネクロヴァルに呪いをかけなかった?」


 不死は、笑うのをやめた。


「あんたは、俺とネクロヴァルを殺せないことを理解しているんじゃないのか」


「……」


「自分でできないことを、他人に委ねて笑ってんじゃねえよ!」


「黙れ」


 ロゼンは一歩前に出た。


「不死、俺を殺してみろ」


「黙れ黙れ黙れ、黙れ!」


「どうした。できないのか?」


 ロゼンは、不死の声を無視して続けた。


「死を望んでいる? それなら自分自身にも呪いをかけてみろよ」


 不死は檻の隅に走り、体を丸めた。

 その小さな体は、震えていた。


「いやだ……いやだいやだいやだ……死にたくない……誰か……誰か助けて……」


「クリス、不死を楽にしてやってくれ」


 クリスは、再び祈りを捧げた。


 光が不死の体を包み込み、骸が霧散していく。

 それに合わせ、城内の悪魔もまた、静かに消えていった。


「終わりました。胸の痛みもありませんので、呪いも浄化したかと思います」


 ロゼンは首を縦に振った。


「悪魔が消えたか確認しよう」


 五人は地下室を出た。


 研究室を出て、通路に悪魔がいないことを確かめ、不死の消滅を確認した。


「終わったな」


 ネクロヴァルが、首を横に振った。


「まだじゃ」


 一拍置いて続けた。


「ロゼン、わしらは不老不死じゃ。本当に死ぬのか、確認する必要がある」


 地に伏し、頭を垂れた。


「ロゼン、わしの首をもらってくれぬか」


「何言ってんだよ」


「聖女誘拐は極刑じゃ。魔王ネクロヴァルを討った英雄であれば、罪を咎められることもなかろう」


 ネクロヴァルは、淡々とした口調で続けた。


「それに、わしは長く生き過ぎた。生きるのに疲れたのじゃ」


 ロゼンは、息を吐いた。


「依頼料として、あの研究室をもらってもいいか?」


「ああ」


 ロゼンは剣を抜いた。


「大賢者オルディアス——あんたの罪は、俺が背負う!」


 剣を、振り下ろした。


 ネクロヴァルの首が、床に転がった。


 その顔は、どこか安堵しているように見えた。


「安らかに眠ってくれ」


 ロゼンは剣を鞘に収めた。


 英雄と呼ばれる日が来るのだろう。

 だが、俺の中で込み上げてくるのは、誇らしさよりも——安堵だった。


 あいつの仮説は、間違っていなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


実はこの物語、当初はRPGツクールMZでのゲーム制作を想定して構想していました。ロゼン(ソル)たちが世界を旅し、戦い、成長していく様を、プレイヤー自身の手で体験してもらえたら——そんな思いから企画を練っていたのですが、いざ作業を進めてみると、マップ制作やイベント構築、戦闘バランスの調整など、想像以上に工程が多く、当初思い描いていたペースでは完成が見えない状況になってしまいました。


それでも、この物語自体は形にしたい。そう思い直し、小説という媒体に切り替えることにしました。結果として、ゲームでは表現しきれなかったであろう、登場人物たちの細やかな心情や、会話の間、そして地の文でしか描けない緊張感を、より深く描けたのではないかと思っています。


拙い点も多々あったかと思いますが、もしお気づきの点や感想がありましたら、お聞かせいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。