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20話 模擬試合

ギルドでの対人戦闘回。

「4対1の試合とかやる意味あるのか?しかもあいつはEランクだぜ」

「俺はあの四人組に銀貨50枚賭けるぜ。確実にこの賭けは勝てるぜ」


 なんだかんだあって冒険者ギルド横にある大きめの広場に来ている。通常は冒険者の訓練場として使われるが、今日は模擬試合が行われるということでちょっとした見物台まで出されている。

 私といえば四人相手に戦って勝てるのかと悩みながら仮設の椅子に座っている。もちろん真剣を使うわけではないので死ぬことはないのだが、本気の対人戦なんてしたことがないので緊張しているのだ。


「おい、お嬢ちゃん。Eランクなんだってな」


 顔を上げると、3人の男の人に囲まれていた。


「怖がらしてしまったならすまない。俺たちはCランク冒険者だよ。こういう賭け事の時は参加者に直接話を聞いてから賭けることにしているんだ」

「それで、どうなんだ。勝てそうなのか?」


「わかりません。これが初めてなので」


 そう答えると二人は顎に手を当てて考え込む。もう一人は私のことをじっと見てきている。よく観察すると目の所でなにか魔法を発動させているようで、ぐるぐると魔法陣が回っている。


「おい、お前はどうなんだ。負けなしの勝負師さんよ」

「この子に金貨2枚だ」

「はぁ!?まじかよ。さすがの俺でもそこまで賭けないぞ」

「俺の勝手だろ」


 何か私の身体の隅から隅まで覗かれたような気がしたが、気のせいであろう。


 相手の準備ができたようなので私は広場の中央に歩いていく。相手は中央に剣士のリーダー、その後ろに魔法使いの女の子。右側に弓を持った男の子、左側に身軽な女の子が立ち、確かにパーティー名の通り大きな鳥のような陣形を取っている。


「それでは、ギルドの規則に従って模擬試合を行います。両者、戦闘不能もしくは降伏をした時点で試合は終了とします」

「おう、模擬試合じゃなくて決闘だけどな」

「それでは、始め!」


 さて、どうしたものか。あのリーダーである剣士に近づかれては困るが、魔法使いが何の魔法を放つのかも気になるところ。それに横にいる弓使いはすでに矢を手に取って準備をしている。

 こちらが相手を観察していたら向こうから仕掛けてきた。

 まずは矢が一発、足を目掛けて、そして剣士と魔法使いが同時に攻撃してきたのだ。


「先手必勝!どりゃああ!」

「水よ。玉になりて渦を巻き、相手に当たれ!」


 遅い。剣の振りもだが詠唱もだ。

 さっと両方の攻撃を避けて土魔法をかける。


土よ。盛り上がれ(ダートウォール)


 これで弓使いからの攻撃が一時的に防げる。横からは空振りした剣がまた私を斬ろうと勢いよく振られる。


「くそっ!ちょこまかと避けやがって!」

風よ。貫け(ウィンドアロー)

「あああ!ぎゃああああ!」


 大ぶりな剣の振りでできる隙に対して風の矢を腹に叩き込む。模擬試合用の服を着ているので体に傷がつくことはないが、痛みはそのまま伝わっているはずだ。


「水よ。小さな玉になりて渦を巻き、相手を撃ち抜け!」


 剣士を相手していたら矢と水の弾がまた飛んできた。

 こんなのに当たる私では…


「その首もらった!」


 後ろから突然殺気が迫って来たので、振り返りながら横に飛びのく。短剣の先が首のすれすれを通り過ぎていく。

 そして背中に鋭い痛みが走る。


「くっ!痛ぁ」


 背中に矢が刺さったようである。実際には当たっただけだが、まるで刺さっているような感覚が背中に広がる。


「私のことを忘れてたんでしょう?」


 そういいながら身軽な動きをしながら短剣で私のことを切り刻もうと間合いを詰めてくる。後ろからは次の矢の準備が、横からは水魔法が。


 これはやばい。


 かなりの賭けになるが、今思いついた案に頼るしかないしかない。


「はっ!」


 私は短剣を躱しながら弓使いが矢を放とうとした瞬間に地面に伏せる。


 パシューーー


「うわっ!ちょっと!急に何!? っきゃあああああ」


 後ろから追撃を仕掛けてきていた短剣持ちの女の子が悲鳴をあげる。

 どうやら上手くいったようだ。真っすぐ飛んできた矢が私の背中を通り過ぎ彼女に当たったのだ。相当痛いに違いない。


風よ!私を浮かせ(ウィンドフロート)! 土よ!壁を作れ(ダートウォール)!」


 風魔法の助けを借りてすぐに立ち上がり、魔法使いと弓使いの前に土の壁を出現させる。

 足元を見ると短剣使いが胸を押さえながら苦しそうにしている。多分矢が首にでもあたったのだろう。


「降伏しますか。するなら攻撃しませんよ」

「こ… 降伏… するわけな…!」

風よ。切り裂け(ウィンドカッター)!」


 もう動けない状態になっても反撃をしてきたので、両足を切り裂いた。少々悪い気がするが、これは戦いということで心を鬼にする。

 客席からは歓声の声が上がっている。中には怒っている人もいるが、私ではない方に賭けているのだろう。


「タッカー!くそっ!お前だけは倒してやる!」


 地面でうずくまっていたリーダーがよろよろと立ち上がり、叫んでいる。私は白目をむいて倒れている彼女から離れ、弓使いの方へ走る。

 剣士よりもあの弓使いの方が私にとっては脅威だと判断したからだが、どうやら魔法使いと合流して何かをしようとしているらしい。


「水の壁よ!激流となり出現せよ!」


 私と二人を阻むように水の壁が出現する。そして壁の奥から矢が連続で飛んでくる。

 この水の壁はウィンドアロー程度では貫けそうにないと判断する。

 横に避けながら魔法を詠唱し始める。かなり大きめの魔法を想像する必要があり、少し時間がかかりそうだ。


「風よ。塊になり、あの水の壁もろとも吹き飛ばせ!」


 風の塊が勢いよく水の壁に向かっていく。水の壁に当たったかと思うとそのまま水を引き込みながら二人に向かっていく。


 バァーーーン


 大量の水飛沫が辺りに舞い散る。

 水の壁が無くなったかと思うと、二人が仰向けになって倒れているのが見えた。

 なんともあっけない倒され方である。


「ミリー!エイロー!…くそぉぉぉぉぉぉ!」


 悲痛な叫び声が広場に響く。彼にはもう勝ち目はない。

 ここは降伏を促してあげようか。


「終わりよ。降伏しなさい。」

「誰がするかぁああああ!」


 私はさっと木剣を空間から取り出し構える。

 それを見て驚いたのかなんなのか、相手の剣は私の目の前の空を斬る。

 私はそのまま木剣を相手の首あたりに振りかざす。


 ドスッ


「勝者はEランク冒険者、アリス!」


 なんとも後味の悪い勝利の仕方だが、観客席からはうぉぉぉぉという男どもの歓声が響く。もっと勝利したことに喜ぶべきなのだろうか。


「はーい。掛け金の分配でーす。あ、アリスさんは金貨2枚分が取り分ですよー」


 なんと、掛け金のいくらかは私に入るみたいだ。


 笑顔で受付のお姉さんから報酬を受け取ったのだった。

四人に勝てるわけ…

王国騎士団の指南を受けた彼女は強いのだ。

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