第一章《笑えなくなった白髪の少女》
私は、生まれつき水の魔法と、植物を回復、成長させる魔法が使えた。
透き通る水を生み出し、自在に操ることや、枯れかけた植物を生き返らせることもできた。
そして家族も、それぞれ違う魔法を受け継いでいた。
母は治癒の魔法。
父は炎の魔法。
兄は風の魔法。
私たちは、ごく普通の家族だった。
ただ一つ、"魔法使い"であることを除いて。
だけど、その幸せは長く続かなかった。
――私のせいで。
私が魔法を使ってしまったせいで、私たちは見つかってしまった。
魔法使いを追う組織――『浄化機関』に。
突然家へ押し入ってきた彼らは、家族を次々と拘束していった。
私は怖くて動けなかった。
助けたかった。
叫びたかった。
それなのに、足は震え、声も出なかった。
連れて行かれる母は、最後まで笑っていた。
「時雨、元気でね。」
それが、母の最期の言葉だった。
父も兄も帰ってくることはなかった。
私は、家族を守れなかった。
あの日の私は、まだ幼くて、何もできなかった。
それでも、心の中では何度も繰り返してしまう。
「私が魔法なんて使わなければ。」
その後悔は、何度眠っても消えることはなかった。
その日から、私は笑えなくなった。
数日後。
鏡に映った自分を見て、私は息をのんだ。
あまりの悲しみと恐怖に耐えられなかったのか、私の髪は真っ白に変わっていた。
それから学校では、毎日のように言われた。
「お前の髪、どうして白いの?」
「呪われてるんじゃないの?」
誰も理由なんて知らない。
知ろうともしない。
(誰か……助けて。)
そう思った、その時だった。
「そんなことないよ!」
教室に響いた、明るい声。
振り返ると、一人の女の子が私の前に立っていた。
「私は、その白い髪、すごく綺麗だと思う。」
すると、その隣にいた男の子も一歩前へ出る。
「そうだよ。髪の色が違うくらいで、人を傷つける理由にはならない。」
教室は静まり返った。
私は、二人の背中を見つめることしかできなかった。
その二人が――
五十嵐心菜と、氷室琉夏。
私にとって、初めてできた大切な友達だった。
あの頃の私は、まだ知らなかった。
心菜と琉夏が、私の運命を大きく変えることになるなんて。
そしていつか――
『浄化機関』への復讐を誓う日が来ることを。




