IF第60話 復活
ショーツカ大森林に入っていったユームとアビスは封印の祠を目指す。そして進んで行くにつれてユームは違和感に気づく。
「どういうことだ? この前入った時よりも感じが良いような……」
「え? そういえば……?」
ユームとアビスは以前来た時よりも大森林の空気が良くなっていると気づいた。それだけでなく雰囲気も明るくて静かな感じから、魔物が大人しくなっているように思える。
「ま、まさか……」
「ユーム様?」
「ふ、封印の祠に急ぐぞ!」
嫌な予感がしたユームは急いで封印の祠まで馬を走らせる。もっとも、大森林の変化に気づいた時点でなんとなく分かってしまっていたのだが、到着した時に現実を目の当たりにすることになる。
「あ、あれが封印の祠なのか……?」
「これって……お姉様の魔力じゃない!」
封印の祠の天使像には相当な量の光属性の魔力が蓄えられていた。金色の光の輝きを見せるほどの量の魔力。それを持っているのは二人の記憶には一人しかいない。
「なんてことだ! これはシシラの魔力だ! これほどの魔力を天使像に与えられるのはシシラしかいない! ここを通った時に魔力供給をしていたんだ!」
ユームはがっくりと膝を折った。これで名誉挽回はできなくなった。王太子剥奪は確定、下手をすれば更に罰を与えられるかもしれない。何しろ、勝手に抜け出してここまで来てしまったのだから。
「……ふざけんな」
ここまで来て無駄だったことに絶望するユームをよそに、アビスは怒りの形相で天使像に近づいていった。
「ふざけんじゃないわよ! ここまで来たってのに、またお姉様に邪魔されるの!? 冗談じゃないわ! これ以上、お姉様に私の人生を奪われてしまうなんて認めないわ!」
アビスは天使像専用の魔力供給魔法陣を通り越して、直接天使像に触れた。そしてそのまま魔力を供給を始める。
「私の魔力をくれてやるわ! だから、お姉様なんかよりも私のほうが優れているって、断然いいって証明しなさい! って、何で押し返してきてるのよ!」
しかし、いくら天使像に魔力を流しても押し返されてしまう。まるでアビスの魔力を否定するかのようで、アビスはそれが気に入らず癇癪を起こした。
「なんなのよ! こんな像まで私を馬鹿にするっていうの!? ほらほらほら! 私の魔力を受け入れろ―ッ!」
もはや魔力暴走のように強引に魔力を発するアビス。そんな彼女の魔力の全てが天使像に集中する。歪んだ魔力がアビスに無理やり押し込まれていく。
……だからこそ、悲劇が起こる。
――天使像が倒れたのだ。
「……え?」
「て、天使像が……!?」
天使像が倒れた。いや、アビスによって倒されてしまったのだ。その事実にユームも当のアビスも呆然となって固まる。新たな不祥事ができてしまった――二人の脳裏にはそんなことが思い浮かぶ。
ただ、不祥事どころの話では済まされることはなかった。
『――フッハハハハハハハハハハ!』
「「ッ!?」」
天使像があったところから恐ろしい気配と笑い声が響く。それも先日の悪魔と同じ感じ、いやそれ以上の危険を感じさせる禍々しい何かが。それは黒いモヤに包まれた禍々しい何かとなってアビスの目に写った。
「な、何?」
「に、逃げろ!」
二人は恐ろしくなってその場から離れようとしたが、アビスは魔力切れで動けず、ユームは何故か足が固まって動けない。
「な、なんで、足が!?」
『クククッ、このワタシが復活したのは貴様らのおかげナノダろう? 礼を聞かずに逃げてしまうものではないノダ』
「え? え!? 復活?」
アビスは恐ろしい以外何のことかさっぱりだったが、ユームはその正体に感づいてしまった。それは恐ろしい伝説の怪物であることだと。
「ま、まさか、まさか……!?」
『男の方は王族か。それならワタシの正体に気づいたようナノダ』
「な、何だって言うのよ!?」
『聖女の身なりなのにワタシに気づかないノダ? ならば自己紹介してやるノダ』
黒いモヤは人形の形になる。武装した化物という姿になるが、ユームは確信した。それは先代の聖女に召喚された守護天使ビトールによって封印された最強最悪の怪物であり、今まで語り継がれた聖女伝説の始まりの存在。
「ワタシはアポルターガイスト……。世界に大迷惑をかける大悪霊ナノダ……!」
伝説の怪物が復活した。それがユームとアビスが起こした最後のにして最大の不祥事だった。




