ニーナ、勇者に会う
予告なく修正することがあります。
Aug-26-2020、一部変更。
Sep-19-2020、一部変更。
ニーナ達は数日、色々なものを買い漁った。山椒や唐辛子、醤油に味噌、ティンタジェルの町は他の町では見られないものが、多く売られていた。紙も通常の半額ぐらいで、手に入った。魔道具も豊富で扇風機やドライヤーのような物や、ミキサーなども売っていた。
「何故、マヨツクール。」
泡立て器が付いた魔道具の名前を見て、ゼンは小さく呟いた。
ニーナが所々、歪な凹みのある鉄板を見て首を傾げていた。
「これは何じゃ?不思議な鉄板なのじゃ。」
「多分、失敗作よ。たこ焼きが作りたかったのね。」
「たこ焼き?それは何じゃ?」
「蛸が手に入ったら必ずゼンが作る食べ物よ。ゼンのたこ焼きはとても美味しいの。」
目を輝かせてゼンを見ると、小さく頷きながら様々な道具を見ていた。ニーナ達も店を回り、エレンがドライヤーを買い、ギルスが色々なエクササイズ・アイテムを試していた。
「ゼン、この魔道灯が欲しいのじゃ。馬車に付けて欲しいのじゃ。」
ニーナの希望で灯りを数個を買い、マジックバックに入れ、他にも本屋、道具屋、雑貨屋、鍛冶屋を回った。そして、その日の昼ごろ、少し高級な感じのするレストランのテラス席で食事を摂った。
「でも、ゼンさん。少し使い過ぎに思えるのだが。」
「問題ない。」
「エレンの言う通りだ。稼ぎより多いような気がする。」
「気がするじゃなくて実際、多いもの。」
ギルスとエレンの心配に、キキが答えた。意外な答えだったのか、ニーナ達がギョッとしてゼンを見た。
「問題ない。トリエル子爵に会った。」
「そんな、隣とはいえ一日で往復出来る距離じゃない。」
「何をしてきたの?」
「落とし前だ。ついでに頂いて来た。」
「へっ。」
ゼンの告白にニーナ達は口を開けたまま固まった。
「どれくらいあったの?」
「金貨三千枚ぐらいか。他に宝石類。ついでに、子爵の足も貰った。」
「罰が記録されているはずだが、検閲の時に何も言われなかったけど。」
「それは何とでもなるのよ。何処も似たようなものだし。」
ニーナ達は一言も発せずに話を聞いていた。ギルスはギルドプレートに自動記録される賞罰が、ゼンのプレートに記録されていることを心配しての言葉だった。キキは事投げにギルスの心配を否定した。
「一体、何処から突っ込んでいいのやら。」
「でも、男爵に渡した金塊は。相当な額になるのでは?」
頭を抱えるギルスを横目に、思い出したようにエレンが聞いた。
「問題ない。」
「偽物よ。我が子を売るような男に、本物を渡す訳ないでしょ。今頃、メッキが剥がれて悔しがっているでしょう。ゼンは同じ大きさで重さの革袋を出したの。ゼンは金とは言っていなかったでしょ。男爵が勝手に間違えたのよ。」
「中身は何だったの?」
「カースドアイテムよ。髪が抜けて、食事すると必ずお腹を壊して、眠ると必ず悪夢を見るの。」
「最悪だな。」
キキの種明かしに、ギルス達は顔をしかめた。ニーナは猫を思わせる大きな目を細めて、口元に悪戯っ子の様な笑みを浮かべた。
食事を終えたニーナ達は買い物を再開した。しばらく歩くと、広場が騒がしいことにニーナが気付いた。
「広場に人が増えておるのじゃ。」
「多分、帰ってくるのよ。」
「誰がじゃ?」
「勇者。」
キキが言い終えると、広場に魔法陣が出現して光り出した。空から光の塊が魔法陣に落ちて、光が収まると一組の男女が立っていた。
「お帰りなさい、勇者様。」
口々に歓迎する人々の先に、黒髪の青年が、鮮やかな青い髪の女性と立っていた。その様子をニーナ達は、少し離れて見ていた。
「あれが勇者か。普通じゃな。」
「お嬢、勇者が魔王を討伐したのは、二十年以上前だ。どう見ても、俺と変わらんぞ。」
「言われれば、若く見えるのじゃ。」
「秘訣を聞かなくては。」
ギルスが言うように勇者は、二十代にしか見えなかった。隣に立つ美しい女性も、同じぐらいの年齢だろう。そんなやり取りをしていると、ニーナ達に勇者の視線が止まった。ゆっくりと、勇者と女性が近づいて来た。
「僕は勇者、アーサーだ。こっちはアシャ。僕のサポート役だよ。」
「エルノワールのニーナじゃ。」
「ほう、最速でミスリルにクラスアップした、噂の冒険者か。凄いね。」
「して、何用じゃ?」
「こんな場所で立ち話も何だからね。今夜、夕食に招待したいけど、どうかな。冒険の話が聞きたい。」
ニーナはゼンを見て、頷いたのを確認してから答えた。
「判ったのじゃ。」
キ♀:勇者の登場ね。
空♂:アシャはアルメニアの美と豊穣の女神から名付けました。
キ♀:若さの秘訣は?
空♂:おっさんを登場させることを躊躇った。
キ♀:そんな事だろうと思ったわ。




