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ニーナ、町を救う

予告なく修正することがあります。

Sep-20-2020、一部変更。

 さらに数日後、ニーナ達は町の仕事を手伝って過ごした。ニーナとロロに数人の弟子が出来ていた。

 ゼンが教えたレシピをトロンとヴァンゼルト子爵が、活気づく住人達を見ながら取引した。


「バターにチーズ、鰻料理が五種類。これで大銅貨七枚。」

「すべて、私が買い取る。いいな。」


 指を折り数えるトロンにヴァンゼルト子爵は買い取りを依頼した。


「勿論です。他には漏らしません。商人の鉄の掟ですわ。それに、ここはもっと増えるでしょう。」

「そうだな、少しでも子ども達の笑顔を守りたい。」


 昼過ぎにゼンはティアと一緒に狩りに出掛けた。

 ニーナ達は鰻を獲るのに夢中になっていた。

 ヴァンゼルト子爵は騎士達と、畑仕事を手伝っていた。

 誰もが夢中で仕事をしていた。そんな時間だった。町の外から彼等はやって来た。斥候が入り込み夢中で仕事を楽しむ住人達を、酷薄な笑みを浮かべて見ていた。指笛は鳥の鳴き声の様に聞こえた。

 木陰で本を読んでいたキキは、西門の方を見てティーカップを置いた。

 ニーナは持ち上げた籠をいつまでも受け取らないミリアンを見た。二人にギルスとエレンが気付き、二人の顔から笑顔が消えた。

 西門が大きな音を立てて吹き飛んだ。砂煙の中から十数騎の男達が入って来た。


「いつの間にこんな立派な町になった。貧乏貴族が立派になった。と言うことは、金があると言う事だ。金と女を貰って行こうか。大人しく差し出せば命だけは助けてやる。」

「それは命以外は獲ると言う事なのじゃ。」


 ニーナの言葉に不敵な笑みを浮かべて、ギルスとエレンが剣を抜き放った。ララとロロも剣を抜いて構えた。ヴァンゼルト子爵と騎士達も剣を抜いて男達と対峙した。


「威勢の良いのがいるな。九人で三十人を相手にするか。俺達も素人じゃない。」


 リーダーらしき男が言うと、男達が一斉に武器を抜いた。まったく怯まないニーナ達を見て、リーダーの男は嫌らしい笑みを浮かべて、野球ボール位の赤黒い玉を取り出した。


「相手になってもいいが俺達も暇じゃない。こいつは魔法の玉だ。俺のオドが登録されている。俺から離れたり、俺が死ぬと爆発する。この町を吹き飛ばす威力は無いが、その辺の子ども達を巻き込むぐらいはできるぞ。大人しく差し出せよ。」

「うにゅにゅにゅ。魔力回路が見えるのじゃ。あ奴、嘘は言っておらんのじゃ。」


 ヴァンゼルト子爵も歯を喰縛っていた。


「おっと、隠れている二人も出てこいよ。こっちにも魔法師がいるんだよ。」


 ティムとトロンが剣を鞘に納めながら、積み上げられた荷物の影から姿を現した。

 キキに気付いた男が下卑た笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいた。


「上玉がいるじゃねえか。それにこっちも上玉だ。高く売れそうだ。」

「ふふ、優位に立ったと思った?たった三十人ぐらいで何が出来ると言うの。貴方達は知らない。ここに狩人がいることを。彼は貴方達を狩る。密かに、速やかに、確実にね。」


 キキの言葉に男達は笑い声を上げた。同じようにキキも笑っていた。

 そして、ニーナ達は子ども達に目を閉じるように言った。

 ヴァンゼルト子爵とティム、トロンは眼を剥いたまま、身動ぎせず立っていた。

 野盗の後ろに静かに近づくゼンがいた。野盗の誰も気付く気配はなかった。真横を通っても誰も気付かなかった。まるで、見えないかの様に、透明人間になったかの様に。


「何故、気付かんのじゃ?」

「気付かないのよ。完全に気配を絶っているの。今のゼンは枯草の塊の様な認識しかされていない。危険度ゼロ。狩人は音も無く獲物に近づく。そして、速やかに仕留めるだけ。」

「俺も意識を外せば見失ってしまう。」


 ゼンはリーダーの横に立つと、手にしたナイフで玉を持つ手を切り落とした。そして、落ちる手ごと掴んで、キキに向かって放り投げた。

 ニヤリと笑ったキキが右手をかざすと、立体的な魔法陣が浮かび上がり黒い渦が現れた。


奈落(アビス)。」


 黒い渦が低い音と共に僅かな光を放った。玉が爆発したらしいが、その規模は小さな風船が割れたほども無かった。


「手がっ!手がっあああああ!」


 血が噴き出して初めて気付いたのか、手首を押さえて叫び声を上げた。すぐ後ろでガシャリと音がして、馬に乗っていた男が地面に落ちた。兜が転がり別の男の足に当たった。兜の中には表情が消えつつある首が入っていた。悲鳴を上げる寸前、派手な血飛沫が上がり男の身体が斜めにずれ落ちた。

 ギルスとエレンは駆け寄って、野盗達に斬りつけた。ニーナはレイピアを抜いて、切先に魔法陣を構築した。


「ファイアーボルト!」

「エアリアルスラッシュ!」


 ニーナとミリアンの魔法が炸裂して、数人を吹き飛ばした。襲い掛かって来た野盗の剣を躱して、ララは野盗の腕を斬り飛ばした。

 ロロの刀が一閃すると、野盗の一人が崩れ落ちた。

 野盗の後方で叫び声が上がった。其処にはモーニングスターで野盗を叩き潰すティアがいた。大きなカイトシールドで攻撃を受け止め、棘の付いた球状のメイスを叩き付けた。兜ごと頭を潰され、倒れる男を無表情に眺めながらゆっくりと歩き出した。

 十人以上が倒れてやっと、ヴァンゼルト子爵と騎士達が動き出した。野盗達は武器を捨てて降伏を選んだ。


「降伏だ。降伏する。」

「アジトは?」

「連れて行った方が身のためよ。殺されたくなければね。」


 短いゼンの問いにキキが続けた。野盗達は激しく頷いて、ゼンと一緒に門へと歩き出した。騎士の一人がキキに詰め寄った。


「捕えねばならん。」

「此処にはまだ、近衛騎士も居ないでしょ。彼に任せる方が色々と良いと思うけど。」

「あのう、キキさん。ティアも付いて行ったようですが。」

「あの子なら大丈夫でしょ。ゼンを見ても動揺はしても、壊れることは無いと思うから。」


 そんな会話をしている間に野盗とゼンはティアと共に町から出て行った。ヴァンゼルト子爵が確認すると、住人に被害は全くなかった。

 子ども達にアパートへ戻る様に指示して、ギルスの指示で騎士達は後処理を始めた。死体からギルスとロロが装備を剥して一か所に集めた。騎士達も装備を外しを手伝った。集まった死体をキキの魔法で焼き尽くした。


「灰も残らんとわな。ローラ、同じことが君に出来るか。」

「無理です。恐らく、数千度の炎。竜のブレスに匹敵します。」

「うにゅにゅにゅ。また、温度が上がったのじゃ。」

「ふふ、努力を怠らないでね。」

「うにゅにゅにゅ。」


 野盗の装備はキキがマジックバッグに入れ、子ども達も落ち着いた頃、ゼンが戻って来た。一緒に戻って来たティアにティムとトロンが駆け寄った。


「何をして来た?」

「悪夢。」

「ゼンさん、何をしてきたん?」

「収穫。」

「ん、再起不能。」

「終了だ。」

「ほんま、判らんがな。」


 ティアとゼンの言葉にトロンが天を見上げて言った。ティムは眉間を押さえて俯いていた。キキとニーナ達が近づき、ヴァンゼルト子爵達も疲れた表情で寄って来た。


「ところで、何をして来た?」

「収穫。」

「それでは判らんぞ。」

「野盗のアジトに行って、盗んだ物を根こそぎ持ち帰ったのよ。良い物はあった?」

「大した物はない。」


 ゼンはマジックバッグから戦利品を取り出した。高価な服や宝石、数枚のスクロールなどがあった。他には武器や鎧があり、平凡級と知るとニーナ達は宝石と服を物色し始めた。


「根こそぎ。そういう事か。野盗から盗って来たのか。鬼だな。」

「うむ、道中で野盗を見つけると、凄く悪い顔で笑うのじゃ。」

「ん、悪魔。」

「で、ティア。君の持っている袋は何かな。」

「収穫。」

「あんたもかい!」


 トロンが突っ込んで、ニーナ達もヴァンゼルト子爵達も疲れたように座り込んだ。

 ゼンが夕食の準備をして、ヴァンゼルト子爵達も一緒に席についた。ヴァンゼルト子爵はこれからの事を熱く語った。

 翌日、朝食を終えて町を回りながら、ヴァンゼルト子爵はトロンとレシピや作物の取り扱いについて打ち合わせていた。

 ミリアンが空を見上げ、ララが空の一点を見詰めた。すぐに鳥の様な影が見え、近づくにつれ影は正体を顕にした。


「グリフィンなのじゃ。」

「誰か乗っている。です。」

「王国の貴族だ。グリフィンは騎獣だよ。」


 中央の広場に降り立ったグリフィンから、白銀のフルプレートの騎士が降りて来た。騎士は兜を取って片手を挙げて挨拶をした。


「うにゅ、騎士団総団長なのじゃ。」


 驚くニーナと険しい顔になったヴァンゼルト子爵の元へ、ヴァルボルト侯爵が辺りを見渡しながら歩いて来た。


「いつの間に町が出来た。ヴァンゼルト卿。」

「エルノワールの偉業だ。彼等の助けを借りたのだ。彼等は子ども達と老人達に目的を与え、役割が生まれ仕事の成果に報われた。美味しい食事がやる気を呼んだのだ。兄上、私は王都には戻らんぞ。」


 ヴァルボルト侯爵は溜息を吐いて、ヴァンゼルト子爵を真っ直ぐ見詰めた。その目を見てニーナは笑顔を作った。 


「夢を追うお前を連れ帰る様に、父上に頼まれて説得に来た。俺も無理だと思ったよ。もう、挫折した頃だと思ってな。」


 喜ぶニーナを見て町の子ども達が集まって来た。老人達も心配そうな表情を浮かべて、ヴァンゼルト子爵を見た。


「まさか、ここまで成果が出ているとわな。これは王にも報告せねばなるまい。ヴァン、よくぞ遣り遂げた。そして、ニーナよ。ヴァンを助けてくれたこと感謝する。これは各地の孤児院でも出来るかも知れんな。アオイ殿が戻られたら相談しよう。」

「兄上。」 

「ヴァンゼルト卿、町の名は?」

「エルノヴァンだ。エルノワールに助けられた、私の町だ。」


 ヴァルボルト侯爵は満面の笑みを浮かべた。ヴァンゼルト子爵の言葉に子ども達は飛び上がり、老人達も笑顔になった。その様子を見てヴァルボルト侯爵は大きく頷いた。

 その後、子ども達が作った鰻重を全員で食べ、ヴァルボルト侯爵はよほど気に入ったのか五杯を平らげた。

 そして、苦しそうにグリフィンに乗って、王都へと戻って行った。


「うにゅにゅにゅ、五杯も食べて行ったのじゃ。妾は三杯だったのじゃ。負けたのじゃ。」

キ♀:サボったわね。

空♂:話が膨らんで間に合わなかった。

キ♀:サボったのね。

空♂:終わり方がちょっと、迷ってました。

キ♀:サボったんだ:

空♂:はい、ごめんなさい。間に合いませんでした。

キ♀:しばらく、改稿するのね。

空♂:連休は頑張ります。投稿と改稿、ちょっと忙しいかも。

キ♀:期待しているわ。

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