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仮想 少年✖️少女  作者: libero protocol
大地✖︎少女の夏祭り編

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18/18

最終話:大地✖︎美空 醒めない夢のその先へ

大地の脳内に流れ込んできた、すべての記憶。


ここが美空の精神世界であること。

自分が何のために命を懸けてここへ来たのか。


すべての真実を理解した大地の前で、ガラクタの盾に押し返された美空の世界は、静かにその動きを止めていた。


夢の嵐が止んだ虚無の空間の真ん中で、美空はぽつんと立ち尽くしていた。


吊り目の表情はもう完全に剥がれ落ち、そこにあるのは、現実世界で傷つき、絶望した、13歳の少女の素顔だけだった。


「……全部、思い出しちゃったんだね、大地」


美空は、悲しげに、だけどどこか満足したように微笑んだ。


彼女の首元に繋がる金色の数珠玉が、夕暮れのような光の中で静かに明滅している。


「ねえ、大地。最後のお願い。……嘘でもいいから、私のこと、好きって言って」


美空は一歩、大地の方へ歩み寄り、縋るようにその瞳を見つめた。


「そしたら私、最後の玉を手に入れて、あの世へ行けるの。大好きな大地に、最後にちゃんと見送ってもらえたら……私、それだけで最高に幸せに、綺麗に死ねるから。だから、お願い――」


胸を締め付けるような、少女の、命を懸けた懇願。

しかし、それを聞いた大地の表情は、一瞬で怒りへと塗り替えられた。


「……ふざけんなよ」


低く、地鳴りのような大地の声が響く。


「お前……っ、ふざけるなよ美空ァッ!!」


大地は激怒していた。

激しい怒りの火が、その瞳の奥で爆発する。


美空が自分をこの世界に縛り付け、大地の記憶を奪ってまで理想のデートを繰り返していた本当の理由。


それは、大地に「好き」と言わせることで最後の数珠玉を完成させ、自分を殺す手伝いを大地にさせるためだったのだ。


「誰がそんなことのために、ここまで追いかけてきたと思ってんだ! 散々お前の我が儘な夢に付き合わされて、かき氷で頭痛くされて、ゾンビに追いかけられて、江戸の町で炎に飛び込んでまで狐、捕まえさせられて……! 挙句の果てに、お前を見送って一人で現世に帰れだと!? 寝言言ってんじゃねえぞ!!」


怒鳴り散らす大地は、ぐっと足元を踏み締めた。


「今度は俺の番だ。お前こそ、俺の夢に付き合いやがれッ!!」


大地が強く手をかざすと、彼の『ガラクタの世界』が、今度は明確な意志を持って美空の身体を包み込んでいった。


まばゆい光が収まったとき、そこにあったのは、ガラクタだらけの夢ではなかった。


どこにでもある、新築の一軒家、小さな庭付きの家。 美空は、はっと息を呑んで周囲を見回した。


この家を、彼女はよく知っていた。

現実世界の施設で、夜、いじめられて泣いていた美空の隣で、大地がいつも「いつか俺さぁ自分の家を作りたいんだ」と、未来の希望として何度も何度も語っていた、大地のたった一つの、本当の夢の姿だった。


両親がおらず、帰るべき場所のない大地にとって、この家こそが魂の根底にある必然の願いだった。


「……これ、大地、あんたの……」


「そうだ。俺の夢だ」


大地は、さっきまでの怒り顔から一転して、顔をリンゴのように真っ赤に染め上げ、ぶっきらぼうにそっぽを向いた。


そして、頭をガリガリと掻きむしりながら、消え入りそうな声で、だけどはっきりと告げた。


「……この家、お前の部屋も、ちゃんとあるから」


美空の瞳から、大粒の涙が溢れ出した。

どんな甘い恋の言葉よりも、どんな理想のデートよりも、家族のいない美空の胸を、大地の不器用で真っ直ぐな約束が強く、強く打ち抜いた。


あの残酷で地獄のような現実世界に、自分が生きて帰るべき「私の場所」が、大地の心の中に最初から用意されていたのだ。


「う、あ……、うわぁぁぁぁん……っ!!」


美空はその場にしゃがみ込み、子供のように声を上げて泣きじゃくった。今までの強がりも、死への覚悟も、すべてが涙となって流れ落ちていく。


しばらくして、ようやく涙が引き、ぐずぐずと鼻を鳴らしながら、美空は上目遣いに大地を見上げた。


「……でも、やっぱり、一言くらい『好き』って言ってくれたっていいじゃない。不器用すぎるのよ、あんた……」


最後の最後、少しだけ赤くなって催促する美空に向けて、大地はこれ以上ないほどの雄叫びに近い声で、全力で怒鳴り返した。


「うるせええええええええ!! 一生守るって、今、言ってるだろォォォォォッ!!」


好きとか愛とか、そんなの、13歳の俺たちにはまだ早くてよく分からない。

だけど、お前と家族になって、俺の人生のすべてを懸けて一生守る。それが、大地の、最大級の魂の叫びだった。


「……っ、ふふ、バカじゃないの。本当に、最高にバカなガキンチョ……!」


美空は泣き笑いの顔で頷くと、弾かれたように走り出し、大地の胸へと勢いよく飛び込んだ。


その小さな身体を、大地は優しく、だけど絶対に離さないように、両腕でしっかりと抱きしめた。


美空の首元から、金色の数珠玉がパリン、パリンと音を立てて、光の粒子となって消えていく。


あの世へのカウントダウンは、今、完全に破壊された。


世界がゆっくりと、あたたかい真っ白な光に包まれていく。

お祭りの匂いも、潮の香りも、ポップコーンの甘さも、まんじゅうの温もりも、大好きなガラクタたちも、すべてが静かに溶けていく。


「……さぁ、帰ろう、美空」


大地の小さな、優しい声が響く。


「うん。……一緒に、帰ろう、大地」


美空は強く頷き、大地の胸に顔を埋めた。


あんなに酷くて、冷たくて、いじめに満ちていた現実世界。


だけど、隣にこの手が、この温もりがあるのなら、もう何も怖くない。


二人の長くて短い、醒めない夢の逃避行が、いま、静かに幕を閉じた。


――そして、現実世界の病院の、静かな病室。


並んだ二つのベッドの上で。


二人の少年少女の指先が、奇跡のように、ぴくりと同時に動いた。





仮想 少年✖️少女  終幕

















窓の外から差し込む、まぶしい朝の光。


美空はゆっくりと、目を覚ました。


首を動かし、すぐ隣のベッドを見つめる。

そこには、大好きな大地が、まだ静かに目を閉じたまま横たわっていた。


私のために、あんな無茶をして。


お願い、大地、目を覚まして。

祈るようにじっと見つめ続けていた、その時。


大地のまぶたが、かすかに動いた。


ゆっくりと開かれた大地の目。


本当に、生きて帰ってこられた。

大地が、目を開けてくれた。


張り詰めていた恐怖が、一気に涙となって美空の頬を伝い落ちる。


「……大地。ありがとう」


少女の小さな呟きが響いた、その刹那。


――グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……ッ。


病室に、盛大な腹の虫が鳴り響いた。


大地は天井を見上げたまま呟いた


「まじ腹減った」


 おわり


ここまでお付き合い頂きましてありがとうございました。


初めて書いた物語と大地と美空。

私が作ったキャラですが意思を持った本物になって私の中にいます。

今後どの様に生きていくかは彼らが決めるんだな、

と、この物語はここで終了、私の手から離れました。

寂しいですが満足しています。


どんなことでもいいのでリアクション頂けたら今後の創作活動の活力となります。

よろしくお願いします。


改めてここまでお付き合い頂きありがとうございました。

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