ニーナ、商売を見る
予告なく修正することがあります。
Sep-20-2020、一部変更。
夜明けとともにニーナ達は起き出して、日課である練習を始めた。型の練習が終わると木偶人形を出して、それぞれ強さを設定して模擬戦を始めた。
ギルスとエレンは騎士王に設定して、真剣を持って準備を始めた。
「妾もそろそろ、真剣にするのじゃ。」
「却下!」
一斉に却下されたニーナは蛸口になり、オーガに設定した人形を素手で殴り飛ばした。
模擬戦を終えたニーナ達は、ゼンの用意した朝食のサンドイッチを食べ始めた。
「ミリアンとロロもオーガを素手で圧倒していたな。しかも、お嬢までとは。」
「二人はゼンさんと一緒に狩りで鍛えられていたが、お嬢は二人の練習を見て覚えたのか。見て出来るだけの身体能力と才能、天才というのかも知れない。」
ギルスとエレンの会話を聞きながら、キキは微笑を浮かべてティーカップを持ちゼンを見た。
「知っていたのね。ロロの戦闘能力、ミリアンとのじゃ姫は戦闘と魔法、ララは魔法。年少組は多才ね。ギルスとエレンも殊、戦闘に関しては天才的ね。特にエレンの戦闘センスはギルスを上回っている。ギルスはセンスと高い身体能力で、エレンを超えているのね。」
「俺とは違う。」
ゼンの短い言葉にキキは肩を竦めて立ち上がった。朝食の後片付けを終えニーナ達は南門に向かった。
「わてもご一緒させてもらいます。」
ニーナ達が城塞都市を出ると、一人の男が馬に乗りニーナ達を待っていた。三十歳前後の男は濃紺のイスラムワッチの様な鉢金を被り、ダボッとした貫頭衣を着ているが聖職者ではあるまい。笑みを浮かべているが、糸のように細い目からは何の感情も読み取れなかった。
「何者じゃ。」
ニーナは鋭く誰何した。ティム達はニヤニヤと眺めていた。
「わてはトロンと言います。しがない行商人ですわ。商人いうても仕入れが専門ですがね。」
「ニーナさん、その方はちょっとした有名人で、見た目は怪しいですが良い方ですよ。」
ティムの言葉に少しは警戒を緩めたらしい、ニーナは少し考えるような仕草をした。
「自分の安全は自分で確保するのじゃ。それと、自分の食事は自分で狩るのじゃ。」
「そりゃもう、ティムさんらと同じように、暖かい料理が頂けるのでしたら。喜んで。」
感情の読めない糸目でニコニコと笑みを浮かべていた。
出発するとティガとティナが馬を走らせ見えなくなった。暫く道を進むと、遅れ気味のティムとティアも見えなくなった。
夕方、小さな漁村に到着し、ニーナ達は空き家を借りて一夜を過ごした。翌日、船着き場に行くと、小さな魚が一杯になった籠が水揚げされていた。
「私達がレシピを教えるのは問題ある?」
「こないだ商人ギルドに登録したレシピは、わてが代金を貰います。新しいものはわてから代金をお支払します。ひょっとして、煮干しでっか。」
「勉強家ね。」
「リストならみな覚えました。ほな、村長とこへ行ってきますわ。」
何かを思いついた様に、トロンは村長の家に向かった。暫くすると、村長を連れて戻って来た。
「この魚を有るだけ買うわ。」
「籠一つで銅貨五十枚だが、百はあるぞ。」
「問題ないわ。銀貨五枚ね。加工を手伝って欲しいの。錬成魔法を使える者はいるかしら。」
「三人いるが、呼んだ方がよいかの。」
キキが頷くと村長は近くにいた男に呼びに行かせた。その間、ゼンは村長に言って、村中の家から鍋を用意させた。村人が集まってくる間に、ゼンは村の広場に長い竈を錬成していった。村人が鍋と共に集まり、錬成術師も鍋を持って集まった。ゼンは鍋に海水を入れるように指示し、海水の入った鍋を竈に置かせた。
「海の水を沸騰させ、この小魚を入れて。」
キキの魔法で沸騰させた鍋に、村人達が小魚を入れていった。五分程で籠に取り出し、御座に重ならないように広げて行った。
「本来は太陽を避け、風通しの良いところで干すの。今は、錬成で乾かしましょう。」
キキがスマホの様な物を出して操作すると、御座に錬成陣が浮かび上がった。転写すると他の御座にも転写して回った。ゼンが魔力を注ぎ込み、すぐに乾燥が終わった。
「うにゅにゅにゅ、この規模の魔法陣を発動させるのは凄いのじゃ。」
「小さな錬成陣をスクロールにしておくわ。これで出来上がりね。」
「これは何ですかな。このまま、食べるのですか。」
「これで出汁を取るのよ。」
ゼンは真水の入った鍋に、乾燥した小魚を中に入れた。丁寧に灰汁を取り五分程で、ざるで小魚を鍋から出した。鍋から出した小魚を再度、乾燥の錬成陣に置いて魔力を流した。
「出汁を取ったものは水分を取って、油で揚げて塩を振れば美味しいわよ。」
ゼンは水に塩を入れたものと、出汁に塩を入れたものを用意した。村人達が飲み比べ、驚きの表情を作った。
トロンが村の基幹産業にしてはと村長に勧めた。
「聞けば、この村は一年中この魚が獲れるそうよ。私達はイワシと呼ぶけど、名前は無いようね。」
「このレシピは大銅貨一枚だ。商人ギルドが取り仕切るで。」
「村にはあまり金が無くてな。しかし、さっきの売り上げがあるでな。皆の衆、買うぞ。」
村人たちは全員が声を上げて賛成した。
数日後、次の漁村でかまぼこの製法を教え、別の漁村ではさつま揚げを教えた。
「村に基幹産業を作り、村の生活は豊かになりますな。しかし、ゼンさんにメリットが有りませんで。」
「ここに時間の経過が遅い、マジックバッグが十個ある。容量は倉庫一個程度。幾らで買う。」
「それは、今までの相場なら金貨五十枚程度、多くの村で特産品が出来るんや。流通させた商人が大儲けや。マジックバッグは皆が、一番欲しいものや。売るとなれば、オークションか。あんさんは、商人の言い値で売るが、その額は天井知らず。」
「言い値で売るが、大儲けか。」
「うにゅにゅにゅ、そのための村興しだったのじゃ。上手いこと考えたのじゃ。」
ニーナ達は途中、ハンターウルフの群れを狩り、次の村に到着した。
少し海から離れた村は、小麦畑が多かった。放し飼いにされている鶏を見て、ゼンは卵麺の製法を教えた。
「こりゃ、一人で何個でもマジックバッグが欲しなるわな。」
「うにゅ、出汁にかまぼこ、さつま揚げ、麺もあるのじゃ。この街道を回ればうどんやラーメンが出来るのじゃ。ここはラーメン街道じゃな。」
馬車の中でゼンはマジックバッグを作り始めた。頭陀袋に複数の魔法陣を付与するだけの単純な物だった。
「それでマジックバッグが出来るのじゃ。誰でも作れると思うのじゃ。」
「ふふ、空間操作と時間操作の魔法陣は難しいのよ。少し間違えると二つ合わせた時に、大爆発をおこすの。町ぐらいは簡単に吹き飛ぶわ。」
笑顔で言うキキの言葉に、ニーナとミリアン、ララは眼を剥いて押し黙った。御者をしているロロまで後ろを見て口を開けていた。
ニーナはゼンの横からゆっくりと離れた。
「ゼンは無造作にやっているわけじゃないのよ。もの凄く集中しているの。揺れないこの馬車だから出来ることよ。」
「しかし、この小汚い袋が白金貨になるのじゃ。ゼンは商売上手なのじゃ。しかし、失敗は無いのか?」
「さすがに百回も吹き飛ぶと慣れたみたいよ。」
「吹き飛んだ?」
「今でも魔道具を作りながら、大怪我するからね。一人でこそこそしているときは近づいちゃ駄目よ。爆発や毒ガスが出ることがあるから。」
ニーナ達は無言で頷いた。
「恐ろしいのじゃ。」
キ♀:今回は休憩回なの。
空♂:いや、ゼンは魔道具製造が趣味ってことを紹介した。
キ♀:麺街道、ヌードルロードを作ったのよ。
空♂:それは偶然の産物です。
キ♀:インスタント麺は作らないの?
空♂:うにゅ、実はゼン。すでにインスタント麺の錬成陣を持っている。
キ♀:あら、そうなの。
空♂:パッケージまでそっくりに作る。
キ♀:いずれ出て来るの?
空♂:今のところは出しません。




