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64話 ナナダンロソウは8回焼くべからず

「度胸試しって何なのよこれ」

「大事なのはそこじゃないですよ。火魔法を使えて、怪我してもいい人って所ですよ」


 いつもの掲示板前で依頼書を読んでいたら、またも変な依頼を発見した。

 火魔法が扱えて、怪我をしてもいい人募集なんて危険な依頼、誰が受けるのだろうか。


 私だ。


 私達ではないのは、マリンは水魔法しか使えないからだ。それでも爆発時の防御要員として一緒に依頼を受けるのだが、命知らずな挑戦者は私ということになっている。


「こんにちはー。依頼を受けた冒険者です!度胸試しに来ましたー!」


 大量の赤黒い薬草か何かがうず高く積まれて山となっている。その横には何やら燃え続けている炉が備わっている。一体ここでは何をしているのだろうか?


「ん?冒険者さんじゃないか!ちょっと待ってね…って、ぎゃああああ」


 ちゅどーんという爆発音が依頼人を襲い、彼の体が黒い煙と共に宙に吹き飛ばされた。そしてそのまま薬草の山に突き刺さる様に落ちた。

 …落ちた、ではない。あんな爆発を諸に食らって大丈夫だろうか。私とマリンは依頼人が落ちた山の手前まで走る。


「だ、大丈夫ですかー?」


 手と足をバサバサと動かす音が聞こえ、山の天辺から依頼人の顔が飛び出てくる。そしてそこから声が聞こえる。まるで山自体がしゃべっているようだ。


「いやあ、ごめんごめん。気を抜くといつもこうなるんだ。今から降りるからちょっと待っててね」


 彼は体中から薬草をまき散らしながら山から下りてくる。さながら山で遭難してボロボロになった人のようだ。


「これは、何の薬草なんですか?こんなに赤黒いのは見たことがないです」

「これはナナダンロソウだよ。この葉を一枚、暖炉に入れるだけで火の勢いが段違いに強くなるんだ。だた、一つだけ問題があってね。名前の通り七回しか使えないんだ。火をつけるのが八回目だと、さっき見たように物凄い爆発を起こして暖炉が吹き飛ぶことがあるんだ」

「つまり、今回はそれの危険なものに火を付けていくのが依頼ってことですか?」

「そう、八回目の物は爆発してなくなるし、七回目以下の物は火を付け続けて熱源として使い続けるんだ」

「それにしても、使う人達は何回焼いたか数えないの?それにこんな量誰が使ったのよ」


 それは私も気になる疑問だ。こんなに危険な薬草を扱うのに、火をつけた数を数えない人なんているのだろうか。


「ああ、この山ね…いつもは無いんだけど倉庫で火事があってね。その時に繰り返し火が付いたりした物があるってことで、今検査しているんだ。まあともかく、早速作業に取り掛かろうじゃないか」


 依頼人に連れられて作業台の前にやって来た。作業台と言っても、小さい火と申し訳程度の盾のようなものが備わっているだけである。これじゃあいつか死人が出てもおかしくない。


「マリンさん。私のこと水で包んでくれますか」

「あなただけじゃなくて、私も一緒に包まれるわよ。あんな爆発食らったらひとたまりもないわ」


 作業としては単純だ。そこの薬草の山から葉を一枚ずつ取ってきて火を付ける。爆発したらそれでお終い、しなかったら炉に入れるだけだ。

 しかもこの爆発は魔法で防げるはずなので、マリンの水魔法で作られた安心安全の空間で作業ができるのだ。


風よ(ウィンド)浮かせ(フロート)!」

火の玉よ(ファイヤー)出現せよ(ボール)!」


 風に葉を一枚ずつ乗せて運び、次々に火をつけていく。どうやら八回目のナナダンロソウは少ないらしく、これならすぐに終わりそうだ。


 ドゴーーーン


 身体の全面に爆発で起きた振動が伝わってくる。水魔法で守られているからいいものの、無かったら全身バラバラになってしまうんじゃないかってぐらいの威力である。逆に考えるとこれは素晴らしい武器になるのではないか?もちろん爆発に巻き込まれないようにしないといけないが、威力に関しては申し分ない。


◇◇◇


 そんなことを考えながら作業をしていたら周りにあった山が無くなっていた。かなりの数の爆発が起きたがマリンの水魔法のお陰で無傷である。水魔法が解除されたので伸びをする。


「案外早かったわね。あの振動も案外心地よかったわ」

「あー。でも、ずっと集中していたから疲れましたね。後でおいしいものでも食べに行きましょうか」


 爽やかな風が辺りを吹き抜ける。そんな気持ちのいい風を感じて気を抜いていたのだろう、ひらひらと飛んできたナナダンロソウがまだ解除していなかった火魔法に軽く触れた。



 轟音と共に世界がかき回されていく。もうよくわからないので目を閉じて体を丸めて衝撃に備える。で、暗い世界に私は誘われてしまった。

 慢心はしてはいけない。特に仕事の終わり際には…


 そして気絶した二人の女の子が男の人の手によって、医者のもとへ運び込まれたそうだ。

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