ニーナ、ハブられる
ゼンとキキが中心です。
予告なく修正することがあります。
Aug-26-2020、一部変更。
Sep-19-2020、一部変更。
勇者の招き応じたニーナ達は、勇者の屋敷に到着した。
「大きい屋敷じゃ。」
「国王に建てて頂いた。こんなに大きな屋敷は遠慮したのだが、パーティー全員で快適に暮らすにはこれぐらい必要だと言われてね。」
執事が出迎えて中に招き入れ、広い食堂に案内された。ニーナ達が席に着くと、アーサーとアシャが入って来た。ゼンとキキ以外の全員が席を立ち、アーサーにお辞儀した。
「お招き、感謝するのじゃ。」
「突然の誘いに、応じて貰ってこちらこそ感謝するよ。今日は色々と変わった食べ物を用意して見た。楽しんで欲しい。」
料理が運ばれて来て、ニーナ達の前に並べられていった。ステーキやスープの他に、焼き飯や餃子、豆腐、唐揚げ等が並んだ。ニーナ達は瞬きもせず、じっと見つめていた。
「このプルプルした白い物はなんじゃ。」
「豆腐だよ。この辺りの冬は寒いからね。鍋に入れると美味しい。今は夏だから冷やして食べても美味しいのさ。それとこれは唐揚げ、とっても美味しいよ。」
「唐揚げは食べたことあるのじゃ。ゼンが時々、作ってくれるのじゃ。」
ニーナの言葉にアーサーはチラリとゼンを見た。その後、ニーナ達が冒険者になった経緯や魔物の討伐の話をし、アーサーが時々、質問をして食事が進んだ。その間、アシャはじっとゼンとキキを見詰めていた。
「美味しかったのじゃ。」
「俺達は少し、勇者と話す。先に宿に戻れ。」
ニーナが上目使いにゼンを見ていたが、何の反応も無い事に諦めたのか、ギルス達と一緒に宿へと戻った。ゼンとキキはアーサーとアシャと向かい合って席に着くと、お茶が用意された。
「それで、何が聞きたいの。」
キキはいつもより低めのトーンで聞いた。
「君たちのステータスが見え・・・。」
「それは重要じゃない。この世界に来た目的よ。」
言いかけたアーサーを制して、アシャがキキに聞いた。
「落ちたのよ。」
「落ちた?偶然、この世界に来ただけなの。じゃあ、今は何をしているの。」
「帰るポイントを探しているのよ。無理やり帰ってもいいけど、貴方達が困るでしょ。」
アシャの問いにキキが答え、会話が進んで行った。会話が理解できないアーサーは、無言を貫くゼンを見て口を噤んだ。
「あの子達と何をしているの。また、気まぐれ?」
「そんなところよ。気長に楽しんでいるわ。」
「はあ、判ったわ。貴方達に言っておく事があるの。魔王は討伐されたけど、悪魔族は逃げたの。」
「逃がしたの?彼に説明はしなかったの?」
「何の話だ?」
アシャとキキの会話に、自分の事が出たアーサーが会話に参加した。
「貴方は転生者ね。そして、仲間も転生者。」
「そうだ。僕達は転生者だ。仲間もそうだ。アオイには商業都市で会ったようだね。連絡があったよ。ステータスの見えない二人が来たって。」
「何故、討伐しようと思ったの。」
「魔王は魔族を率いて、人々を殺していたんだ。それをアシャから聞いたし、実際に見た事もあった。皆で話し合い、魔王討伐を決めたのさ。十五になる前に職業を選んで、それぞれの職業について勉強も頑張ってした。十五になって魔王討伐の旅に出でたんだ。魔王を追い続けて五年かかったよ。」
それまで、静かに話を聞いていたゼンが顔を上げた。
「魔族は魔人族だ。魔人族も人間種だ。」
「魔族は人族を食べる。そんなのは許されることじゃない。」
「何故だ。人族を殺すことは悪か?」
「当たり前じゃないか。殺して食べるなんて悪魔の所業だ。」
ゼンの表情からは何の感情も読み取れなかった。アーサーはさも当然だと言う風に答えた。
「牛や豚を殺して食べることは。」
「牛や豚は家畜だ。人とは違う。それに、生きるためだ。」
キキは黙って聞いていた。そして、アシャも俯いて静かに聞いていた。
「人族も増える。しかも、適応能力も高い。」
「でも、人を殺すのを見過ごせない。」
「お前は牛や豚が人間を悪魔と言い、殺し出したらどうする。当然の報いだと思うか?」
ゼンの問いにアーサーは少し考えたように間を置いて、首を横に振った。
「それは。それは受け入れられない。」
「傲慢な只人族の言い分だ。自分たちと姿の違う異形を恐れ、多くの種を滅ぼしても人族は気にしない。別の種族の一部が人族を殺すと、種族ごと滅ぼそうとする。人族を一番、多く殺す種族は何だ。」
「それは、魔族?」
「いつの時代も、どの世界でも人族を一番、多く殺すのは人族だ。」
ゼンの言葉にアーサーは考え込んだ様に黙った。アシャは俯いたまま顔を上げなかった。
「魔人族も家族を持ち、生きるため他の生物を糧にしているの。人間が牛や豚を食べるようにね。人族も牛や豚と同じなの。」
「でも、人を殺すことは悪だ。」
「違うな。人族だけの言い分だ。お前達が殺した魔人族が納得すると思うか?」
「話を聞いてきたら。貴方が殺した魔人族の家族や子ども達、恋人にね。」
アーサーは言葉を続けることが出来なかった。魔人族に家族が、恋人がいたという事実。人族と変わらない見た目のものもいた。アーサーは人族に混じって生活を送る魔人族を見た事があった。
「今頃、何の話をしているのじゃ。」
キ♀:ここは多様な種族がいるけど、人族だけの世界ではもっと傲慢になっているわね。
ゼ♂:自然を破壊し、他種族を滅ぼし、最後は自分達をも滅ぼそうとしている。
キ♀:気付いてないのよ。いえ、気付いて気付かない振りをしているのね。
ゼ♂:自分達が破壊したものを、修復して喜ぶ。愚かな種族だ。
空♂:二人とも人族には厳しいですな。
ゼ♂:自分達が最高の存在だと思っている傲慢な種族だ。
キ♀:人間嫌いの偏屈な男だと思われるわよ。
ゼ♂:・・・・・
空♂:それは嫌なのか。




