落ちて来た二人
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太陽に照らされた緑がまぶしく、輝く草原が地平線まで広がっている。
草を揺らしながら風が渡っていく。
反対側には侵入を頑なに拒むような、鬱蒼とした森が存在している。
そんな場所に、一組の男女が立っていた。
ジーパンにTシャツ、デニムのシャツを無造作に着て、こんな場所に立つには軽装過ぎる。
歳は三十を超えたところであろうか。表情からは何の感情も読み取れない。血の気の無い薄い唇が更に冷たく見せる。整った部類に入る顔の男だ。ただ、目の色が真っ赤で瞳孔がなく、角膜に黒に近い小さな赤い点が、浮いては消えを繰り返している、不気味な眼をしていた。
「落ちたな。」
いかにも面倒だというように、短くつぶやいた。
「落ちたわね。」
背中まである青味がかった長い黒髪をまとめながら、うんざりと言った感じにつぶやく。
二十代、落ち着きのある言葉や動作から、後半と推測される女は美しかった。
すっきりと伸びた鼻梁、魅力を具現した唇、誰もが憧れるであろう、顎にかけてのライン。猫を思わせる二重の下に、金色の瞳が嵌っている。細めの首の下に大きさも形も理想的と思わせる二つの膨らみがあり、大胆に括れた腰のライン、小ぶりの引き締まったヒップラインから、すらりと長い足が伸びていた。顔の左半分を髪が邪魔だと見る者がいれば言っただろう。
男は辺りを見渡してから、俯いて小声で呟いている女に聞いた。
「飛ばせるか?」
「もう、飛ばしてあるわ。鳥がいたから。」
「地平線が見えている。あっちの選択はないか。」
「後ろの森は十キロほどで抜ける。一キロ程度の草原を進むと道らしきものがあるわ。」
女はここを知っているかのように、周辺の状況を説明した。
「村があった。騎士風、冒険者風、農民風、服装は今のでも問題ないようね。」
「なら、いつものスタイルでいくか。」
「問題ないわ。あと、バックが必要よ。馬もいたからサドルバックでいいかも。理由はいつもの馬が死んでで、いいのでは?」
「じゃ、着替えるとするか。」
男が答えると二人の服装が、一瞬で変わった。
女は膝下までのチャコールグレイの皮のブーツ、タイトなダークブランのレザーパンツ、ワインレッドのドレスシャツに変わった。そして、どこから出したか細身の剣を左の腰につけ、腰の後ろに小ぶりのナイフとブーツに長めのナイフを装備する。
男も同じだがこちらは素材の違いで微妙に異なるが黒一色だった。男も両足に長めの両刃のナイフと、腰の後ろには三十センチぐらいの黒いナイフを二本、背中に男の身長より長い剣を背負う。反りのある鞘に入った形は大太刀の様だが、細身のシルエットが特徴的だった。
「とりあえず、村に向かおう。情報が必要だ。」
やはりどこから出したのかわからない、マントを羽織、鍔広のトラベラーズハットを被る。
「好きね。」
女もマントを羽織、鍔広のトラベラーズハットを被った。
「ハンターだからな。」
「いい年なのに。」
いつの間にか傍らに落ちていた、サドルバッグを肩に掛け、二人は森の中へと消えて行った。
キ♀:異世界転移、始まり始まり。
ゼ♂:今回のロールは無口キャラで。
キ♀:私が説明役ね。
ゼ♂:・・・
キ♀:もう始めたのね。