第3章 5話
その頃病室では、弥生がめぐみに「めぐみちゃん、昴の事で話がある」と言ってきたから、めぐみは、弥生ちゃんが昴の事を私に相談なんて驚きを隠しきれなかった。
「急に何よ? 昴君は弥生ちゃんの彼氏でしょ。もう知っているでしょ、私が昴君の事をまだ恋しているって。ライバルに相談なんてあり得ないでしょ」と毒のある鋭い表情で弥生に言った。
「知っているからこそ、めぐみちゃんに話したい」と言ってきたから、弥生の頭の中はてなでいっぱいになって「何で私なの?」と聞いてしまった。「私、昴から身を引こうと思っている。理由は話さなくてもいいよね。めぐみちゃん、昴の事を幸せにしてほしいよ。この事を頼めるのはめぐみちゃんしか居ないよ」と言ってきたからめぐみは驚きながらも、昴君と付き合えるチャンスをもらえたと思ったが、複雑な気持ちだった。
めぐみは一呼吸し、「弥生ちゃん、言いたい事は分かったけど、私は嬉しいけど、さすがに昴君が可哀そうだよ」と言葉を切って、弥生に表情を隠すように青空を見上げて「弥生ちゃん、自分自身に嘘をついてない? もし、嘘をついていたら私以上に後悔するよ。弥生ちゃんだったら昴君の性格も分かっていると思うがそんな事言ったら昴君も傷つくよ。そんな昴君と付き合えても私ちっとも嬉しくもないし幸せにならないよ」
「私が車椅子になった事で昴が不幸せなるのが一番嫌だよ」とくらい表情で言うと、めぐみは切れてしまい「弥生ちゃん、昴君の想い全然分かってないよ。昴君の性格を思い出しなさいよ」と弥生に問いかけた。
弥生は昴の事を考えると、昴にいつも元気を与えていたし、私も昴と会うと明るくなっていた気がする。もしかして昴もそうだったのかな。もしそうだとしたら昴の事を……。「めぐみちゃん、ありがとう。何かを思い出した」と言い「めぐみちゃんこそいいの? せっかくのチャンスだったのに」とわざとらしく聞いた。
「弥生ちゃんが自信なさけで言って昴君を取ってもな。でももったいない事したわ」と笑いながら「弥生ちゃん、私もそろそろ帰る」と言い、逃げるように病室を出て行った。
彩月は昴を見送って、弥生が居る病棟に入るとちょうど帰りがけのめぐみに会って「こんにちは」とめぐみに声かけた。「こんにちは。村井さん。ちょうど昴……いや、岡さんがついさっき帰ったところです」
「さっき、昴と会いました」と答えたら、めぐみが「岡さん、なんかいつもより雰囲気が違った気がしましたが私の気のせいかな。村井さんは気がつきませんでしたか?」と聞いてきたから彩月は驚きながらも、昴の事を冷静にみているなとめぐみの事を感心した。冷静な人だから、この人だったらもしかしたら、弥生に気付かれなく昴の事を止められるかもしれないと希望を持ち「実は」と言い星口さんの耳元で「弥生の為に会社を辞めようとしています。出来たら止めてほしいです」と囁いた。
それを聞いた星口さんは溜め息を吐き「弥生ちゃんも弥生ちゃんだし、昴君も昴君もだから、分かりました」と言いながら、心の中ではあの二人は相手の事を想って何故自己犠牲が出来るのだろう。私には到底そんな事出来ない。それが私と弥生ちゃんの差のなのかなと考えていた。それを不思議そうに見ていた彩月だった。タイミングを見計らって「私、そろそろ行きますので昴の事を頼みます」と言い彩月は弥生の病室へ向かった。




