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navy moon ー月はいつも丸いー  作者: A.O.C.DESIGN
最終章 Petits bonbons 月のひかり
30/31

最終話 いつまでも

夜。


外は深く、月明かりがぼんやりと畑を照らしている。


出窓から空を眺める。


雲がたなびき、月の存在を大きくする。


ゆっくりと流れる雲の狭間で、現れては消え、また現れる。


時を、静けさが包む。




窓辺のグラスに、赤い液体が注がれている。


そのそばに、手紙と写真。


そして、一枚のチョコレートが、白い皿の上にある。


歪んだ板。


装飾のない板。


溝も何もない。


ただ、歪んだ板のチョコレート。




手。


窓辺の縁を掴んでいた手が、チョコレートに触れる。


そっと持ち上げる。


顔の前。


板を割る。


断面を見る。


更に割る。


小さくなる。


ひとかけらを、口へと運ぶ。



目を閉じて、顔を上に向ける。






ー なぜ、ここに来た。


ー なぜ、ワインをやめて、ここへ。


ー やめていません。





ー 病気は湿りを好む。


ー ここ、風が通らない。


ー 湿ると、黒くなる。





ー 刃は刃だ。





ー チョコレートを食べたことがありますか。


ー 一度だけ。


ー ここで育てた豆を、ここで作れるようになれば。


ー チョコレートを。


ー あなたたちが。



ー 豆を育てるのも、難しい。


ー 夢を見るのは、悪くない。




ー 売る豆は使わない。


ー 焦がすな。


ー 焦がさない。


ー ぱち、ぱち。






目を開く。


もうひとかけら、口へ運ぶ。








ー 完璧ではない。


ー だが、始まりだ。









グラスを掴み、一気に飲み干す。








ー 始まりだ。





ー 始まりだ。







空のグラスを持ったまま。


しばらくの間。




グラスが窓辺に戻る。


透明の雫が、頬を伝い、脚に流れる。


月明かりが窓辺を包む。


一瞬だけ輝く。




白い皿にグラスが沿う。


ワインが注がれる。


ボトルがグラスに沿う。


赤い液の表面に、月が映る。


ゆらゆらと。


永遠の時間であるかのように。


いつまでも。

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