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ニーナ、理不尽を知る

予告なく修正することがあります。

Sep-5-2020、一部変更。

Sep-19-2020、一部変更。

 翌日、ニーナとミリアンはキキと一緒に、冒険者ギルドに来ていた。


「何が長期保留クエストじゃ、何が宝の山じゃ。有ったのは古惚けたメダルと可笑しな衣装だけなのじゃ。」

「お嬢様、私達は見ていただけですよ。」

「うにゃ。」

「でも、完了報酬は金貨百枚ですから、合計二百枚です。それに、魔法師ギルドと盗賊ギルドより、発見した衣装を見せて欲しいと依頼が有りました。あら、お二人とも来られましたよ。」


 受付のロイスに文句を言っていると、魔法師ギルドのカイトスと一緒に、笑顔の男が入って来た。


「不気味なのじゃ。」


 ニーナの言う通り不気味な男だった。笑顔で近づく男の眼は笑っていなかった。


「盗賊ギルドのマスターをやっている、ロビヌフーターだ。ドロップした衣装を見せてほしい。」

「昨日、お会いしましたが、魔法師ギルドのマスター、カイトスです。同じく衣装を拝見させて頂きたい。」


 二人はどうやって攻略したのかと、ニーナに詰め寄った。二人の勢いに引き攣った顔で後ろに下がるニーナの間に、キキがゆらりと割って入った。


「私が答えてあげる。不可侵の神殿は強制解呪魔法、パーフェクト・デレクションで幻影結界を解呪すれば達成だったの。どうやら現在は失われた魔法の様だけど。」

「貴方は使えたのですか。さすがはアダマンタイトクラス。是非、私の招待を受けて頂きたい。」

「お断り。」


 キキの即答にカイトスは、項垂れて衣装を受け取った。ブツブツと何事かを呟きながら、衣装を念入りに確認すると顔を上げた。その顔は満面の笑顔に変わっていた。


「間違いない。大賢者の法衣一式。売って頂きたい。」


 カイトスの横で衣装を見ていたロビヌフーターが、顔を上げてキキを見た。


「うむ、大盗賊の忍び装束一式。売って頂きたい。それより、不帰の洞窟の事を教えて欲しい。」

「いいわ。知ったとしても攻略は難しいと思うけど。」


 それから、キキは不帰の洞窟を攻略した詳細を語り始めた。


「入り口は知っての通り、絶壁の中腹にある。中に入ってすぐ、「心得無き者は引き返せ。」と書かれた石壁があるの。それは三重の施錠が施されている。順番に開けないと、上から串が出てくる仕掛けよ。ヒントは石壁の四隅に描かれた模様。中に入ると石畳が敷かれた通路が有り、間違って踏むと罠が作動するの。平らな石は全て罠、丸みのある小さな石が順路よ。下だけでなく、壁や天井にもあった。通路は一本道。足場を確保できるなら、十分と掛からず踏破できる。」

「罠の種類も教えて頂きたい。」


 黙って聞いていたロビヌフーターは、キキに土下座をせんばかりに頼み込んだ。


「罠はシンプルよ。槍や回転刃、落とし穴、巨大な石の玉、糸の刃、毒ガス、水攻め、火攻め。驚くのは破壊しても自己修復するところね。途中、三か所の強制転移はモンスターハウスに飛ばされるわ。白金クラスの魔物ばかり。フロアは森、迷路、闇よ。森と迷路は身を隠しながら、気配を隠して進むことが出来るけど、闇は気配を殺し、気配を察知できなければ即死よ。最後の扉は施錠が特殊で、周りにある大量の剣とナイフから、鍵に合う物を探して差し込むの。赤く色を付けて来たから、すぐに判るわ。辿り着ければね。お茶を戴ける。」

「それをゼンは全て躱して、踏破して来たのじゃ。しかし、モンスターハウスはどうしたのじゃ?」

「全部、斬ったのよ。百体程度の魔物では、彼を止めることすら不可能。罠もほとんど切り裂いてしたしね。」

「理不尽なのじゃ。」


 腕を組んで蛸口になったニーナと静かに頷いたミリアンの前で、盗賊ギルドのマスターであるロビヌフーターは唸っていた。キキが一枚の紙を取り出して渡すと、大盗賊の衣装を持って何度も頭を下げて礼を言った。


「衣装は売ってあげる。何の効果も無い、ただの見た目装備よ。ビジュアル・エフェクト・アイテム。」

「では、代金は後日。急ぎ、各地のマスターと連絡を取らねば。」

「恐らく、オークションになるだろう。三日とかかるまい。決まり次第、持って行こう。」


 そう言い残して、二人のマスターは出て行った。ニーナとミリアンは首を傾げて見送った。


「あまり恰好の良い衣装とは言えんのじゃ。」

「あのようなアイテムは一部の人達には、とっても貴重なものなのです。時には、金貨数千枚になることあります。どちらのギルドも優秀な鑑定スキル持ちがいますから、明日か明後日には決まると思いますよ。」

「数千枚。凄いのじゃ。ところで、キキ。あの紙は何じゃ?」

「不帰の洞窟の攻略法。判っていても難しいわね。躱すしかない罠もあったしね。」

「それもそうなのじゃ。」


 ギルド内に併設されている、料理カウンターでジュースを頼み、飲んでいると階段から何かがぶつかる音が聞こえてきた。扉が鼻血を流すカルロスを吐き出した。


「副マスター、大丈夫ですか。」

「大丈夫。いや、居たかエルノワール。すぐに北の街道へ向かって欲しい。緊急指名クエストだ。」

「取り敢えず、落ち着いて。先ずは内容の確認と難易度そして、報酬の確認よ。」


 静かなキキの言葉にカイトスとニーナが頷く。


「依頼内容は北の街道に現れた、三体のバトルタイガーの足止め。難易度は最高だ。害獣クラスの魔物が三体だ。もはや、厄獣と言っていい。今、騎士団と傭兵ギルドで討伐隊を編成している。到着までの足止め。出来ないだろうから、追跡を頼みたい。報酬は城塞都市より金貨五百枚、王国から金貨二千枚。君達にしか頼めない。」


 土下座しそうな勢いで、捲し立てるカイトス。ニーナはキキが頷くの見て、胸を反らす。


「エルノワールが受けるのじゃ。」

「討伐しても構わないでしょ。宿にフラストレーションを溜め込んだ、獣がいるのよ。」

「勿論だが、三体だぞ。いや、出来るの、か。そ、その場合は、王国から更に金貨二千枚が出る。」

「そう、判ったわ。のじゃ姫、帰りましょ。」


 ニーナ達は屋敷に戻り、寝ていたゼンに緊急クエストを伝える。


「先に出る。」


 そう言い残し、ゼンは出て行った。市場から戻ったギルス達に事情を説明し、ニーナ達は馬で北の街道を目指した。

 目的の場所に着くと、冒険者や魔法師が集まっていた。その遥か前方にゼンが、その前にはニーナの倍以上の身長と、巌のような筋肉を纏ったバトルタイガーがいた。

 一体は幅広のゼンの身長を超える剣を持ち、もう一体は象でも両断出来そうなハルバードを持ち、最後の一体は巨大な戦槌を持って、ゼンと対峙していた。

 害獣は一体で火災などの災害並み、三体もいると台風等の自然災害並みになり、厄獣と呼ばるようになる。


「あら、丁度始まる。狩の時間ではなくて、蹂躙の時間ね。」


 ゼンは武器を抜かず、ゆっくりと歩き出して獲物と距離を詰めた。大剣を持った一体がゼンに向かって走り出した。

 そして、始まったのは一方的な蹂躙だった。ゼンの拳が、足がバトルタイガーに吸い込まれた。倒れそうになるバトルタイガーの逆から拳を、蹴りを叩き込み倒れることを許さなかった。

 見ていた二体が動き出した時、大剣の一体が地面に沈み動かなくなった。見届けたゼンの顔が残りの二体を向いた。凶暴なバトルタイガーの顔に、明確な恐怖の表情が浮かび上がった。

 どれくらいの時間が過ぎたのだろう。騎士団が到着した時、彼等が見たのは横たわり動かない三体のバトルタイガーだった。


「見た?あれが化物よ。落ち着いたみたい。」

「理不尽なのじゃ。」

「素手で厄獣クラスの魔物を討伐。有り得ねぇ。」

「ミリアン、どうしたの。」

「遠いです。」

「うん、遠いです。」


 ミリアンとロロの言葉に、ニーナ達は首を傾げた。キキは微笑みながら二人を見ていた。


「帰るか。」


 冒険者ギルドに戻って、討伐の報告と魔物の買い取りを依頼した。


「傷の無いバトルタイガーの毛皮なんて、レアを通り超えています。討伐自体が難しいのに、無傷となると伝説級ですよ。どうやって、倒したのですか。」

「ゼンが殴り殺したのじゃ。」


 ニーナが手足を振り回して、ゼンの偉業を説明すると、ロイスを始め周りの職員も、口を開けたまま動かなくなった。ゼンの咳払いで我に返ったロイスは、査定金額を提示すると、今度はニーナ達が口を開けて動かなくなった。


「一体が金貨千五百枚なんて。」

「バトルタイガーの毛皮で作ったマントは、貴族の間で非常に人気が有ります。でも、保温効果も防御力も低いので、お洒落アイテムですね。しかも、三体丸ごとですから。」


 金額に驚くギルスにロイスが説明する。貴族達の間で凶暴な魔物の毛皮を、マントや敷物にして飾ることで、貴族の底無しの虚栄心を満たすのだろうか。


「それにしても三体で、四千五百枚。指名クエストの報酬と合わせて、全部で金貨九千枚。ゼンさんに嫁ぐかな。すでに、遊んで暮らせるぐらい、持っているはずだ。」

「私も立候補します。ギルドの受付より、絶対にいいと思います。」


 エレンとロイスがゼンを本気とも冗談とも思えない視線を送った。


「エレン、パーティーの金だ。」

「いやいや、ゼンさん。俺達はほとんど、何もしていないから。全部、ゼンさんとキキさんの分でも、俺達は構わないぞ。」

「ふふ、管理はゼンに任せておけば安心ね。必要な時はゼンか私に言ってね。でも、全く無いと不便でしょうから、少しは持っておかないとね。」

「屋台攻略が出来るのじゃ。」

「お嬢達のお小遣いはミリアンが一括で管理ね。」

「ぶー。」


 ニーナ達のブーイングで、屋敷に戻った。


「もうすぐ、大漁祭りなのじゃ。」

空♂:少し変更。

キ♀:のじゃ姫の反応とセリフが変わったのね。

空♂:後書きも変更。

キ♀:いいわ。洞窟と遺跡は大したことなかったしね。

空♂:近々、始めから修正しなくてはならない。

キ♀:今月の連休ね。

空♂:少しやらねばならぬ事もあるが、これは予告ではない。

キ♀:出来ない時のいいわけね。まっ、いいわ。せいぜい、頑張って。

ゼ♂:(▼ω▼)ジーー

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