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初めてのドラゴン?

予告なく修正することがあります。

Sep-19-2020、一部変更。

 あっという間の出来事だった。二十人ほどいた襲撃者が、一発の魔法と一人の剣士によって十分とかからず全滅した。


「凄まじいものだな。」

「キキさんの魔法で半分が倒れていたとはいえ、六人を一瞬で倒すなんて。」

「それで、ゼンは何をしているのじゃ?」


 ゼンは今回も売れそうな装備を剥いでいた。護衛達も手伝い死体を一か所にまとめ、キキが魔法で焼却して灰にした。


「もう大丈夫よ。終わったわ。」


 暗殺者に襲われたことか、多くの人間が死んだことか、ララとロロにとっては怖かったのだろう。戦闘が終わってから泣き出した。

 その日は近くに野営が出来る場所を見つけ、早めに休息することにした。

 ゼンはララとロロのテント張ると狩に出て行き、鶏に似た鳥を数羽とマンゴーのような果物を、持ち帰った。


「解析したけど鶏とほぼ同じ味がするみたい。唐揚げが良いかもね。」

「下拵えをしておこう。」


 昨日の牛をステーキにしたが、ララとロロは余り口にしなかった。エレンが理由を尋ねると、昼間の襲撃を見て食欲がなくなったらしい。

 それを聞いたゼンは野菜と肉でスープを作り、固いパンを入れてチーズを入れたリゾットの様な料理を作った。どうやら、ララとロロは気に入ったようで、お代わりをしてデザートのマンゴーもどきに手を伸ばした。


「昼間の襲撃は暗殺者ギルドね。丸ごと潰したから、暫くは安心でしょう。」


 キキの言葉に皆が頷いた。


「セオンの町で聞いた限りでは、暗殺者ギルドは八人から二十人ぐらいまでらしいわね。」

「殆どの暗殺者ギルドはそんなものらしい。しかし、国を跨いで暗躍するギルドもあるらしい。」


 ギルスの言葉にニーナの興味を引いたのか、身を乗り出して聞き入った。


「昔、何処かの国で聞いた暗殺者は、命令を受けると標的の土地に住み、確実に殺すため何年も正体を隠して近づいて行くの。結婚して子どもを作って、暗殺の機会を狙ってね。無理なら親から子へと暗殺命令は引き継がれていくの。彼等の中にはあらかじめ敵になりそうな相手に送り込まれる者もいたの。命令が来るまで標的に近づいて行くの。」

「もし、ずっと命令が無ければどうするのじゃ?」

「その土地で結婚し子どもを作るの。そして、技と暗殺命令を子に託す。さらに、命令が無ければ何世代も重ねていくの。命令が無ければ何百年でも待ち、命令を受け継ぎ、暗殺者は時間をかけ、世代を重ねながら標的に近づく。恋人や夫婦になれば、暗殺もしやすくなるでしょ。」

「命令があれば、恋人や結婚した相手を殺すのか?」

「そうよ。」

「なんとも悲しい話なのじゃ。」

「昔の世界にあった話よ。孫を惨殺したお婆さんが捕まって、死刑になる前に告白したのよ。標的が力をつけた時は、殺せと命じられていたと。百年以上前からの命令だと。」

「うにゅにゅにゅ。恐ろしい話なのじゃ。」


 翌朝、ニーナ達が日課の練習を終える頃、ギルス達は野営の片付けを終えた。

 途中でアングリーブルを発見し、ゼンが仕留めたぐらいの順調な道行だった。

 夕暮れに村と言うには小さな集落に到着した。井戸を中心に八軒の大きな家があり、麦と大豆、数種類の野菜を畑で作っていた。

 行商人が定期的に訪れ、作物と必要な物資を交換して生活をしている、小さな集落が各地に点在している。

 この村の近くに森があり鹿や兎を狩ることが出来、魔物は冒険者達や傭兵ギルドの定期巡回で討伐されるため危険は少なかった。


「今日はこの村で一泊だ。」

「野営と変わらんのじゃ。」

「大きな家だが、家族が多く部屋は空いていないらしい。」


 ギルス達が使われていない東屋を借り、野営の準備を始めた。ゼンとキキは年少組と村人と話して情報を聞き出していた。


「近くで地竜が出たらしい。」

「そういえば、冒険者ギルドで聞いたのじゃ。確か、烈風の剣というパーティーが行くとか。」


 ニーナとゼンが話しを聞いていると、キキがララとロロと一緒に戻って来た。


「ゼン、野菜と小麦粉を貰えるみたいなの。牛は丸ごと使ってね。」

「了解した。」

「皆が持ち寄るそうよ。肉を提供するって言ったら、サラダやスープも作ってくれるそうよ。それにここには米と味噌もあるそうよ。場所は錬成してね。」


 ゼンは苦笑しながら、錬成魔法で中央に穴のあるテーブルを三十ほど作り出した。村人達が中央の凹みに炭を入れ、鉄板を置いた。ゼンが一トンぐらいの肉を、食べやすい大きさに切ると、村人達がテーブルに運んで行った。

 夕暮れになると、村を挙げてのバーベキュー大会になった。


「マヨは最強なのじゃ。」


 ゼンが出したマヨは子ども達だけでなく、大人達にも好評だった。

 そして、夜が明けた。


 ギルス達が出発の準備をしているとき、村の青年が慌てた様子で駆け込んだ。


「ドラゴンが出た!弟は?」


 青年の言葉に、村中が騒然となった。


「ゼン、北の森よ。竜種じゃないけど、少し拙いわよ。」


 目を閉じ瞑想しているように見えたキキが、顔を上げてゼンに告げた。


「まだか、別々の方向に逃げたのに。」

「追われているわ。」


 青年の心配にキキが答えた。ゼンが走り出すと、ギルスも馬を駆ってゼンの後を追った。

 青年の弟はすぐに見つかった。村に向かって走って来ていた。その後ろに見えるのが、コモドオオトカゲ似た五メートルを超える大蜥蜴。


「タイラントリザードか。ゼンさん、あれは人を喰う。味を覚えると拙いぞ。」

「問題ない。」


 ギルスは恐竜の様な大蜥蜴を知っていたようだ。


「ピキーィィィィィィィィィン」


 ゼンは背中の刀を抜くと、巨大な蜥蜴に向かって走り出した。


「ゼンさん!」


 ギルスの声を背に受け、ゼンは大蜥蜴の首下に潜り込み、抜いた刀を両手で切り上げた。

 大蜥蜴の動きが止まり、その首がドスンと音を立てて落ちた。


「ピキーィィィィィィィィィン」


 独特の鍔鳴りが辺りに響き渡った。


「また、単騎で討伐したのか。」


 大蜥蜴の死体の前で手を動かしているゼンを見て、ギルスが何かを悟ったように呟いた。

 そこへ、村人達とニーナ達が到着した。


「これがドラゴンなのじゃ?」

「違うわ。タイラントリザードよ。巨大な蜥蜴。」

「そのままなのじゃ。」

「うお。」


 ニーナにキキが答えていると突然、ゼンが声を上げた。ゼンの腕に深い切り傷が出来ていた。


「ミスった。」

「ライトヒール。」

「闇属性?」


 キキが治癒魔法を施すと、ミリアンが眉間に皺を寄せて呟いた。ゼンが大蜥蜴の横に移動し皮を引っ張ると、きれいに皮だけがずるずると剥がれていった。

 ニーナ達も村人達も口を開けたまま、誰も言葉が出て来なかった。


「皮は貰うけど、こっちはどうするの。」


 キキは皮を剥がれた蜥蜴を指して村人に聞いた。


「腸詰にするから、戴けるなら欲しいのですが、」

「これは不味いみたいだからいいけど。」

「下処理をしてこの辺りで採れるハーブを、数種類を入れて作ると癖はあるが美味しくなるぞ。」

「そうなの。」

「それなら、私のところに少し残っているからあげるよ。試してみなよ。」


 巨大な蜥蜴は村に残すことになり、村人から大蜥蜴の腸詰を貰った。


「冒険者ギルドから調査に来るわ。その時は、ヴレノワールが騎士と一緒に討伐したと伝えて欲しいの。」

「判ったが、あの人が一人で斬っちまったのに。」

「いいのよ、パーティー名と騎士がいたことを伝えてね。頭は貰って行くわね。」


 焼いてもらった大蜥蜴の腸詰を食べて、ニーナ達は揃って微妙な顔になった。


「うにゅにゅにゅ。大人の味なのじゃ。」

キ♀:草の話ね。

空♂:昔の忍びというか暗殺者は律儀だね。

キ♀:今からでは考えられない道徳というか思想ね。

空♂:命が安かったのだろうな。

キ♀:どちらがいいのかしら。生きるために殺していた昔か、欲望のままに殺す現代か。

空♂:どっちもなぁ。人情と道徳がなくなりつつある現代。妄想の中だけでものんびりしたい。

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