ニーナ、屋台を出す
予告なく修正することがあります。
Sep-20-2020、一部変更。
翌日、ゼンが屋台を出すと、ニーナが先頭になって指定場所に向かった。場所に到着すると、ゼンは屋台を広げて準備を始めた。
「なんとも便利な屋台なのじゃ。」
「アイテムボックスが使われているの。今回は鉄板焼きバージョンね。他にもコンロ、炭火焼バージョンもあるの。食材は冷蔵のアイテムボックスに入れることが出来るの。」
「これもまさか、ドロップ品?」
「ゼンが作ったのよ。変わった魔道具を作るのは、彼の趣味だから。」
無言で準備を終えたゼンを見て、ニーナが服を取り出してキキに見せた。
「却下。」
ミニスカメイドの衣装は女性陣から速攻で拒否された。仕方なくニーナは装備を収納して、アンダーアーマーの上から花柄のワンピースを着た。キキはいつものレザーパンツにブーツ、黒いシルクのドレスシャツの、冒険者スタイルにマントの代わりにエプロンをつけた。ララはグリーンのワンピースにエプロンをつけた。エレンは赤と白のチェックのワンピースを着た。
「エレンのワンピース姿は新鮮なのじゃ。」
「お嬢の護衛なのに大丈夫かな。」
「たまには、休め。俺もいるし、ロロも頼りになってきた。ゼンさんとキキさんは、武器とマントが無いだけだぞ。」
ニーナが看板に焼きそばの絵を描いて、下に値段を書き屋台の前に置いた。
「お嬢、これは?」
「や、焼きそばなのじゃ。」
「新種のミミズにしか見えないぞ。」
「うにゅにゅにゅ。」
キキが焼きそばの写真を転写して、ミリアンが花や美味しいの飾り文字を描き入れた。
「うにゅにゅにゅ。しかし、こんな場所で大丈夫かの。少し、離れ過ぎなのじゃ。」
「問題ない。」
「有ると思うが。」
「少し遅くなったが、朝食にしよう。」
ゼンは素早く調理し、朝食を準備した。味噌汁に焼き魚、ご飯が並んだ。
「今日のスープは具が多いのじゃ。」
「豚汁って言うのよ。豚肉と沢山の野菜が入ったお味噌汁。美味しいのよ。」
全員で席に着き、食事を始めた。
「このスープは美味しいのじゃ。塩をつけて焼いただけなのに、美味しいのじゃ。」
「本当、ご飯がよく合う。」
ご飯を食べるニーナ達が珍しいのか、メニューが珍しいのか人が集まり出した。食べ終わるとゼンは材料を出し、焼きそばを作り出した。
「豚汁が銅貨五枚、焼きそばが銅貨十枚ね。」
「肉はファイヤーボアだぞ。蟹も入っているし、もっと高くてもいいのでは。」
「貴族か商人には、豚汁が大銅貨五枚、焼きそばは銀貨一枚にしましょ。」
「それは高いような気がするけど。」
「貧民街の子ども達には、貴族や商人からだと言って、食べさせてあげればいいわ。」
ニーナ達は顔を見合わせて笑顔で頷いた。すると、商人のポンチョが近づいて来た。
「これは見た事も無い料理ですな。一ついただけますかな。」
「スープが大銅貨五枚に、焼きそばが銀貨一枚だ。」
「少し、高いような気がしますが、良いでしょう。スープも下さい。」
テーブルに座り、焼きそばを食べ始めた。一口、二口と焼きそばを口に運ぶと、ポンチョは目を見開きながら手と口を素早く動かした。
「この肉はファイヤーボアですかな。焼きそばと言うのですか。これに使われているのは、胡椒ではありませんか。それに食べた事のない、食材が多数。十倍でも売れますぞ。レシピを売る際は、私の商会をご利用下さい。」
ポンチョの感想を聞いたゼンは、板の値段を書き換えた。更に板を出して金額を書き入れた。
「理不尽なのじゃ。」
屋台の上に板を乗せた。板には「ファイヤーボアのスープと魅惑の海鮮焼きそば。スープ銀貨五枚、焼きそば銀貨十枚。」と書かれていた。
「言いましたけど、これではそこそこの商人か、貴族以外は無理ですよ。」
「問題ない。」
「では、頑張って宣伝させて頂きます。」
ポンチョは笑顔で何度も振り返りながら、中心街に向かった。暫くすると、ゼルスが護衛の騎士四人を連れてやってきた。
「儂等にスープと一緒に頼む。」
「大公閣下なのじゃ。ゼンの作る料理は絶品なのじゃ。絶対に気に入る筈じゃ。」
ミリアンが大公に焼きそばを運び、エレンとララが騎士四天王に配る。
「今は冒険者ギルドのマスター、ゼルスだ。おお、これは美味い。美味いぞ。クラウス、料理人を呼んで来い。このレシピ、儂が買うぞ。」
「慌てるでないのじゃ。いずれ売るが、今ではないのじゃ。取り敢えず今は、味を楽しんで欲しいのじゃ。」
「何故、お嬢が言う。」
大公と四天王達はあっという間に完食し、お代わりを注文した。運ばれてきた焼きそばを食べていると、貧相な服を身に着けた子ども達が、集まって来て大公達を見詰めていた。
ゼンが頷いたのを見て、ニーナは満面の笑顔を作った。
「お前達、肉入り海鮮焼きそばを食べたいか!」
ニーナの叫びにお金を持たない子ども達は、静かに見ていることしか出来なかった。
「うにゅにゅにゅ、大公閣下がお前達の分を支払ってくれたのじゃ。食べたいか!」
「おおっ!」
「よし、皿と椀を持って並ぶのじゃ。」
子ど達が拳を突き挙げるニーナに釣られたのか、一斉に拳を突き挙げて声を上げた。
「ニーナよ、いくらなんでもその数は、儂でも即決は出来んぞ。」
「貧民街の連中には、豚汁が銅貨五枚、焼きそばが銅貨十枚なのじゃ。」
ニーナが笑顔でゼルスに告げると、優しい笑みを浮かべゼルスは子ども達に向き直った。
笑顔が広がって行く子ども達に、ゼルスが口を開いた。
「何をしている、皆を呼んでくるのだ。ゼンよ、対応は出来るのか。」
「問題ない。」
「ニーナよ、ここに金貨百枚ほどある。置いて行くので頼めるか。」
「頑張るのじゃ。貧民街の者達は支払い済みじゃ。」
子ども達は皿と椀を持って戻ってくると、焼きそばと豚汁を貰って地面に座って食べ始めた。
「肉だ、肉が入っているよ。」
「美味しい。」
「うまうま~。」
一口食べた子ども達から喜びの声が上がり、見ていた子ども達が慌てて集まって来た。ちらほら、大人達も混じり始めた。
「ギルス、私が指差した者は嘘吐きよ。斬って。」
キキの言葉に何人かが、慌てて列を離れた。それを見て、大公が大声で笑った。
噂を聞きつけた大勢の子ども達が、押し寄せ辺りは騒然となった。
ニーナが樽の上に飛び上がった。
「並ぶのじゃ。小さい子から順番に並ぶのじゃ。そこ、喧嘩をするでないのじゃ。ギルス、其奴等を列から出すのじゃ。騒いだ者は後ろに並ばせるのじゃ。ズルをした者には、食べさせんのじゃ。」
ニーナが指示を出し、ララとロロが子ども達の椀と皿に、豚汁と焼きそばを盛って行った。ギルスとエレンは騒ぎを起こす者を、力づくで排除していった。
どんどん、出来上がる焼きそばは、子ども達の胃袋に消えて行った。
焼きそばを食べた子ども達は笑顔になった。食べ終えた誰かが、呼んだのだろう。子ども達に手を引かれて、大人達も増えて来た。
「私は貴族だぞ。平民どもより先に、渡すのだ。金は払ってやる。」
「後ろへ並べ。馬鹿者!」
貴族は声の方を睨み付け、固まった。
「大公閣下!」
「今、並んでおる子ども達は儂の金で食うておる。お前ごときが邪魔をするか?」
「滅相もございません。」
貴族は子ども達の後ろに大人しく並んだ。大公の護衛騎士も手伝って、大量の焼きそばが配られいった。そして、人々に笑顔が広がって行いった。
ゼンはニーナの腕ほどある蟹の足を出し、ゼルスの皿に乗せた。
「これは、確かに美味い。常駐クエストにするか。」
「気になる話を聞いたわ。普段、獲れるものはこの大きさよ。」
「む、これは見た事がある。さっき食ったのはこれの巨大種か。」
「今、ティム達が聞き込みに行っているわ。」
キキの言葉にゼルスの顔つきが変わった。
「今日は皆の胃袋を攻略したのじゃ。」
キ♀:ほのぼのが続くのね。
空♂:次回は少しシリアスになる予定。
キ♀;あら、休暇ももう終わりなの?
空♂:ちょっと大変な事が起こります。天候の都合で数日、投稿が止まるかも知れません。
キ♀:台風ね。結界を張ってやり過ごすと良いわ。
空♂:魔法は使えんが、巨大な自然の力の前には座して待つことしか出来ない。
キ♀:準備はしていないの。
空♂:少し買いだめはしたけど、後は携帯コンロだな。早く行かねば。
キ♀:行ってらっしゃい。




