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ニーナ、勇者を諭す

予告なく修正することがあります。

空♂:間に合った。

Sep-19-2020、一部変更。

 昼からやることのなくなったギルスとエレンは、ララとロロを連れて市場に繰り出した。ニーナとミリアンは、ゼンとキキに同席して勇者のパーティーについて聞くことにした。


「先ずは既に会っているアオイ、ヒーラーで槍の達人だよ。四国の稲荷神社の巫女で、うどん作りが趣味だったそうで、うどんを再現できた。」

「四国、稲荷、巫女、槍の名人。」


 ゼンは少し考え込んでキキを見た。キキは小さく頷いて、勇者に向き直った。


「ひょっとして、姓は屋島?」

「確かそうだったと思う。」

「本物ね。魂振りの巫女、鬼狩の末裔。」

「何それ?」

「地球も中々、ファンタジーなのよ。存在するのよ。魔法のような力を持つ者達がね。」


 アーサーはキキの言葉を理解しかねたようだった。


「魂振り?何じゃそれは?」

「身体強化魔法の様な物よ。確か、槍に光属性を纏わせて敵を討つのだったかしら。」

「ホーリーランスのことかな?アオイの得意技だ。向こうにいた時から、使えたのか。」


 ニーナの疑問に答えたキキの言葉に、アーサーは驚いた様に聞いた。アシャは黙って聞いている様に見えた。

 

「次は?」


 アシャを見ながらゼンは短く、アーサーを促した。


「うっ、魔法師のマリン。彼女は召喚魔法かな、紙を出してモンスターを呼び出す。闇と水、土の属性魔法が使える。今は、バビロナリア魔法王国の宮廷魔導師をしている。」

「その紙は、これと、こんな文字が書いてある紙?」


 キキは人型や鳥の型に切られ、勅令と書かれた紙を出して見せた。


「見た事もない模様なのじゃ。」

「使うところを見た事がある。名前はオオママリだったか。」

「大きい麻袋の麻と書くのか?」

「思い出した。そうだった。知り合いか。」


 ゼンに聞かれて答えたアーサー。キキはアシャを睨み付けた。


「知り合いじゃないけど、知っている人間よ。大魔家の系譜。真理は先代の当主だったはずよ。」


 ゼンとキキに睨まれてアシャは、観念したように溜息を吐いた。


「想像通りです。最高の陰陽師でした。もう一人は、九鬼十兵衛です。今はジュウベイと名乗り、冒険者に登録して各地を回っています。」

「此処、二百年で最高の剣士ね。でも、難病を患って二十代で死んだはずよ。」

「そうです、彼等はアーサーが死ぬ、前後十年に死んだ者たちで、最高の力を持っていました。」


 アシャの言葉にアーサーは眉間に皺を寄せた。


「ひょっとして、僕以外は凄い人ばかり?僕はただのゲームオタク・・・」

「なるほどね。ゲームオタクに方向性を持たせ、魔王討伐に向かわせた。最初はゲーム感覚で。」

「キキの言う通りです。暴走した魔王も唆した悪魔達も厄介でした。放っておけば人間種が激減し、滅びる種族も出てくるところでした。」


 アシャはこの世界のバランスを保つために、勇者を転生させたと告白した。そして、アーサーは魔人族が人族を殺す場面を見て、魔人族が全て魔王の手下だと思ったと告白した。


「アーサーは何故、魔人族が人族を殺しただけで、魔人族を全滅させようと思ったのじゃ?」

「それは人を殺すのは悪いことだから。」

「人族の一人がエルフ族の一人を殺すと、エルフ族に人族が滅ぼされても文句は無いのじゃ?。」

「それは・・・」

「のじゃ姫。彼は平和な世界で生まれ育ったの。そして、他種族を見た事が無かったのよ。」

「人族はよく他の種族を亜人族と蔑むが、他の種族を妬んでおるとお婆様が言っておったのじゃ。人族とは傲慢な者が多いとも言っておったのじゃ。アーサーよ、魔人族の全てが敵でないのじゃ。一部にはおるが、人族の中にも悪い者は多いのじゃ。ゼンはすぐに殺すが、お前もそんな人族も殺すのじゃ?」

「うっ、それは。ゼンさんはすぐに殺すのか?」

「ゼンは剣を抜いた相手は容赦なしに殺すのじゃ。ゼンも殺人狂ではないのじゃ。敵以外は殺さないのじゃ。お前は関係のない魔人族まで殺したのじゃ。お前の生まれた世界がどんな世界か知らぬが、この世界にはこの世界のルールが有るのじゃ。お前のルールを押し付けはならんのじゃ。」


 アーサーはニーナの言葉に押し黙った。

 ニーナとアーサーの会話を黙って聞いていた、ゼンとキキがアシャを見た。


「他の三人には説明したのか。」

「しました。マリンさんは元々、知っていたようでした。後の二人も理解はしてくれましたが、目の前で起こることは止めると。しかし、盲目的に魔人族を滅ぼさないと約束してくれました。」


 黙っていたアーサーがポツリポツリと話し出した。


「悪魔族の脅威は転生したときに、アシャから聞かされていた。魔王軍を実際に見た時は、異形の魔人族はゲームに出モンスターに見えた。だから・・・。僕は取り返しのつかない事をしたのかも知れない。」

「人族を襲っておった魔人族を殺したのは仕方ないのじゃ。彼等も覚悟はしていたはずなのじゃ。今からは気を付けるのじゃ。まだ、やり直せるはずなのじゃ、お主ならばな。」

「大物だな。」


 ニーナに諭されたアーサーは小さく頷いた。そんな二人を見てゼンが呆れたように呟いた。


「魔王討伐が終わりじゃないのよ。あと二体、悪魔族を討つのよ。」


 キキの言葉にアーサーは頷いた。

 夕方、ギルス達が戻って来た頃、ゼンは厨房を借り料理を用意し始めた。


「これがワイバーン節で取った出汁だ。」


 小皿に入れられた出汁を味見して、アーサーは驚いた表情を見せた。


「美味い。鰹でも鶏ガラでもないが、知っているような味がする。」

「だから、ワイバーンだ。」

「なるほど。」


 ニーナ達は新しいメニューを楽しんで、宿に戻って行った。


「うにゅ、若さの秘訣を聞くのを忘れておったのじゃ。」

キ♀:勇者君、のじゃ姫にも言われたのね。

ゼ♂:単にダブっただけだろ。

空♂:違う。断じて、違う。

キ♀:道徳はその場、その時代で変わる。自分の価値観を他人に押し付けないって言いたかったのね。

空♂:おお、判ってくれるか。「普通は」とか「常識だ」とか言う人間が一番、非常識だと言うことを言いたい。

キ♀:常識は時代や場所、社会で変わるものね。

空♂:良識を忘れないで生きて行きたいものだ。

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