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アマサの実力


 現在俺は真実の迷宮にてアマサを追っている。


  勢いよくダッシュして逃げるように行ってしまったので俺も追いかけているのだ。


 見ると、どうやらしっかりと<遮断(カット)>はしている。

 俺がエンチャントした<索敵(サーチ)>もフル利用している。が――


「なんだ?」


 モンスターにエンカウントしても、己の手をモンスターの脳天にぶち込んで瞬殺している。

 実に相手の急所を突いてるいい攻撃なのだが、ずっとアマサの唇が動いているのだ。


 しかし、それはあまりにも小声な上に<索敵(サーチ)>で俺がこの場にいることを知っているのか、俺と目が合うと直ぐに避けられる。


 気になるな·····


 俺は魔法を使うことを悟られないように細心の注意を払い、盗系統中級魔法<盗聴(ワーファ)>を発動。

 アマサの方に耳を傾ければ――


「失敗したら殺される。失敗したらダメだ。怖い、怖い、怖い」


 どうやら、先ほどの同時発動(ダブルキャスト)で恐怖心を与えてしまったようだ。

 それでやる気が増すなら俺としてはいいのだが、如何せん心に刺さるな。


 昔の感覚を思い出してしまう。


 『孤高の魔導王』と呼ばれていたが、配下に恵まれなかった。というより()()()だった。

 俺の時代では強者(魔王)が十二人存在した。その魔王に俺は最年少で数えられるようになった。


 俺はただ生きることに必死だっただけなのに、俺の努力は恐怖として相手に与えていたのだ。それこそ今のアマサみたいに――


  今、彼女は猛スピードで攻略している。それは、彼女の実力が大きいと思うが少なからず、いや大半が俺への恐怖心が多大な影響を及ぼしている。


 ダンジョンには訓練のために各層にボスを配置している。しかし、彼女は今日中に俺の命令を二つとも済ませるためにボスの背後に高速で移動、もちろんボスは全身全霊であろうアマサの<遮断(カット)>には気づかない。

 そのまま後ろからグサッだ。


 ボスはその力を存分に振るわせるために他のモンスターよりも人一倍大きい、故にアマサは脳天へと攻撃を諦め、後ろにまわりうなじに向かって手刀で切り裂く。

  実にいい判断である。斬る瞬間に<遮断(カット)>を解き、鍛治系統初級魔法<鋭利化(シャープネス)>を発動させ、しっかりと絶命まで至らせる。


 さすが反乱時に人間に多大な被害を与えたと言うだけある。

 恐ろしい才能だ。それは、他者を殺す才能。


 頭の回転や切り替えが実に速い。


  彼女ならば遠くない先に同時発動(ダブルキャスト)を可能にするだろう。

  そもそも、この同時発動(ダブルキャスト)で頭がオーバーヒートするとかアマサは言っていたがそれは逃げなのだ。


 試そうとしない。


 これだけは言える。魔法発展期は試さなければ何も始まらなかった。

  魔法を開発するにしろ、俺の同時発動(ダブルキャスト)にしろ、全ては試した先にあった結果だ。


 竜人は昔から一騎当千の実力を誇っていたが、今回竜人を隠密に徹しさせるため、このようにダンジョンに潜っているかと言えば試しているのだ。

 アマサの実力を彼女の才能を、重ねてきた努力を·····


 すると、意味合いは違えど彼女は全身全霊を賭して、これに挑んでくれた。

  だからこそ――


「着いた。はァ、はァ」


 アマサの眼前には石造りの大きな扉が配置されている。

  同時発動(ダブルキャスト)が出来ない割には結構速かった。


  時間は·····十時間か。


 そういえば食事もなんもとってなかった。すっかりダンジョン攻略に夢中になっていたのか? ――


「これで、これで文句はない」


 違かった。夢中になってはいなかったな。


  とりあえず、第一の命令をクリアした。俺はアマサの所へと向かう。


「御主人様。大丈夫でしょうか?」


  酷く汗をかいているな。脱水症状や空腹で倒れてしまっても困る。

  <アイテムボックス>を開き、前もって買っておいた食べ物――カロリーメイトもどきとスポーツドリンクもどきを手渡す。


「とりあえず、これ食っとけ。この先にあの気配の正体がいるから」


 俺の言葉にビクッとなりながらもアマサは食べ物を受け取り、食べ始める。

 俺も何も食べてなかったな。おにぎりもどきとお茶もどきを食べるか


「フフ」


 いかん、無意識に笑ってしまった。


 俺の突然の笑いに驚いたのか、アマサは食べ物を頬張りながら小首を傾げる。


「いや、すまん。この世界で誰かと飯を共にしたのはあまり経験したことがなかったのでな」


 友とは酒を交わした。しかし、飯は共にしたことは無かった。

  地球の生活が恋しくなってくるな。両親がいて妹がいて、実に楽しい家族だ。


  こっちの時間軸とあっちの時間軸は違うのである程度ゆっくりと行動しているが、時間が経てば経つほど家族に会いたくなる。

 前世、つまり魔王の時は抱いたことも無い感情だ。そもそも、家族がいなかったからな。


  すると、顔に出ていたのか。アマサも笑いだしてしまった。


「ふふふっ。私、勝手に御主人様のことを勘違いしていたようです」


 俺としては何もしなかったのだがな。しかし、驚かせてはしまった。怯えさせてしまった。俺は人付き合いは慣れていない。

  楓として転生した今でもたまに難しく感じることがある。


  この世界では魔王のころだったのを思い出して喋ってしまっていたからな。


「その力を悪用して世界を支配するとか、滅ぼすのかと思えば、私を購入した理由は助手が必要だから、とか今もご飯を共に食べたことがないと」


 力とはエンチャントや同時発動(ダブルキャスト)のことだろう。


「初めて同時発動(ダブルキャスト)を見た時は昔お父様が語った魔王みたいで恐ろしく感じてしまいましたが、存外可愛いらしい部分もあるのですね」


 心外だな。俺的にはあんまり意識したことがなかったが

 というか、そのお父様が語った魔王って俺だよな。そういえば、俺が魔王だったことを伝えていないが·····


 まぁ、今はいいだろう。せっかく距離が縮まったのだ。ここで俺が魔王と言えばさらに距離が遠くなってしまうだろう。

 うっかり話さないように気をつけなければな。


「よし、腹ごしらえも終わったな」

「はい」


 おっ、どうやら元の様子に戻ったようだ。顔色も良くて怯えている様子もない。


 しかし、問題は残っている。それはこの先にある気配の正体だ。


 俺の予想が外れて欲しいと思うが·····。

 そして、最下層に続く扉を俺は開けたのだった。

次回、戦闘です。

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