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魔王の実力 2

サブタイを見てわかる通り魔王の実力です。と言っても今回は戦闘能力では無く、彼の異質さです。


「はぁ、はぁ」


 荒い息を整えながら汗を拭うアマサ。


 ふむ、一時間半か。あれほど渋っていた割には上々だな。

 しかし、最終系は五分だ。


「ご、御主人様。はぁ、はぁ、お次は?」


  おお、もうダンジョン攻略に対しそこまで意気込んでいるのか。

 嬉しいじゃないか。見ればあの余裕そうな顔は跡形もなく崩れ去っているな。


 よし。


「ここが真実の迷宮だ。見てわかる通り地下型だ」


  眼前にあるダンジョンは真実の迷宮。先程言った通り、地下型である。

  地下型とはその名の通り、地下に続くという形でダンジョンが形成されている。


  しかし、真実の迷宮というのは特殊でダンジョンの入口が地下にあるのだ。

  ダンジョンの入口というのはモンスターが生息している範囲とモンスターが生息していない範囲の境界線のことを言う。


 ここのダンジョンは地下まで階段が続き、扉を開けた瞬間にモンスターに襲われるという仕組みとなっている。

 何故、このように設計されているか? と言えば俺がそうしたとしか言えない。


 魔法発展期では魔法がものを言う時代だ。故に、俺は魔法を極めるために訓練場を設けた。

 それが今で言うダンジョンである。


  宝箱がある? 当たり前だ。俺がご褒美として置いたのだから。

 モンスターがいる? 当たり前だ。俺が試練として配置したのだからな。


 とりあえず、ダンジョンに潜ろう。どうやら今日は冒険者は居ないようだな。

  珍しいな·····――いや、違う。


 辺りを見渡せば巨大な魔法陣が空を覆っている。

 どうやら、人払いの効果を含む魔法のようだな。


 一応、気配感知を発動させれば、ダンジョンの地下に巨大な気配がある。

 ん? これは――


「御主人様。ここ何かいますよ」


  どうやらアマサも気づいたようだ。しかし、誰が奥にいるのか、というのは分かっては居ないようだな。


「そうだな。それを含めて、今からお前には命令を出す」


  この問題を含めてアマサの訓練に利用しようではないか。

  俺の『命令』という言葉に過剰に反応するアマサに苦笑いをしながら俺は説明する。


「一つ、全てのモンスターに気づかれないように最下層まで潜れ」


  俺の命令にアマサの頬は引きつっているが、気にせず二つ目の命令を口にする。


「二つ、奥に巨大な気配を感知した。お前にはそれの発見と無力化を命令する。この二つを見事達成しろ。特に二つ目だけは今日中にカタをつけろ」


 二つ目の命令は何故かアマサの目が輝いているように見えた。

  どうやら、竜人としては隠密は向いてないのかもしれないな。まぁ、無理にでもやってもらうが


「それじゃあ行こうか」

「少しお待ちください」


  早速ダンジョンへ入ろうとした俺の手をアマサが引く。


「どうした?」

「せめて、モンスターに見つからない技だけでも教えてください」


  あれ? 教えてなかったか。


 これは俺の失態だ。というか、知っているかと思ってた。

 よくよく考えれば知っていたらもう出来ているか。


「モンスターに気づかれないようにするためには二つポイントがある」


  一つ目と指を一と示し説明する。


「一つ目は、遮断というものをするんだ」


  遮断とは、気配、殺気、全てのものを遮断し、自分をまるで、そこにいるかのように溶け込ませる術だ。

  もちろん魔法で出来る。


「これをするには索敵系上級魔法<遮断(カット)>を使用する」


 頭に魔法陣を浮かばせ、無詠唱で発動させると、アマサは信じられないものを見たかのように口を大きく開けて驚いた。


「竜人でもここまでは見たことがない」


 当たり前だ。そもそも、バレては意味が無い。しかし、ここは竜人。遮断してもある程度は視えるようだ。


  そしてこのまま第二の技を教えよう。


「二つ目は、モンスターを位置をあからじめ知っておくことだ」


 もちろんこれも魔法を用いる。


「魔法名を索敵系上級魔法<索敵(サーチ)>だ」


 これは、気配感知にも似た魔法である。

  万人全てが気配感知をスキルとして持っているという訳では無い。


  俺の場合が特殊なだけで大半の人たちは気配感知が出来ないのだ。

 そこで索敵(サーチ)の出番という訳だな。


  魔力を霧散させ、広範囲に広げることで辺り一体の土地やモンスターの位置や地形を確認出来るという上級魔法である。

  これも見せることにしよう。


「ほらこのようにな」


  無詠唱で発動。彼女には魔力が見えているだろう。それなら分かるはずだ。

 ·····と思えば


「信じられない·····」


  顔面は蒼白し、見てはいけないものを見てしまったと言わんばかりに口がパクパク動いている。

  そんな反応する? と小首を傾げれば、おずおずとアマサが尋ねてくる。


「い、今のは同時発動(ダブルキャスト)ですか?」


  そうだな。確かに同時発動(ダブルキャスト)した。

  しかし、だからなんだ。


「たかが同時発動(ダブルキャスト)ごときで何をそんなに驚いている?」

「ごときって·····えぇ? しかし、同時発動(ダブルキャスト)ですよ?」


 いやですよ? と言われてもだから? としか言いようがない。

  同時発動(ダブルキャスト)――呼んで字のごとく同時に発動するからダブルキャストと呼ばれる一種の技だ。


同時発動(ダブルキャスト)とは脳内で魔法陣を展開しつつ、新たに魔法陣を展開させ操作するという高等技術なんです!」


  そんな目をクワッと見開きながら熱く論説しなくても分かる。

  無詠唱の時でも話した通り、魔法を展開するというのは魔法陣を脳内で構築するのだ。


  同時発動(ダブルキャスト)はそれにもう一つの魔法を展開するだけだ。

  連九発動(ナインキャスト)連十発動(テンキャスト)なら驚いても分からなくはないが、たかが同時発動(ダブルキャスト)で何をそんなに――


「並の人間なら頭がオーバーヒートしますよ!?」


  いやだって魔法発展期だって············


  いや、俺しか同時発動(ダブルキャスト)をしていなかったかな。

  というか、俺が魔王と呼ばれた所以って、そうだ。思い出した。


  俺がこの同時発動(ダブルキャスト)を使えるから人間から嫌われていたんだ。道理で、勇者たちも俺に喧嘩売る度俺の魔法みて顔面を蒼白させていた訳だ。


「すまん。これは俺しか出来なかったわ」


  素直に謝ると、アマサはペタンと座ってしまった。


  ずっと小声で「怖い、怖い、怖い」と連呼している。怯えさせてしまったようだ。


  しかし、同時発動(ダブルキャスト)が出来ないのは困るな。

  仕方ない。付加系統魔法(エンチャント)を使うか。


「分かったって俺が悪かった。今からお前にエンチャントをかける。お前は遮断(カット)だけ使えばいいから索敵(サーチ)は俺がやるから――」

「え? エンチャントまで?」


  やばい、頭が痛くなってきた。


  もしかしてエンチャント使えるのってヤバいのか?


「エンチャントを使える人は付加魔術師と呼ばれ、その職業が存在しているんです。御主人様は魔法使いなのですから本来付加魔術師の十八番(おはこ)であるエンチャントは使えないのですよ!」


 いや、それだと·····。


 やめておこう。どうやら時代が変わるにつれて魔法は衰退しているようだ。

 一体何でだ? 魔法発展期に数多の魔法が開発され、今でもそれを使用している魔法使いは存在している。

  何を隠そうラナだって使えたんだぞ? 駆け出しの冒険者であるラナが使えるとなれば、魔法発展期に開発された魔法は残っているという事だ。


 なら、何でこんなに弱体化している。·····と思えば直ぐに原因が分かった。


  魔法発展期でも付加魔術師という職業は存在していた。という事はそれでも出来る俺が異質だったのか。


  そういえばそうだ。武器にエンチャントされている魔法が雑魚過ぎて、俺が我流でエンチャントを極めたんだった。


 全部思い出したわ。


 俺がおかしかったんだ。ここまで来ると笑うしかない。


 そんな俺を見てますます怯えてしまった様子のアマサ。

 俺は咳をひとつして、我に戻る。


「悪かった。とりあえず、俺のおかしさが分かったろ? それが、お前に殺されない俺の秘密と思ってくれていい」


  今までどことなく怪訝そうに思っていた俺の殺されない宣言にようやく合点がいったように激しく首を縦に振る。

  どうやら、アマサの気迫は完全に無くなってしまった。萎縮した猫みたいだな。


「じゃあエンチャントをかける。今からスタートだ。さっき言った命令必ず守れよ」

「分かりました。絶対守ります」


  もうダメだ。アマサが凄く変わってしまった。


「それじゃあ<索敵(サーチ)>」


  エンチャントをかける。


「それじゃあスタぁ――」


  スタートと言い切る前にアマサは物凄い速さでダンジョンに潜っていった。

魔王はいつの時代でも最強です。

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