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ニーナ、魔物の大群と戦う

予告なく修正することがあります。

Sep-20-2020、一部変更。

 大漁祭りが終わる頃、海鮮焼きそばが平民地区の食堂で、目玉メニューになっていた。

 日を追うごとに都市周辺で目撃される巨大種が増え、少ないが冒険者達や漁民にも被害も出始めた。

 合同会議から六日後、ゼンは一人で出かけ日暮れに戻って来た。


「上陸は明日の明け方ね。騎士団も傭兵も準備は出来ているわ。ギルスとエレンは装備の点検を、のじゃ姫とミリアンはマナ・ポーションを多目に持って行って。ララとロロはゼンから貰って。」


 キキの言葉にゼンは数十個の野球ボール位の玉と、投擲用の道具をテーブルに出した。革の両端に紐が付いていて、革は玉を包み込むぐらいの大きさだった。


「その玉は小規模な炸裂魔法を封じてあるわ。これはスリングと言う投擲具よ。扱いは簡単だけど、後で少し練習しておくといいわ。ゼン、お手本を見せてあげて。」


 ゼンは革に手頃な石を包み、紐を掴ん振り回し手を放すと石が遠くまで飛んだ。ララとロロは目を輝かせながら見ていた。ゼンは長い紐が三本付いたスリングを出して、両端の紐を左手に革から伸びた紐を右手に持って、身体の左右に入れ替えながら振り回した。石を包んだ革が見えない速度になると、右手を引いた。すると、石が空へと飛んで行き見えなくなった。


「年少組は都市壁の上でスタンビートにだけ参加よ。スタンビートで魔法陣が発動したら、ギルスとエレンは私について来て。」

「判った。」

「承知した。」


 その日、ララとロロはスリングの練習をし、一時間と経たず石を的に九割程度、命中させるようになった。途中からニーナとミリアンも参加し、ゼンが的に点数を書き足した。二時間後、だんとつでトップのミリアンが、少し嬉しそうに戻って来た。エレンが外を眺めると、ガッツポーズのニーナと僅差で負けたらしい項垂れるロロが見えた。早めに眠り、夜明け前に準備を始めた。

 東門には既に騎士団や傭兵団、冒険者達が集まり、司祭の姿も見ることが出来た。

  

「魔法陣が発動したらスタンビートには騎士団を中心に太陽の旗と冒険者で殲滅。聖教教会より治療師達も応援に来てくれた。負傷者は盗賊ギルドが中心になって連れ戻す。魔法師は前衛の騎士団に注意して魔法を使用。本当にいいのか。」


 全員を前に説明していたブルーノスは、横に立つキキに小声で問うた。


「心配しないで。」

「悪魔族が上陸したら陣形を変更する。前にエルノワールの三人が出る。抜けた奴らを、上級騎士と我々で囲む。」


 ブルーノスが説明を終えるとそれぞれが、持ち場に移動して行った。年少組は魔法師や弓兵と一緒に都市壁に上った。


「海まで見晴らしが良いのじゃ。」

「此処からなら相当、遠くへ飛ばせるぞ。です。」

「ロロはもう少し頑張ってね。」

「お嬢様、海から魔物が出て来ます。」


 ララの一言でニーナ達の顔が、がらりと変わった。横の魔法師はまだ見つけられないのか、じっと海の方を見詰めていた。黒い丸い物が海面を割って姿を現した。海面から高く突き出るとぐにゃりと倒れた。八本の足を器用に動かし、陸へ上がって来た。


「蛸の巨大種は殊更、気持ち悪いのじゃ。」


 馬車ぐらいの蛸を先頭に、様々な巨大種が海から上がって来た。烏賊に蟹、ロブスターなどの巨大種が押し寄せた。中にはザリガニの様な体に、鋏の代わりに鎌のような手を動かすもの、カマキリのよう体の背に大きな巻貝を乗せたものなどが見えた。何故か魔物たちは迷わずに海から続く道を、真っ直ぐに城塞都市目指して進んで来た。

 先頭の魔物が魔法陣の上に乗ると、魔法陣が鈍い光を放ち始めた。先頭の魔物が魔法陣を越えようとしたとき、大きな爆発音とともに、エクスプロージョンが発動した。数十体の魔物が体を引き千切られ飛ばされた。


「音の割にしょぼいのじゃ。キキのファイヤーボールの方が凄いのじゃ。うにゅ、半分以上抜けて来たのじゃ。」


 ニーナが辛口の感想を口にした時、上陸地点ではブルーノスが叫んでいた。


「中級騎士以下は抜けた魔物を仕留めるのだ。バルドス、太陽の旗と共に追撃隊の指揮を任る。」

「承知した。騎士達は小隊に別れてくれ。隊長達は小隊を指揮しろ。魔法の射程に入ったら、気をつけろ。」

「おお。」 


 魔法陣の罠を抜けた魔物たちを傭兵と騎士の混成軍が討伐して行った。

 しかし、討伐軍を抜けて少なくない魔物が、都市壁から百メートル程まで近付いた。


「ファイヤーボルト。」


 ニーナが魔法を撃ち三つの火の礫が高速で飛んで行きを行き、三体の魔物が頭を吹き飛ばされた。


「この距離が届くのか?」

「この距離が届かんのか?」


 横の魔法師の驚きの言葉に、同じく驚いてニーナも声を上げた。ミリアンも驚いた様に魔法師を見ていた。

 ミリアンは弓に矢を番えると、上に向かって放った。


「散!」


 矢が数百に増え、魔物たちに雨のように降り注いだ。周りにいた弓兵達も魔法師達も、目の前の光景に驚いたか、目を大きく開いて動かなくなった。


「爆!」


 二つ目のキーワードで、刺さった矢が爆発し、運悪く急所付近に刺さっていた魔物が倒れ。


「爆炎の姫と風刃の姫がいる。少し距離を取れ。他の魔法師より射程が長い。」

「ギルマス、程が有るぞ。倍以上だぞ。風刃の姫も矢の射程がやばい。」


 討伐隊を指揮していたバルドスが叫んで指示を飛ばした。ランドスの言葉は爆音にかき消された。

 前方で魔法師達の設置したものより、大きな爆発が起こった。しかも、一回ではなく次々と起こる爆発に、魔物達が数十体ずつ吹き飛ばされていった。


「それは何ですか?」

「主様から貰った魔法が封じられた玉だって。です。」

「一体、何の魔法が封じられている。」

「知らない。」


 興味津々の魔法師の問いに、ララとロロは首を横に振った。全ての魔法の玉を投げ切り、ニーナとミリアンが三本目のポーションを飲んだ頃、海面に変化が生じた。


「悪魔が出て来ます。」


 海面に黒い影が浮かび上がのを、ララが一早く見つけ叫んだ。


「あの黒いのがそうか。」

「頭に二本の角が有ります。多分、悪魔族です。」


 ララが気付いたと同時に、前方でキキがギルスとエレンに指示を出した。


「少し下がるわよ。ギルス、エレンは魔法を逃れたものに対処して。」


 ギルスとエレンは固い表情で頷き、剣を抜いてキキの両脇に立った。海から二十体以上の黒い魔物がゆっくりと上陸して来た。キキが右手を横に広げると、手の平の上に酒樽程の火の玉が出現した。


「その大きさは驚嘆に値する。しかし、我等には無駄だ。」

「ファイヤーボール。」


 火の玉が飛んで行き、着弾して火柱を上げた。火柱が収まると変わらず立っている魔物達がいた。


「無駄だと言っただろう。」

「大した自信ね。レッサーデーモンでも完成体にもなれば、そこまでの魔法耐性を得ることが出来るのね。」

「人族の魔法では無駄だ。さて、我々の方から行こうか。」


 レッサーデーモン達は音も立てず、武器を構えた。あるものは剣を、あるものはハルバートを、槍を構えてキキに向かって歩き出した。


「ファイヤーボールは防げた。」


 キキの広げた右手に、真っ赤に燃える拳ほどの火の玉が再度、出現した。


「無駄だと言ったぞ。」

「そうね、これならどうかしら。プロミネンスボール。」


 赤い炎が青白い炎に変わった。


「お嬢様、あの色は一体。」

「もの凄い高温になっているのじゃ。」


 ニーナもララも都市壁から、キキの出した火の玉を見ることが出来た。近くにいたギルスとエレンにも熱が伝わったのか、二人の頬に汗が流れた。レッサーデーモン達も動かなくなった。


「ハンドレット。」


 浮かんでいた青白い火の玉が百個に増えた。


「増えたのじゃ。」

「凄い数。」


 ニーナとミリアンが驚き、見ていた魔法師達は眼を剥いて固まった。レッサーデーモン達は慌てたように、各々が無秩序に動き出した。


「ストライク。」


 百個の火の玉がレッサーデーモンに襲い掛かり、着弾と同時に音も無く高温の炎が広がった。レッサーデーモンが一瞬で灰に変わり、岩の表面が赤くなり溶け出し、海水が蒸発して大量の蒸気が霧のように立ち込めた。辛うじて魔法から逃れたのは、三体のレッサーデーモンだった。一体にはブルーノスとマクシミリアンが四天王と共に、行く手を遮った。


「ギルス、エレン。左を任せるわ。大丈夫、貴方達なら出来るから。」


 ギルスとエレンがキキから離れると同時に、蒸気の中から一体のレッサーデーモンが飛び出した。


「貰った。魔法師。」


 キキが半歩、横に躱すと同時に、三筋の銀光が走った。何時、抜いたかキキは右手のレイピアを鞘に戻す。擦れ違ったレッサーデーモンが輪切りになり、崩れ落ち灰になって消えると、大人の拳ほどの魔石だけが残った。

 キキはギルス達の方へ歩き出した。


「ギルス、エレン。オドを意識して、身体に巡らせるイメージよ。」

「ブースト!」

「アクセル!」


 キキの言葉で二人は身体強化魔法を発動させた。上段から打ち込まれたレッサーデーモンの剣が、エレンを斬ったかのように見えた。エレンの姿が幻のように消え、レッサーデーモンの前に現れた。首を薙ぎに来たエレンの剣を、レッサーデーモンは身体を捻って辛うじて躱した。


「おおっ!」


 裂帛の気合いと共に、ギルスの突きがレッサーデーモンの胸に突き刺さった。苦し紛れの左手がギルスの顔面に迫る。ギルスは顔を反らすが、右頬をざっくりと抉られた。


「人間様を舐めるな。」


 顔半分を赤く染めてギルスが、止めを刺した。

 三人が騎士王達を見ると、ブルーノスが地を這うように、レッサーデーモンの片足を切断し、倒れたところにマクシミリアンの剣が喉に突き付けられた。


「ぐっ、我等は搖動だ。本体は別の海岸から倍の数が上陸している。ここは終わりだ。そして、我等は悪魔へと進化する。ごふっ。」


 苦虫を噛み潰した顔でマクシミリアンは剣を突き入れた。


「ふう、終わったのじゃ。」

空♂:一般に魔法師の射程は100m程。のじゃ姫は200m以上の射程がある。

キ♀:私は1kmでも大丈夫よ。

空♂:ぶほっ。まだ言わないで欲しかった。

キ♀:あら、ごめんなさい。

空♂:ミリアンの射程は250m程度。ララとロロのスリングも同じぐらい飛ばす。

キ♀:何の魔法が封じられていたの?

空♂:魔法陣と同じエクスプロージョン。ただ、込められた魔力量が遥かに多い。

キ♀:ゼンが居なかったけど。

空♂:次回、色々と動きます。

キ♀:乞うご期待ってことね。

空♂:(⌒∇⌒)

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